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2026.02.17 コラム

増加する「確約手続き」と広告実務への影響

口コミやレビューは消費者の信頼を得る重要な情報源ですが、景品表示法との関係について正しい理解が必要です。2025年に入り、消費者庁の行政対応は「措置命令」から「確約手続き」へシフトしつつあります。本記事では、2025年8月に認定されたフェイシャルサロン事業者の確約計画事例をもとに、企業のマーケティング担当者・法務担当者が知っておくべき景品表示法のルールについて、実務に役立つ情報をわかりやすく解説します。


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増加傾向にある「確約手続き」

改正景品表示法の施行以降、消費者庁による行政対応のあり方に変化が見られます。これまで、景品表示法違反が疑われる事案に対しては「措置命令」が中心的に用いられてきましたが、2025年に入ってからは、措置命令の件数が減少する一方で、「確約手続き」による対応が相対的に増えています。

確約手続きは、違反を認定するものではありませんが、結果として広告表示の見直しや是正が求められる点では、措置命令と共通する側面があります。そのため、事業者にとっては「違反認定がないから影響が小さい」とは言い切れず、実務上は注意が必要な制度といえます。今後、行政指導の対象とならないよう、広告や販促施策を企画する段階から、表示内容を点検する重要性が高まっている状況です。


事例概要:口コミ投稿と二重価格表示

こうした中、消費者庁は2025年8月、フェイシャルサロンを運営する事業者に対し、景品表示法に基づく「確約計画」を認定しました。本件は、2024年10月1日に施行された改正景品表示法で導入された確約手続きとしては2件目の認定事例となります。

認定の対象となったのは、口コミ施策や価格表示の方法であり、特に各社が活用している広告手法に関するリスクが表面化した事例として注目されました。


具体的には、次の3点が問題とされています。

①「星5」の口コミ投稿を条件に割引を行う口コミ誘導

②従業員による高評価口コミ投稿

③販売実績のない通常価格を用いた二重価格表示


口コミ誘導が孕むステマ規制リスク

①は口コミ欄への高評価レビュー投稿を条件に、割引を行っていた点です。ある口コミサイト上で、消費者が「★★★★★」の評価を投稿した場合に、次回の施術料金から一定額を割り引く旨が案内されていました。

このように、評価内容を条件とするインセンティブを設けると、消費者の評価に事業者が関与していると受け取られる可能性があります。その結果、表示が実質的に広告とみなされ、ステルスマーケティング規制の対象となるおそれがあると指摘されました。


「事業者の表示」と判断される理由

②は、従業員による高評価口コミの投稿です。従業員や関係者が自らサービスについて好意的な口コミを投稿する場合、本来は広告であることを明示する必要があります。

本件ではそのような明示がなかったため、消費者が第三者の客観的な意見であると誤認するおそれがあるとされました。利害関係者が関与する口コミは、景品表示法上「事業者の表示」に該当し、広告であることを示さない場合は不当表示と判断されるリスクが高まります。


二重価格表示の有利誤認リスク

③は二重価格表示に関する問題です。クーポンメニューにおいて、実際の提供価格と、それを上回る「通常価格」が併記されていましたが、この通常価格が、最近相当期間にわたって実際に提供された実績のない価格であった点が問題視されました。

二重価格表示では、比較対象となる価格が実態を伴わない場合、消費者に実際よりも有利な条件であると誤認させるおそれがあります。このため、有利誤認表示として不当表示に該当するリスクがあります。


今回の3点はいずれも、消費者に優良または有利であるとの誤認を与えかねない表示として、典型的な注意事例といえます。


確約計画のしくみと事業者への影響

確約計画は、景品表示法違反の疑いがある行為について通知を受けた事業者が、60日以内に自主的な是正措置計画を策定し、消費者庁に提出する制度です。消費者庁が、その内容が十分であり、かつ確実に実行されると認めた場合に、計画が認定されます。

確約手続きは違反を確定するものではありませんが、計画内容の公表や、是正措置の実施・報告義務が伴います。今回の事例でも、社内への周知・教育、消費者への告知、再発防止策の整備に加え、対象期間中にクーポンを利用した消費者への返金対応や、履行状況の報告などが盛り込まれており、事業者にとって行政対応が生じた点に変わりはありません。


広告実務で求められる対応とは

実務担当者が留意すべき点としては、まず、口コミやレビュー施策において評価内容を条件としたインセンティブを設定しないことが挙げられます。評価を指定・誘導した時点で、表示が「事業者の表示」と判断され、広告であることの明示が必要となる可能性があります。

また、従業員や関係者による口コミ投稿については、利害関係の存在を明確に示すことが不可欠です。匿名や第三者を装った表示は、ステルスマーケティング規制違反と指摘されるおそれがあります。さらに、二重価格表示では、通常価格や割引前価格が実際の販売実績に基づくものであるかを確認し、根拠資料を適切に管理しておくことが求められます。


表示全体を見直す視点が重要に

このほかにも、「期間限定」「数量限定」といった表現や、体験者レビュー、口コミ規約の運用など、注意すべき表示は多岐にわたります。表示の透明性を確保し、実態に基づいた情報を適切に示すことが、これまで以上に重要になっています。事業会社や販売会社は、広告・表示に関する基本的な理解を社内全体で共有し、教育や内部統制を通じて継続的に取り組むことが重要です。




【筆者プロフィール情報】

薬事法広告研究所 代表 稲留 万希子

東京理科大学卒業後、大手医薬品卸会社にて医療従事者向けポータルサイトの企画運営に従事。ヘルスケア分野でのビジネス展開にあたり薬事法や景表法などの各種法令と、広告について学ぶ。2008年3月、薬事法広告研究所の設立に参画。“ルールを正しく理解し、味方につけることで売上につなげるアドバイス”をモットーに、大型セミナーから企業内の勉強会まで、年間100本を越える講演をこなす。








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