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通販通信ECMOニュース・記事コラム解説!「ダークパターン」 ―企業が知るべきリスクと対策―

2025.12.10 コラム

解説!「ダークパターン」 ―企業が知るべきリスクと対策―

インターネットで商品を購入する際、気づかないうちにオプションが選ばれていたり、解約ボタンが見つけにくかったりした経験はありませんか?これらは「ダークパターン」と呼ばれるユーザーを意図的に誘導するデザイン手法です。近年、このような手法は国内外で問題視されており、消費者保護の観点から規制の対象にもなりつつあります。本記事では、ウェブ担当者やマーケティング担当者が知っておくべきダークパターンのリスクと対策について解説します。


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ダークパターンとは何か

ダークパターンとは、ユーザーインターフェース(UI)の設計において、ユーザーを意図しない行動に誘導する手法を指します。この言葉は2010年、イギリスのUXデザイナー、ハリー・ブリニョールによって提唱されました。彼はこの手法を「ユーザーにとって不利益な結果をもたらすよう意図的に設計されたインターフェース」と定義しています。

企業がダークパターンを使用する主な理由は、「コンバージョン率の向上」や「ユーザーの囲い込み」にあります。解約を困難にすることでサブスクリプションの継続率を上げたり、意図せずメルマガ登録をさせてリード数を増やしたりすることがその例です。

規制の動き

・国際的な規制状況

アメリカでは連邦取引委員会(FTC)がダークパターンへの取り締まりを強化し、EUではGDPR(一般データ保護規則)により「明示的かつ自由な同意」が義務付けられています。違反企業には数百万ユーロ規模の罰金が科された事例もあります。

・日本における規制動向

日本では明確な法規制は発展途上ですが、景品表示法(誇大広告・不当表示)、特定商取引法(定期購入契約)、個人情報保護法(同意取得義務)等の既存法律が関係しており、今後の法整備が期待されています。


ダークパターンの7つの類型

ダークパターンと一口に言っても、その手法は多岐にわたります。ユーザーに気づかれにくく、かつ心理的な働きかけを利用することで、意図しない行動を引き起こすよう巧妙に設計されています。ここでは代表的なダークパターンを紹介します。


①スニーキング(こっそり)

重要な情報(価格や追加料金、オプション等)を目立たない位置に表示し、ユーザーに気づかれないように誘導する手法。

②アージェンシー(緊急)

「残り1点」「あと5分で終了」など、実際には急ぐ必要がない場合でも緊急性を演出して購入を促す手法。

③ミスディレクション(誘導)

デザインや配置、色使いで特定の選択肢を強調し、ユーザーの注意を逸らして意図しない選択をさせる手法。

④ソーシャルプルーフ(社会的証明)

虚偽のレビューや誇張された数字を用いて、「多くの人が使っている」という印象を与える手法。

⑤スケアシティ(希少性)

「今だけ半額!限定10名様」などの表示を常に表示するなど、実際とは異なる希少性を演出して購入を促す手法。

⑥オブストラクション(障害物)

退会やキャンセルなど、ユーザーが望む行動をわざと面倒にすることで、その行動を抑制する手法。

⑦フォースドアクション(強制)

本来の目的を達成する前に、望まない行動(情報提供、登録等)を強制的にさせる手法。


ダークパターンを採用するリスク

短期的にはコンバージョン率向上につながる可能性があるダークパターンですが、中長期的に企業が背負う大きなリスクが存在します。

①顧客の信頼喪失とブランド価値の低下  

「騙された」と感じたユーザーからの信頼回復には長期間とコストが必要

②クレーム・問い合わせの増加 

サポート工数や人件費の増加、対応品質の低下

③法的リスク・行政処分 

景品表示法、個人情報保護法等の法律に抵触するおそれ

④継続率・リピート率の低下 

LTV(顧客生涯価値)の低下、マーケティングコストの回収困難

⑤社内倫理・文化の悪化  

「騙してでも数字を取ればいい」という姿勢が蔓延することで優秀な人材の流出や、指導による企業イメージ悪化


ダークパターンを生み出さないために

ダークパターンは、意図せずとも設計やKPI重視のプレッシャーから生まれてしまうことがありますが、回避するために企業が取り組むべき具体的な対策を紹介します。

まず最も重要なのは、「ダークパターンが倫理的・法的に問題である」という共通認識を社内全体で持つことです。マーケティング、開発、デザイン、営業など、各部門が自分たちの業務に潜むリスクを理解する必要があります。社内研修やガイドラインの作成、定期的な振り返りを行い、倫理的な判断基準を共有しましょう。

次に、UI/UXの設計段階では、ユーザーの立場で操作性や理解のしやすさを最優先に考えることが大切です。「自分がこの画面を見たらどう感じるか」「初めての人にとってわかりやすいか」を意識し、ユーザビリティテストを実施しましょう。

また、料金体系やオプションの内容、データの利用目的など、すべての重要情報を明確に・分かりやすく提示することが基本です。特に「後から気づく追加料金」や「目立たない注意書き」は、不信感を与える要因になります。チェックボックスは初期状態でオフにする、キャンセルボタンをわかりやすく配置するなど、ユーザーが自分で選び、自分で決定できる自由を保証することが求められます。

さらに、一度設計したUIやフローも、定期的にレビューして改善を加える体制が必要です。時間が経つと法規制やユーザーの期待が変化するため、ユーザーからの問い合わせ内容やフィードバックを分析し、「どの部分で混乱が生じているか」を洗い出すことが重要です。

最後に、売上や登録数などの数値目標ばかりを追い求めると、ダークパターンに頼る誘惑が生まれがちです。「誠実なユーザー体験を提供すること」自体を評価軸に組み込むことが、健全な施策づくりに不可欠です。


まとめ

ダークパターンは短期的な成果をもたらす可能性がある一方で、長期的には企業に重大なリスクをもたらします。透明性と誠実さを持ったユーザー体験設計こそが、持続可能なビジネスの基盤となります。

世界各国で法整備が進む中、日本国内でも規制強化が見込まれており、企業は今こそダークパターンを排除し、ユーザーを「騙す」のではなく「信頼を得る」ことに注力すべき時期にあります。



【筆者プロフィール情報】

薬事法広告研究所 代表 稲留 万希子

東京理科大学卒業後、大手医薬品卸会社にて医療従事者向けポータルサイトの企画運営に従事。ヘルスケア分野でのビジネス展開にあたり薬事法や景表法などの各種法令と、広告について学ぶ。2008年3月、薬事法広告研究所の設立に参画。“ルールを正しく理解し、味方につけることで売上につなげるアドバイス”をモットーに、大型セミナーから企業内の勉強会まで、年間100本を越える講演をこなす。








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