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2023.12.25 通販支援

小手先勝負は終焉?DM0田村社長が語る通販マーケターに必要な本質論・局面打開力

EC・通販業界は「成熟期を迎えていると思う」と(株)ダイレクトマーケティングゼロ(以下、DM0)の田村雅樹社長は話す。田村社長は新卒で「進研ゼミ」の(株)ベネッセコーポレーションに入社し、マーケターとしてはマンガDMの作成などを手掛け驚異的なレスポンスを叩き出すなど成果を出した人物。2009年に独立し同社を設立。約15年間に渡りEC・通販事業主ともベンダーとは少し異なる位置から業界を見、支えてきた。自身も齢半世紀を超えたなかで何を感じ、何を思っているのか。田村社長に業界の動静の振り返りやマーケターとしての矜持などについて語ってもらった。

「フレームで仕事できる時代は終わった」

ーーDM0設立から約15年。EC・通販業界の流れをどう見ているか。

田村雅樹社長(以下、田村):改めて振り返ってみるとこの15年で業界内でのリテラシーの格差は減ったと思います。15年前はそれこそCRMという概念もイマイチ業界内で定着しきっていなくて「お客さまに定期的にリレーションとっていくんですか?」といった質問も受けるほどでした。そうした状態からは業界全体で脱却したのではないでしょうか。みなさん、EC・通販の新規獲得やCRMのお約束をわかった状態で仕事されているように思います。加えて”めちゃくちゃ”な人や会社というのは居なくなったな、という感もあります。

ーー”めちゃくちゃ”とは。

田村:アウトロー、といった意味ではなく、EC・通販をよくわからずに勢いで突撃してミラクル起こして大成功をつかむ、みたいなタイプのことです(笑)言葉を選ばずにいくと全体的にお行儀が良くなって、そうしたタイプは見かけなくなってきたな、といいますか。恐らくEC・通販のノウハウの一般化しきったということなのですよね。15年前は「リピートってどうすればいいんですか」「継続率ってどうやって測ったらいいんですか」というような相談が溢れていました。今はこのあたりはちゃんとやった上でご相談がくるな、という所です。業界として成熟したんだなと実感しますね。

ーー業界が成熟する中で、思う所はあるか。

田村:ダイレクトマーケティングのコンサルテーションを行う会社の立場でいうと、戦い方のレベルを1つ上げなくてはならない、と感じています。以前はリテラシーの格差があった状態でしたので、極端な話をすると新規獲得やCRM施策のフレームワークをお伝えするだけでも成果が出せてしまっていた部分があるのですよね。ただ今はそのフレームワークはみなさん自前で取り組まれたうえでご相談にくるので、やはり個社ごとの特徴や特性に合わせた戦略を用意しなくてはなりません。汎用的に抽象化したノウハウだけでは成果につなげにくいという高度化が進んでいると思います。面白いのはリテラシーが上がれば上がるほど、本質論になってきていますね。

ーー”本質論”とはテクニックではなく商品の部分ということか。

田村:もちろん究極は商品の部分が本質だと思います。商品を磨いていくことは最重要です。いま言ったことはそういうことではなくて。対症療法的なテクニックではなく、もっと深いお客さまとのリレーションの部分に入り込んでいかれてるな、ということです。例えばLTVを高めるための定石としてクレジットカード決済を選んでもらうというものがあります。対症療法的なテクニックというのはこれに対してパーセンテージなど数値を見て「クレカ決済のオファーを強くする」という手を打つようなことです。いわばある種のお客さまは置き去りのテクニック論といいますか。ただ、リテラシーが上がるとお客さまの視点に立って「どうして自分はクレカ決済を選んだのだろうか」という部分までを想像して策を考えていくというか。マーケティングの本質というのはこちらですよね。お客さまのメリットを最大化して、不安感だったりデメリットに感じてしまうかもしれないペインの要素を取り除いてあげる。フレームワークだけでは通用しなくなってきて、こうした本質的な部分での議論が増えてきたかなと思いますね。自分自身マーケティングはそうあるべきだと思いますし、実行もしてきました。ただ、フレームワーク…というよりは当たり前のことをやれば成果が出せたっていう段階からはステップアップして誰もが当たり前のことをする中でどう勝負するか、というところまで来たかなと思います。

ーーコンサルを行う側として難しさは感じているか。

田村:もちろん難しくなってきています。一方で面白くなってきた、とも思います。難易度の高いゲームを試行錯誤しながら攻略していくのが楽しい、という感覚に似ていますね。コンサルテーションする会社さんごとにあらゆる状況が違いますので、徹底的にデータを取得したりお客さまの声を聞いたりして顧客インサイトを見出し改善策を編み出していくのは面白いですね。その策が当たった時の喜びはひとしおです。インサイトの発見が重要なのですがそれを見つけるためにも、見つけたインサイトから策を練るためにも、常にいろんなことをインプットしていく必要性もかなり増していると思いますね。また、個社ごとに起こる課題など局面局面で打開していく「局面打開力」がものを言うな、とも思います。

良き消費者≒マジョリティ、であれ

ーーどんなインプットが必要か。

田村:例えばしっかりとアンテナを張って、トレンドなどをしっかりキャッチアップしていく必要がありますよね。何よりも「消費者視点」を持たなくてはならないと思います。EC・通販業界で仕事をするうえで、良きマーケターであり、良き消費者であれ、ということです。

ーー詳しく聞きたい。

田村:実際にEC・通販で商品を買う側の気持ちや行動、心理の理解なくして事業を拡大していくのはやはり難しいものです。EC・通販は基本的にマス向けのビジネスとなりますので、いわば世の中の「マジョリティ」の感覚をわかっていなければいけない、ということです。例えば9時から働いているサラリーマンは通勤電車でどんな広告と接しているか、とかですね。買い手側の気持ちに立って「見てみようかな」「買ってみようかな」と思ってみるというのが大事になってきます。ただ、マジョリティの観点から接してみるということの実践が大切です。とはいえ完全に自分がマジョリティになり切る必要は必ずしもなくて、自分の近くにちゃんとマジョリティの感覚を持った人がいるという状況があればいいと思います。例えばご家族ですとか。

ーー田村社長はクライアントのLPを実際に自分で遷移を確認すると聞く。

田村:はい。クライアントさんのLPは自分で申し込みまでやってみて遷移のチェックなど把握します。クライアントさん以外でも「おっ!」と思うような広告やLPがあれば自分で申し込みまでやってみます。いいLPはスマホでスクショもとります。オフラインでも良い広告クリエイティブがあればメモをとったりします。思わず反応してしまったクリエイティブの一例をあげると、だいぶ前に携帯キャリアのソフトバンクが若者向けの大容量通信プランの交通広告を出していたことがありました。半分以上が余白で左端だけを使い「青春を制限しないで」のコピーと窮屈そうにしている高校生、という構成でした。こうした他業界のクリエイティブにはヒントも多いと思います。実際に参考にしています。

ーーそのヒントはどう生かすのか。

田村:いいネタがあればEC・通販の広告クリエイティブにオマージュできると思います。うまくオマージュするためには”置き換え力”を身につける必要があります。以前、業界団体からの講演依頼で「自身の思考プロセスについて話してほしい」というオファーを頂いたことがあります。その時に自分自身はどんな思考プロセスなんだろうか、と思って周りに聞いてみたことがありました。その時に多く返ってきたのが「置き換え力が凄い」という答えでした。あまり自分ではそこまで意識していませんでしたが、言われてみると他業界の手法を参考に換骨奪胎していくというのは取り組んできていたなと再認識しました。ですので、ぜひ業界のみなさんにはEC・通販はもちろん他業界のものでも沢山の広告クリエイティブに接してもらい、コンバージョンの遷移も把握して、良いネタを吸収していってもらいたいですね。こうしたインプットでインサイトを見出していって、強い局面打開力を自分は持てているなと思います。


来たれ!次世代の”凄い通販マーケター”

ーー大事なノウハウのように思うが明かして問題ないか。

田村:大丈夫です(笑)むしろ、こうした発信から何かヒントを得た若いマーケターがどんどん登場してくることを期待しているくらいです。DM0も創業から約15年、自身も50を越えて自分自身の残り時間について考えるようになりました。先日ふと「1年のスピードが早くなったな…」としみじみしてしまったのですが、考えて見ると例えば、50歳の時の1年って人生の1/50でしかないのですよね。でも10歳の時の1年って人生の1/10に相当するんです。ですから長さというか重みが違いますよね。年を重ねれば重ねるほどこの割合も小さくなっていくわけなので、「そりゃ短く感じるわ!」と思ってしまいました(笑)

忘れやすくなったり覚えられなくなったりというのもこれから増えてくるでしょうし、なによりも年齢を重ねれば重ねるほど初めての体験や経験という新鮮さに出会える機会も確実に減ってきます。頭の中にストックしておけるものにも限界がありますしね。経験はすべて蓄積されるように思いがちですけど、忘れやすくなってしまうと零れ落ちてしまうものがでてくるのは避けられないですよね。シンプルに体力の衰えだとかを実感し始めてきていますし、視力が落ちてきているなと言うのもあります。そんなことをつらつらと考える中で残り時間や引き際を想像して怖くもなります。「今の自分は5年前の自分より良くなっているだろうか」「10年前の自分だとどうか」なんてことも考えてしまいます。できればまだ通販業界のマーケティングやCRMの先頭に立っていたい、局面ごとの打開力の強さはナンバーワンでいたい、ともちろん思っていますが不安も大きいですね。でも、そんな中でも常々思っているのは「とんでもなく凄い通販マーケターがそろそろ出てきてもいいんじゃないか」ということですね。

ーーその心は。

田村:いつまでも先頭にいたいとは思っていないですし、極端な話「コイツには敵わん」という人がでてきたら身を引いてもいいとすら思っています。とんでもなく凄い人材というのは精々数人だとは思いますが、特に今の30代あたりに頭角を出す人がもっといてもいいのじゃないかな、と感じます。もちろんもっと若い世代も。ひょっとすると実はもういるのに表舞台に顔を出せてないだけかもしれない、気付いてないだけかもしれないとも思うのですよね。ですのでメディアさんにはぜひこのあたり場作りといいますか、環境を今よりもっと用意して貰えたらと思いますね。

DM0のことで振り返るとコンサルフィーのベースは上げ続けていけておりますし、成果報酬額も信じられないくらいに伸ばせています。自分自身、自分の強さを測りたいという思いは昔からあってこのフィーの部分はその強さのバロメーターかなと思っています。クライアントさんからは「高い!」とか「DM0さんに依頼できるようもう少し会社を大きくしてからまた来ます!」とか言われてしまうこともあるのですが(笑)。DM0ってなかなか特殊な会社だと思うのですよね。でもこんな会社がもっと増えてくれたらいいなと思っています。

<田村雅樹社長プロフィール>

(株)ダイレクトマーケティングゼロ 田村雅樹(たむら・まさき)社長

 早稲田大学法学部卒。(一社)通販エキスパート協会「通販エキスパート検定」認定。
(株)ベネッセコーポレーション新卒入社、ダイレクトマーケティング・戦略策定マネジメント等、約10年に渡りクリエイティブ・マーケティングキャリアを持つ。同社でのNO.1レスポンス率を誇る。その後、大手化粧品通販会社にてCRM事業部長に就任。赤字だった同事業を、抜本改革により1年で黒字化達成。2年で300%以上の成長を実現。2009年に独立しダイレクトマーケティングゼロ設立、これまでに500社以上の顧問・コンサルティングを行う。全日本DM大賞は金賞ほか毎年連続受賞、DMA国際エコー賞・ケープルズ賞も含め通算40冠。

【記者雑感】

2023年はジェームズ・ボンドでお馴染みの英国の人気映画シリーズ「007」の日本初公開から60周年の年だった。同シリーズには日本を舞台にした作品もある。故ショーン・コネリーが主演した「007は二度死ぬ(原題:You Only Live Twice)」だ。「二度死ぬ」とは凄い言葉だが、実は作詞家でエッセイストの永六輔氏も「人間は二度死ぬ」という言葉を遺している。永六輔氏のものは一度目は肉体的な死、二度目は人々から忘れさられるという死と解説している。

読者諸兄も2023年は国内ミュージシャンなど訃報が相次ぎ、強烈に「死」を意識させられる年だったのではないか。翻って人間は二度死を迎えるとして、その二度は肉体と忘却だろうかと考えてもみた。筆者はこう思う。一度目はその人たる特徴の死、そして二度目が肉体的な死。例えばシンガーであれば一度目の死とは歌えなくなったとき、そして二度目こそが天国に旅立つときに迎えるのではないか、と。もちろん一度目の死と二度目の死が同時に訪れることもある。残酷だが。

田村氏は齢50を超えてもなお業界のトップマーケターとして走り続けているが、インタビューにもあるように残り時間への意識も始めている。決して短くない付き合い故、話を聞きながら寂寥感にも襲われてしまったが時間には限りがある。筆者がこの原稿を書いているうちにも、誰かがこの記事を読んでいるうちにも少しずつ誰しもエンディングに刻一刻と近づいているのは紛れもない事実だ。そんな中、バトンをつなぐべく氏の次世代への思い入れは深い。「既に有望株がいるのに自分が気づいてないだけかもしれない。だとするならば表舞台に出てこれるよう環境を用意するのもメディアの役目」と遠回しながらお叱りも受けてしまった。ここ最近、筆者はZ世代(※)の期待人材や末恐ろしいインターン生や現役学生と接することがとみに増えている。筆者にも同じように時間には限りがあり、なんとか彼ら彼女らを表舞台に引っぱり出せないものかと思案に暮れる日々だ。

…ただ、田村氏は若手のとんでもないスタープレーヤーが登場してきてもきっと、ドラゴンボールの孫悟空よろしく「わくわくしねえか!!すげえ強いヤツと出会うなんてよ!もっと強くなるぞーっ!」なんてことを当分は言ってくれるのだろうが。

※Z世代:1990年代半ばから2010年代序盤生まれを指す世代名

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