2025.07.07 通販支援
成長するメンズコスメ市場、中高年層にも拡大
オンライン会議の増加やポップアイドルの影響などもあり、メンズコスメ市場が伸びている。リアルブースでのメイク体験といったイベントが開かれ、新規参入組をはじめ多くのブランドが協賛・出展する展示会も盛んだ。D2C事業者や老舗通販企業、酒造メーカーなども有望市場と捉え、顧客開拓に注力している。
高まる男性の美容意識、スキンケア商品がけん引
マーケティングリサーチ会社のインテージによると、2024年のメンズコスメ市場規模は前年比14.8%増の497億円と拡大した。9割近くを占めるスキンケア商品の中では化粧水・洗顔料が5割を占め、美容液とクレンジング化粧品が大きく伸びた。
24年の基礎化粧品購入金額を19年と比較すると、1,869円から3,131円へと1.7倍に増加。年代別では20~30代が1.8倍と増え、60~70代でも1.5倍となった。若年層だけでなく、中高年層でも男性の美容意識が高まっていることがわかる。
拡大の要因としては、ECの浸透により実店舗に行かなくても購入できるようになったことが大きい。特に中高年層にとっては、人の目を気せずECでじっくり選べることが購入ハードルを下げたようだ。一方で、若年層はコスメ体験イベントの増加やポップアイドルの存在、ユーチューバーなどによる発信が背中を押したとみられる。
2024年のメンズコスメ市場は500億円規模に成長した(出典:インテージ)
関連業種企業など目立つ新規参入
新たな有望マーケットとしての期待から、新規参入も目立つ。
男性向け理容室「ディアバーバー」などを手がけるディービーキューピーカンパニーは25年6月、自社のメンズコスメブランド「ダンディライフ」のオンライン販売を始めた。これまで理容室の顧客を対象としていたが、「父の日限定ギフトセット」を機にECへと広げる。
理容室で蓄積した知見と顧客から寄せられた声を反映し、基礎化粧品などを開発。今後はスキンケア、スタイリング、エイジングケア、香りなど幅広い商品展開を予定しており、公式サイト開設や理容室での体験型販売、SNSでのライフスタイル提案なども進める。
現役の大学生がメンズコスメブランドを立ち上げたケースもある。洗顔料とオールインワンローションをEC展開するブランド「ラディファン」は、2025年5月にリリース1周年を迎えた。
大学1年生で商品の製造委託やホームページ制作、物流手配などを1人で始めた研岡友太氏は、モデルも自身が務める。現在はアマゾンで販売しており、雑誌掲載やメディア評価を通じて売上は少しずつ上昇しているという。
メイク体験や肌診断などをタッチポイントに訴求
ポップアップショップを通じた肌診断や無料メイク、ポートレート撮影、美容相談などの体験イベントも人気だ。
コスメの口コミサイトを手がけるアイスタイルが運営する東京・原宿のコスメフラッグシップショップ「アットコスメ トーキョー(@COSME TOKYO)」も、メンズコスメのタッチポイントとして利用されている。
プチプラからプレステージ、韓国コスメやメンズまで約700ブランドを扱っていて、2階には「メンズコスメ」コーナーを設置。さまざまなスキンケア製品などをセルフ形式で自由に試せる。最近はメンズ用フレグランスの需要も増加しているが、こちらも3階に集約したフレグランスエリアで試すことができる。
EC展開するメンズコスメブランドが、期間限定のポップアップコーナーを設けることも多い。25年7月は韓国発のビューティーブランド「ラネージュ」や、マンダム社のオーガニックコスメブランド「アオノ」が展開している。
「@cosme TOKYO」に新設された「フレグランスゾーン」(出典:アイスタイル)
メンズコスメのECやZ世代に人気のヘアサロンサロンを営むリップスは、メンズコスメブランド「リップスボーイ」初の旗艦店を2024年11月に東京・渋谷にオープン。商品販売だけでなく、タッチアップから本格的なメイクサービスまで美容師によるフェイススタイリング提案を一人ひとりに行う。
メンズコスメへの注目度は高まっているものの、ヘアサロンの接客では「一歩を踏み出せない」「使い方が分からない」という声が多い。コスメ体験を通じて不安を取り除き、自信をつけてもらうとともに、ブランドの信頼性向上につなげる。
メンズ用BBクリームを販売するウォルグは24年11月に大阪高島屋でポップアップストアをオープンし、期間中にメイク体験と写真撮影のイベントを開催。プロのメイクアップアーティストによるメイクと、プロカメラマンによるポートレート撮影を無料で提供した。
メンズ美容インフルエンサーの育成・マネジメントを行うマゼルシェアは24年10月、メイクレッスンなどを楽しめる大規模体験型イベント「Men’s Beauty Festival 2024」を東京・渋谷で開いた。20以上のメンズコスメブランドが出展し、メイク・ネイル体験やビューティーレッスン、肌診断などを実施。イベント当日は、同社の美容感度が高いインフルエンサーたちが会場に集結した。
木村拓哉氏のCMで知られる「バルクオム」を展開するバルクオムは2025年6月、東京メトロ丸ノ内線新宿駅のメトロプロムナードで「男の肌戦闘力診断」を開催した。前の週には大阪駅で実施しており、診断により購入の迷いや不安を減らすナビゲーションとしても機能する。
専用モニターで肌をスキャンし、潤いなど肌に必要な7つの要素に分けて解析して可視化。診断結果はQRコードで画像として保存でき、受けた人全員にスキンケアサンプルを提供する。
そのほか、眉の手入れのコツと簡単メイクのHOW TOを学ぶ公式インフルエンサーによるセミナーの開催や、完全招待制のフレグランス試香会なども実施。試香会では、トークショーや新製品の香りをイメージしたカクテル試飲を楽しむ体験を提供している。
バルクオムは新宿駅で男性の肌診断イベントを実施(出典:バルクオム)
ミドル・シニア層に強いメーカー通販も本腰
メンズコスメ利用者のコア層である20~30代にとどまらず、ミドル・シニア層へのアプローチも盛んになっている。
化粧品通販企業のファンケルは2025年6月に50代以降の男性に向け、健康やライフスタイルに寄り添う男性向け情報誌「FANCL M」を創刊した。男性特有の悩みに応えた商品や生活習慣改善・健康に役立つ情報を掲載する。
長年にわたり美容や健康に関する商品を扱ってきたが、「男性ならではの悩みに寄り添った提案」を求める男性客からの声が増加。美容分野では「薄毛」「体臭」「シミ・肌の乾燥」などの悩みをもとに、「自分メンテナンス」をキーワードとして訴求する。
スキンケア製品などについても、調査データをもとに分かりやすく紹介。これまでも30代男性向けにオールインワンローションなどを手がけており、中高年メンズコスメ市場への拡大を狙う。
40~70代のミドル・シニア男性をターゲットにしたメンズスキンケア商品で成功しているのが、サントリーウエルネスだ。22年にオンラインで発売した「ヴァロン」シリーズは、1年目で約10億円、2年目には30億円超を売り上げ、3年目の24年12月期には前期比47%増の約48億円と伸張した。
「セサミン」などのサプリメントや女性用コスメを扱う同社の中心顧客層は40代以上だが、男性用コスメの開発は初めてだった。そのため商品開発時には、約150人の外部モニター一人ひとりに1時間以上かけて徹底的にヒアリングしたという。
40歳以上のスキンケア未経験男性をターゲットに、ウイスキー樽材から抽出される成分も使って化粧水、美容液、保湿クリームを一本で手軽に試せる「オールインワン」タイプを開発。4種類の香りを用意し、お試し用に小包装タイプをそろえた「10日間体験キット」も展開した。
「ヴァロン」は4種類の香りをそろえている(出典:サントリー)
まとめ
年代にかかわらず男性の美容意識は高まっており、今後もメンズコスメ市場は伸びていく見込みだ。若年層では眉や肌などのメイクアップ需要も増えていることから、商品ラインナップも拡大するとみられる。
ただ、既存のコスメEC企業をはじめD2C事業者などの新規参入も目立つため、競争はより激化する可能性が高い。まずは商品体験できる機会やお試しサンプルの提供、肌のトラブル相談など、女性向けコスメと同様に納得して使ってもらうための取り組みが成功へのカギとなりそうだ。
執筆者/渡辺友絵
【記者紹介】
渡辺友絵
長年にわたり、流通系業界紙で記者や編集長として大手企業や官庁・団体などを取材し、 通信販売やECを軸とした記事を手がける。その後フリーとなり、通販・ECをはじめ、物 流・決済・金融・法律など業界周りの記事を紙媒体やWEBメディアに執筆している。現在 、日本ダイレクトマーケティング学会法務研究部会幹事、日本印刷技術協会客員研究員 、ECネットワーク客員研究員。
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