2022.03.30 コラム
マズローの欲求段階説とは?マーケティングに必要な理由と応用例
マズローの欲求段階説とは人間は自己実現のために絶えず成長すると仮定して理論化したものです。5つの段階に分けられ、一つ欲求が満たされるごとに次の欲求を満たしていく心理的行動を描いたものです。マーケティング戦略への新たな一手となるので、ぜひ一読してみてください。
マズローの欲求段階とは?
マズローの欲求段階説とは心理学に基づく理論の一つで、人間は自己実現のために絶えず成長すると仮定して理論化したものです。
全部で5つの段階に分けられ、1つ下の欲求が満たされると次の欲求を満たそうとする人間の基本的な心理的行動を三角形で表しています。
マズローの欲求段階説の歴史
マズローの欲求階層説は、アメリカの心理学者アブラハム・マズローが執筆した1943年の論文「人間の動機づけに関する理論」で最初に紹介されました。マズローは後に著書『人間性の心理学―モチベーションとパーソナリティ』でこの理論を洗練させました。それ以来この理論は社会学、経営者訓練、心理学のクラスで人気のテーマとして扱われています。
マズローの欲求5段階説
マズローの欲求段階説で分けられた5つの欲求を一つずつ詳しく見てみましょう。
1.生理的欲求
ピラミッドの根底には、人間の存在に対する最も基本的な欲求があります。これを生理的欲求といいます。
生理的欲求には水、食料、住居、性、睡眠、呼吸などが含まれます。つまり生きていくため、生命の維持のために必要不可欠なものをさします。人間が持つ最も本能的な欲求で、これが満たされなければもう一段上の欲求へと成長、移行しないというのがマズローが考えた理論です。
2.安全の欲求
生理的欲求が満たされると次に進むレベルが安全の欲求です。
一言で表すならば「安心した、安定した状態で暮らしたい」という欲求です。人は心身が健康で経済的な余裕が生まれると、危険から身を守るための安全な環境や安定した生活を築きたいと思い始めます。
上記で述べている危険から身を守るというのは、経済的困窮や精神的不安や恐怖、あることへの依存や保護などからの脱却を表し、それは社会構造、秩序、法などを求めることにつながります。
3.社会的欲求
安全欲求の次は社会的欲求です。アリストテレスはよく「人間は本質的に社会的動物である」と謳っていました。
集団に対して愛や帰属性を求める欲求で、他者との心地よく充実した関係を通じて満たされます。友人や家族、社会の一員になり、愛に応えたいという願望は社会的欲求の範囲に属するものです。
この欲求が満たされない場合、社会的な不安や集団での孤立感を感じやすくなります。何らかの安心感や受け入れてくれる場所を求めるのが社会的欲求の特徴です。
4.承認欲求
社会的欲求の次の段階は承認欲求です。
承認欲求とは他者から認められたいと思う欲求です。マズローは承認欲求を「低位の承認欲求」と「高位の承認欲求」の2つのカテゴリーに分類しました。
低位の承認欲求とは他者から尊敬されたり褒められることによって満たされます。一方で高位の承認欲求は自立性や自己の尊重によって満たされると定義しました。
また、社会や職場で自身の地位を高めたいと思う出世欲も承認欲求の一つで、この欲求が満たされないと劣等感を生み出したり無力感が生じます。
5.自己実現の欲求
自己実現の欲求はマズローの欲求階層理論における究極のポイントです。
自己実現の欲求とは本当の意味での充実感と満足感です。自分自身が「こうなりたい」と願う欲求で、上記した4つが満たされることで実現するといわれています。
自分らしさや自分にしかできないことを達成したいと思う欲求、自分の描く理想に近づきたいと願う欲求です。
欠乏動機と成長動機
◆欠乏動機
マズローは自己実現を「成長の必要性」と呼び、それを他の4つの段階から分離し、欠乏動機と呼びました。
彼の理論によると下4つの欲求を満たさない場合、不満や不快な結果を生み出すことになります。それが欠乏動機です。
◆成長動機
欠乏動機とは対照的に、成長動機には自己実現の欲求のみ含まれます。自分が目指す像に近づくことが成長となり、それが自己実現へとつながるという考え方です。
マーケティングにおいての可能性
▽マズロー理論とペルソナ
マズロー理論によって、顧客(あるいは見込み客)のニーズを分類しやすくなります。
自社が提供する製品やサービスは「マズロー理論でいうとどれに該当するか」と考えることで、ブランディングのヒントが見えてくるはずです。
たとえば、ラグジュアリー製品は自己承認や自己実現に対する欲求を叶える商材です。セキュリティ関連のグッズであれば階層においては下の部分、つまり人間の本能的な欲求を満たすものでしょう。両者のマーケティング方法はまったく異なります。
ペルソナを設計するうえでも、顧客はどの階層のニーズを満たしたいのかを確認することで、より効果的なマーケティングが進められるはずです。
マズローの欲求階層説の実践例
ここでは、マズローの欲求段階説を5つの段階ごとに当てはめて事例をお伝えします。
(1)生理的欲求に当てはまる例
ニューデリーのOxypure(オキシピュア)は消費者の生理的欲求を実践したものです。
デリーでは汚染の増加によって新鮮な空気を求める消費者たちの生理的なニーズがあることをマーケッターが見出し、酸素バーをオープン。奇抜なアイデアではありますが、人としての本質的な欲求を突いた優れたマーケティング例でしょう。
(2)安全の欲求に当てはまる例
金銭的な損をしたくないというニーズは強く、価格ドットコムなどをはじめ、料金比較ができる専門サイトは多くあります。
Amazonでは同じ商品であっても出品者ごとの金額の比較ができるUI設計がされています。EC事業者の実践例として、他社よりリーズナブルで機能的であることを説得できれば、ユーザーの安心感は増すと考えられます。
もちろん、買いものをすると気にクレジットカード入力による情報漏洩リスクがないなど、信頼できるプラットフォームであることが大前提です。
(3)社会的な欲求に当てはまる例
FacebookやTwitterなどSNSは社会的な欲求を満たすツールとして浸透しました。
そのほか、特定の商品に対してメンバーシップ・プログラムを設ける企業も多くあります。たとえば、カシオは「CASIO ID」に登録することで、新製品情報やイベントの招待などがいち早く届きます。
いわゆるファンクラブのように顧客同士がつながれる場所をインターネット上でも作り出すことで、「つながりたい」というニーズを満たすことが可能です。
SNS上のユーザーにコンテンツを作ってもらうキャンペーン(ユーザー参加型コンテンツ)を展開する企業が増えていますが、これも顧客がブランディングに加わるという連帯感を覚えることで、よりブランドとの関係性を深めるうえで効果的です。
(4)承認欲求に当てはまる例
ユニリーバのブランド・ラインナップ、DOVE(ダヴ)はすべての女性が自分自身を愛することを啓蒙すべく、リアルビューティーキャンペーンに取り組みました。
インターネット上で大反響を呼び、1年で15億円の売り上げ増と収益面においても成功を収めました。
▼動画はこちらから
(5)自己実現の欲求に当てはまる例
インドの陸軍はインドの若者を多く集めるために「普通ではない生活を送る」と題した動画を掲載するキャンペーンを行いました。
自分の人生をより有意義なものへと変え、高い社会貢献度と充実感が得られる職務であると訴えかけました。これはまさに人間の自己実現欲求を刺激するPRだと言えます。
【まとめ】新しい顧客へのリーチに
マズローの欲求段階説はペルソナの設定をはじめ、新しい顧客にリーチする可能性を無限に広げてくれます。
顧客のニーズをより適切に特定し、それらを満たすためにビジネスをより焦点を絞って位置付けることができます。これにより顧客が最も必要としているものをビジネスにすることで、変化する嗜好やトレンドに適応し先取りすることができます。
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