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2018.07.12 コラム

通販事業者が″今”取り組むべき「チャネルミックス」の手法とは!?

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カタログ、テレビ、WEBなどと複数のチャネルを持つ通販企業がチャネルミックスに課題を抱えているケースは少なくない。WEBチャネルを強化することにより、既存のメインチャネルと対立構造が出来上がってしまうといったケースもある。業界全体の大きなテーマとも言えるかもしれない。そこで通販通信編集部は、複数の通販チャネルでの実務経験を持つ、(株)ディノス・セシールの石川森生CECOと、(株)ダイレクトマーケティングゼロの田村雅樹社長に、通販事業者がいま取り組むべきチャネルミックスについて語ってもらった。

 



石川「獲得した入り口とリテンションのチャネルがねじれていた」

 ――カタログ、テレビ、WEBなどと複数のチャネルを持つ通販企業が抱えるチャネルミックスの課題についてお聞きしたいと思います。ディノス・セシールさんでは課題についてどう捉えていますか?

 石川:私は、「ECをさらに伸ばしたい」というミッションのもと、2年前にディノス・セシールに入社したのですが、課題に感じているのは、「獲得した入り口とリテンションのチャネルのねじれ」です。ねじれの極端な例として、当社ではECから流入し、Tシャツ1枚だけご購入いただいたお客さまに対して、場合によっては2kgくらいの紙のカタログをお送りしていました。

 

 

 カタログが好きなユーザーには引き続きカタログを楽しんでもらい、WEBが好きなユーザーに対しては、WEBと合わせて、テクノロジーによって紙の弱点を克服した従来型とは違う新しい形のカタログをお送りする。

 

 ねじれを解消するためには、紙とWEBでお互いを補完し合っていくのが最善解じゃないかと考えています。当社は紙のノウハウは国内でトップクラスのものを持っています。紙をテクノロジーの力でエンハンスしていくことで、ECも伸びていくというのがディノス・セシールにとって正しい動き方かなと思っています。

 

 WEBをずっとやってきた人間の感覚からすると、紙はレスポンス率が非常に高いんです。ウェブ主体のダイレクトマーケティングの引き上げ率と比べてもかなり高い。これをウェブで補完するとなると、顧客の母数を増やすしかないのですが、当社のハウスリストは1300万件以上あるわけです。これをさらに増やすというのはなかなか難しいんですよね。こうした状況の中で、紙をWEBにリプレースしていくという発想は捨てました。もちろん、将来の顧客となる層へのアプローチはWEB中心になっていくわけですが。

 

田村「組織もチャネルをシームレスに補完し合うのがゴール」

 ――田村社長はいかがですか。

 

 田村:もともと紙の通販をやっていた会社がWEBで売上を伸ばそうとしていて、うまくいかなかったケースを沢山見ています。そもそも「組織」が向いている方向がずれているなと思うこともあります。例えば「通販」と言う切り口で、もともと事業部を持っていた会社が、後付けで「WEB事業部」や「EC事業部」などを新設している例もあります。こうすることで、部分最適になったり事業部同士の対立構造になったりしてしまっていることもあり、もったいないと感じます。WEBに力を入れることで「通販」自体をどれくらい本気で変えようとする覚悟を持っているかが重要。そこがわからない会社が多いと思います。「世の中ではWEBが伸びているから、事業部を新しく作ってとりあえず予算を持たせる」は本質的とは言えません。

 

 

 WEBは、それだけで難しいことをしているように捉える層も少なからずいるようです。もともとあった通販事業部のメンバーなどが「既得権益が崩れそうで怖い」などと構えてしまい、組織がまとまらないという話を耳にしたりします。

 

 ですから「組織」についてもチャネルをシームレスに補完し合うのがゴールなので、それぞれのコミュニケーションの特徴を理解したうえで連携していくべきですよね。

 

 「ECを強化する」というときに社内向けの説明会を開く会社さんもあると聞きます。社内理解を得たうえで、会社としてまとまっていくのには、良い取り組みだなと思います。

 

 石川:まさに当社がそうですね。私が入社した際に、社内セミナーを開催しました。社長がEC強化に向けて旗振りをしてくれて、広報メンバーの力強い後押しもありました。環境を整えてもらえたかなと思っています。

 

買い物体験自体がエンターテインメント

 ――紙やWEB、テレビなど複数チャネルを持つ通販企業は今、どんなマーケティング施策を検討すべきなのでしょうか?

 

 石川:当社はテレビ通販チャネルも持っていますが、テレビ通販は、「買う」行為自体がエンターテインメントになっているのかなと思っています。映像を見て、「欲しい」という気持ちを喚起されて商品を注文する、といった一連の買い物の勢いは一種のエンタメで、ほかの購買チャネルが台頭しても影響されていない部分なんじゃないかと。

 

 例えば、休みの日に車を出して家族でアウトレットに行って買い物をする、ということがありますよね。でもアウトレットで売っているものって、ウェブで探せばもっと安いものがあったりするわけです。でも、このアウトレットに行くということが「イベント」であって、行為自体に価値があるわけですよね。

 

 田村:「買い物体験」自体がエンタメという考えですよね。

 

 石川:そうですね。エンタメを提供することによって、商品価格を超える「価値」を提供するということです。「カタログが届くことが楽しみなこと」=「エンタメ」になるようなところに持っていければいいと思っています。紙のカタログとウェブの合わせ技を編み出すことで、他社との差別化にもつながると思います。

 

 ――田村社長はいかがですか?

 

 田村:タイミングと接触時間も重要だと考えています。タイミングはウェブの方がピンポイントで狙えるし、接触時間の計測も取りやすいですよね。オフラインの施策だとなかなか「このお客さんは興味がありそうだ」といったKPIはとれないですから。時間については、どれくらいお客さんに対して接触時間がとれるのかが重要になってきます。より接触時間を長く取って、お客さんとのつながりを大事にして関係性を構築していくことが大事です。

 

 そのためにはデジタルとアナログの長所を使い分けてあげるといいですね。接触時間を確保するために、オフライン施策はアクショントリガーが得意です。例えば、紙施策であれば大きくて重いものも届けられます。見た目や触感をフックに、最終的にオンラインに来てもらうという導線を作ることができますよね。

 

 自社の事例ですが、当社では顧客などに送る年賀状の工夫に力を入れています。例えば、VRグラスを年賀状としてプレゼントして、年賀状を受け取った人だけが見られるVR動画をウェブ上に用意する、といった内容です。今年は、ルービックキューブを年賀状として届けました。ルービックキューブを解くと通販に関連したクイズの文がわかるようになっていて、その問題に正解するとリアルイベントに招待するという内容でした。

 

 

 石川:すごい施策ですね。VRグラスの事例は、ハードウェアをユーザーに提供するということですよね。うちだったら、紙メインのお客さまにスマートフォンをプレゼントしたいですね(笑)。そのスマホを使って是非WEBも見てほしい。

 

 田村:実際にユーザーに端末をプレゼントする通信教育の会社さんもありました。専用のタブレットをプレゼントして、通教のカリキュラムの進行状況をチェックできるようにしています。例えば、何日間ログインしていないとか、この問題でつまずいているといったこともわかります。

 

 石川:かなり濃厚なCRMが実施できますね。

 

 田村:当社はファクトベースドコンサルティング企業ですので、そうした通販会社さんの事例を沢山持っています。経験則や事例から通販会社さんをバックアップするのは楽しいですね。この仕事をやっていて、得だなと思うことは、エッジの効いた施策の裏側にある戦略や、成否を統計的に伝えられることですね。

 

 石川:確かに今日もダイレクトマーケティングが日々進化していることをコンサルされている感じです(笑)

 

成功のカギは「チャネルの融合」と「シナリオ」

 ――通販企業は今後、どういう方向性に進むべきだとお考えでしょうか。

 

 石川:紙やWEBどっちがいいということではなく、両者の得意不得意を理解したうえで、いかに融合させていくかに尽きるのではないでしょうか。WEBは、「やること」も「やれること」も常にいっぱいあると思います。一方、カタログは、出来上がって配布してしまうと、そこから何かをすることはできないんですよね。こうした特性を理解したうえで、「何ができるか?」「何をするべきか?」を施策に落とし込んでいくことが大事です。

 

 田村:オフライン施策でも、お客様に合わせてリマインダーやアラート機能を果たすようなコンテンツが実現できればベストですよね。究極は念じれば内容が変わるカタログとか・・・(笑) 実際、カタログを届けた後にもう一度販促をかけるとしたらどんなコンテンツがいいのでしょうか?

 

 石川:新しい紙のレコメンドの仕方を考えています。例えば革のジャケットを購入したお客さまには、その革のジャケットを着用したモデルを表紙にした冊子をお届けするという施策もできるんじゃないかと。当社の一年間の売り上げは、カタログが出てカーブが上がり、また下がってというのを繰り返しています。このカーブをもう少しなだからにするための施策を検討しています。

 

 田村:面白いですね。ディノス・セシールさんは、カゴ落ちメールを紙のDMで実施するというのもやっていますよね?

 

 

 石川:はい。これまでのような考えのもと、実現可能なパートナーを探してようやくたどり着きました。

 

 田村:先ほどタイミングの話をしましたが、ユーザーのニーズは秒単位で変わりますから、オンラインで収集したフラグをオフラインに反映させていく施策は今後さらに増加するでしょうね。こうした取り組みを強化するために、ウェブのインタラクティブ性を利用すると良いと思います。例えば、アンケートに答えてくれた人の継続率が高いとか、メールの開封の有無によってその後のシナリオを変えるとかですかね。

 

 ――田村社長は、通販企業が進むべき方向性をどう捉えていますか。

 

 田村:複数のチャネルをうまく使っていくという意味でも、やはりシナリオが肝になってくると思います。シナリオはいくらでも分岐させることができて、パターンは無限にあります。ただ、大変ですから最初の分岐パターンは3パターンくらいで良いと思います。「ゴールデンルート」を意識しながら、これを、どこまで「タイミング」と「接触時間」に気を遣って「お客さまとの関係性のオン・オフを同期させながら深めていく」ことがますます重要になると思います。

 

 石川:非常に勉強になりました。ありがとうございます。

 

 田村:こちらこそありがとうございました。

 

 

(了)

 


<株式会社ディノス・セシール 石川森生 CECO>
【プロフィール】
2008年4月、新卒でSBIホールディングス入社。SBIナビ(現ナビプラス)の立ち上げに参画、営業統括の責務を担う。2011年6月よりファッション通販サイトのマガシークにてマーケティング部門の責任者を務める。2014年1月に、製菓包装資材などを販売するタイセイのEC事業を担当する子会社TUKURUの代表取締役社長に就任。2016年2月1日より現職。

■ディノス・セシール


<株式会社ダイレクトマーケティングゼロ 代表取締役社長 田村雅樹 氏>
【プロフィール】
早稲田大学法学部卒業後、「株式会社ベネッセコーポレーション」、大手化粧品会社を経て、2009年に通販専門のコンサルティング会社「ダイレクトマーケティングゼロ」を設立。通販化粧品・健康食品企業を中心に計500社以上の顧問・コンサルティングを行う。「AMIDAS」や「通販7指標必勝方程式」などの独自理論を打ち立て、クライアントの売上を20倍上げた実績をもつ。「DMA国際エコー賞」「ケープルズ賞」をはじめ「全日本DM大賞」などダイレクトマーケティングに関する賞を国内外で通算37冠受賞。著書に『ゼロからはじめる通販アカデミー』(ダイヤモンド社)がある。講演・寄稿等多数。

■ダイレクトマーケティングゼロ

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