2026.09.07 調査・統計
『このデータが面白い!』 第11回:AIから回答を得た後の「再検索」という行動_その実態を知る
(株)デジタルコマース総合研究所代表の本谷(もとたに)です。ECアナリストによる解説シリーズ『このデータが面白い!』の、今回のテーマは「AI検索後の再検索」です。
本シリーズの第8回目でもAI検索を取り上げました。しかしAI検索は急速に発展しつつあるトレンドであるがゆえ、新しい情報が次々と発信されています。そのなかでも、特に「消費者のAI検索の活用スタイル」が具体的にわかり始めた点に、私は強い関心を抱いています。さらにその点を注意深く掘り下げてみたところ、AI検索後に「再検索」が頻繁に行われていることが分かりました。今回のコラムでは「AI検索後の再検索」をテーマに、その実態を読み解くことができる興味深いレポートを紹介したいと思います。
・対象データ
株式会社P R I Z M A 「一般生活者におけるAI検索の利用実態に関する調査」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000179.000149156.html
https://www.prizma-link.com/press/whitepaper/form/whitepaper142
■前回記事
ECアナリストによる解説シリーズ 『このデータが面白い!』 第10回:SNS利用度の変化と現在地をデータでさぐる
若い世代ほどAI検索の回答・要約をしっかりと読んでいる
はじめに、AIによる回答・要約がどれくらい読まれているのか、その「程度」について見てみましょう。「最初から最後まで読んでいる」「必要な部分を中心に読んでいる」を合算した数値は、全ての年代でほぼ9割に達しています。程度の差はあれども、AI検索の回答・要約を大半の方が読んでいることがわかります。
読んでいる程度について年代別の相違を細かく比較してみると、「最初から最後まで読んでいる」の回答は20代で38.9%、30代で31.0%である一方、60代は20.1%と年代が上昇するにつれ回答率が減少しています。若い世代ほどAI検索の回答・要約をしっかりと読み込んでいることが理解できます。
商品購入時のAI検索は既に一般化
続いて「購買プロセスでのAI活用」について触れたいと思います。次のグラフは商品やサービスを選ぶ際、『おすすめの〇〇』や『〇〇の選び方』などのAIの検索回答を参考にした経験に関する回答です。「とてもある」「ややある」を合算した回答率では、20代が72.5%、30代が81.6%と高い値となっています。
一方で50代は67.6%、60代でも54.4%と回答率は高く、シニア層でも購買プロセスにおいてAIを活用していることが分かります。このことから、商品購入時のAI検索は年代を問わず既に一般化していると言ってもよいでしょう。
ゼロクリックとは言え通常サイトへのアクセスは激減しているわけではない
ここでは、AI検索後の通常サイトへのアクセス状況について触れたいと思います。次のグラフは、検索画面でAIの回答・要約を読んだ後、その下に並んでいる『通常のウェブサイトのリンク(検索結果)』をクリックする頻度に関する回答率です。「とても減った」「やや減った」の回答率を合算すると61.0%となり、全体の6割以上がAI検索によって通常サイトのアクセスが減っていることがわかります。まさに「ゼロクリック現象」そのものです。
この「ゼロクリック現象」に関しては、メディアや業界関係者がたびたび言及しており、このグラフはそのことを具体的に示すものとなっています。しかし「あまり減っていない」「まったく減っていない」は合計で4割です。また「やや減った」は47.0%とこの中で最大の回答率ですが、「やや減った」程度であり、著しく減ったわけではなさそうです。
本コラムで具体的なデータの紹介は省略しますが、私はヴァリューズ社の「Dockpit」を用いて様々なサイトのアクセス状況をウォッチしており、1~2年前と比較しアクセス数が大幅に減少しているわけではないことを確認しています。ゼロクリックは確かに事業者にとって悩ましい課題ではあるものの、通常サイトへのアクセスが激減しているわけではないと私は見ています。
消費者は「再検索」を頻繁に行っている
自社のECサイトやブランドサイトを運営している事業者にとって、AIに自社商品や自社ブランドの情報を認識・推奨してもらえることは重要な課題です。しかしながら、仮にAIにそうしてもらったとしても、それで万事うまくいくというわけではないようです。
以下のグラフの通り、AIの回答・要約を読んだ後にさらに詳細な情報を得るために、別のキーワードを追加して「再検索」する消費者の回答率は「とてもある」「ややある」合わせて77.0%にも及んでいます。結局のところ、多くの消費者にとって初回のAI検索が最終的な解決策にまでは至っていないことを意味しています。
ちなみに(株)PLAN-Bマーケティングパートナーズが実施した「生成AIとの対話による購買行動調査 2026」では、生成AIが提案・推奨した商品やサービスについて、回答内容の追加検証として「Gooleなどの検索エンジン」が87.4%、「Amazonなどのモール型EC」が34.4%、「InstagramなどのSNS」が34.1%となっています。やはり消費者はAI検索だけに依存していないことがその調査でもわかります。
AI検索後の「再検索」に関する3つの意図
AI検索後の「再検索」という行動について、私は3つの意図があると考えています。1点目は「関連情報の掘り下げ」です。例えばAI検索によってある食品の情報を知った場合、「購入手段」「価格」「上手な調理方法やコツ」「相性の良い食材」といったように、様々な切り口での情報を知りたいと消費者は思うでしょう。また旅行先については「観光スポット」「交通手段」「地元の名物料理」「お土産」といった再検索も想定されます。つまり、ひとつのキーワードに対しより具体的で複合的なキーワードが連なっているということです。
2点目は「合理性や納得感の追求」です。「SNSで他人の評価を知る」「ECモールのレビューを参考にする」「様々な情報を比較検討してみる」「下そうとしている判断が正しいか答え合わせする」「購入に向けて不安を解消したい」「最終決断に向けて背中を押してもらう」といった目的で再検索を行っていると推測されます。
そして3点目の意図は「情報の信頼性の確保」です。次のグラフが示すように、AIの検索回答に対し「不安」「不満」を感じている消費者が多いことが分かります。そもそも消費者は根本的にAIの回答を信じきれない心理が作用しているものと思われます。いわゆるAIの回答内容の信頼性に関する「ハルシネーション」問題です。この点については今後AIベンダーによるレベルアップが期待されています。
消費者によるAI検索後の行動の6パターン
AI検索後の「再検索」について、もう少し整理しておきたいと思います。私はAI検索後の行動には、次に示す図の通り①~⑥まで6つのパターンがあると考えています。この中で「再検索」に相当するのは②~⑤です。AIでのリピート検索以外にも③オーガニック検索、④モール検索、⑤SNS検索は、当たり前のように行われていることでしょう。
AIO、GEO対策を通じてAI検索後に自社サイトにアクセスしてもらい、購入まで至ってもらえればベストです。しかし現実には、その前段として多くの消費者は「再検索」を行っていることを、しっかりと認識しておくことが重要と私は考えています。皆様もこの点をご理解いただければ嬉しく思います。
以上
【筆者プロフィール】
本谷 知彦(もとたに ともひこ)
株式会社デジタルコマース総合研究所 代表取締役 ECアナリスト
シンクタンク大和総研にて国内外の産業調査・コンサルティング業務にチーフコンサルタントとして従事。EC業界のスタンダードな調査レポートである経済産業省の電子商取引市場調査を2014年から2020年にかけて7年連続で責任者として手掛ける。その他日本政府の調査研究案件の実績多数。
2021年末に同社を退職し2022年初に株式会社デジタルコマース総合研究所を設立。EC市場の調査研究はもとより、豊富なデータに基づいた消費財のマーケット分析や事業戦略のアドバイス、および講演・執筆活動等を行っている。
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