2026.06.08 調査・統計
ECアナリストによる解説シリーズ『このデータが面白い!』 第8回:商品検索におけるAI活用の実態を知る
(株)デジタルコマース総合研究所代表の本谷(もとたに)と申します。ECアナリストによる解説シリーズ 『このデータが面白い!』の連載を開始させていただき、今回で8回目となりました。今回のテーマは「商品検索におけるAI活用」です。
ECで商品を販売したい事業者にとって、AI検索の重要性が増していることは言うまでもないでしょう。AI検索によって消費行動が急激に変化しようとしており、ネット業界ではAI検索対応のあり方や手法について様々な議論が繰り広げられています。(株)いつもが行った消費者向けのアンケート調査「商品検索における生成AI活用の実態調査」もその一環なのですが、AI検索で見落としがちな点が示唆されており、とても興味深く感じましたので今回紹介させていただきます。それでは具体的に見てみましょう。
・対象データ
株式会社いつも「第2回 商品検索における生成AI活用の実態調査」
調査時期:2025年12月 n=534
https://itsumo365.co.jp/news/25513
■前回記事
ECアナリストによる解説シリーズ 『このデータが面白い!』 第7回:Amazonの決算から同社の事業実態をひも解く
2025年はAIを使った商品検索行動が急速に広まった年
まずは「商品検索におけるAI活用の経験」についてです。次のグラフの通り、年代ごとに異なりますが、全体では「よく使っている」15.5%、「時々使う」39.9%となっており、商品検索時に意識的にAIを使っている消費者は、全体で55.4%と過半数を超えています。
「一度だけ使ったことがある」8.6%を加えると、64.0%と全体の3分の2に達します。したがって商品検索時のAI活用は既に一般化していると言ってよいと思います。実は同調査は2025年4月にも実施されており、この時はよく使っている」「時々使う」「一度だけ使ったことがある」の合計は47.1%でした。つまり8カ月で17ポイント増えたということです。このことから、2025年はAIを使った商品検索行動が急速に広まった年であったと私は捉えています。
なお2025年12月時点で64.0%ですので、2026年中には確実に7割を超えると私は予想しています。ひょっとすると夏の時点で既に7割に達しているかもしれません。
AI検索の目的は「タイパ」
続いて「商品検索時にAIを使う理由」についてです。全体で最も高い回答率は「時間をかけずに探せる」で54.7%でした。年代別でもバラツキはなく、全年代共通の理由となっていることがわかります。次に高い回答率であったのは「比較・要約してくれるから便利」で45.9%でした。
このふたつの理由ですが、“時間をかけない”、“要約してくれるので便利”といったように、その他の回答項目との違いは「検索の効率性」です。いわば商品検索時のAI活用の目的は「タイパ」であると言えるでしょう。したがって自社の商品情報が消費者のAI検索で拾われたとしても、どのような特徴があるのか瞬間的に理解してもらえる情報でないと、結局消費者には選ばれないということになりそうです。この点はぜひ気を付けていただきたいと思います。
なお、この回答結果を前回(2025年4月)と比較すると、次のグラフの通りほぼ全ての回答率が大きく上昇しています。理由を問わず、商品検索時にAIを活用しようとする消費者マインドが高まっていることがよくわかります。
今のところ従来の検索手段が最も消費者は重視
次のグラフは「よく使う検索手段」に関する商品カテゴリー別の回答結果です。この質問では 「使ったことがある検索手段」ではなく「よく使う検索手段」であるという点に注意してください。つまり消費者が各々の検索手段をどれくらい重視しているかということです。
結果ですが、すべての商品カテゴリーにおいて、Google検索、楽天市場内検索、Amazon内検索が上位を占めています。今のところ従来の検索手段が最も消費者は重視しているということでしょう。一方で、ChatGPT、Gemini等AI検索の回答率も、従来の検索手段に追いつきそうな水準まで上昇していることがわかります。おそらく今後AI検索はさらに増加し、従来の検索手段と同等レベルに達するのに、それほど時間はかからないように思えます。
ちなみに商品カテゴリー別では①コスメ・スキンケア、②家電・ガジェットがその他のカテゴリーよりもわずかに高い回答率になっています。ただし、あくまでもその差はわずかですので、商品カテゴリーを問わずAI検索ニーズがあると言ってもよいのではないでしょうか。
SNSの利用率の減少はAI検索の影響?
ここで、少し異なる視点からAI検索を考察したいと思います。実はあまり知られていないと思うのですが、SNSの利用率が減少していることが指摘されています。サイバーエージェントが2023年から毎年実施している「Z世代SNS利用率調査」によれば、2023年、2024年、2025年のInstagramの利用率はそれぞれ、75.6%、74.0%、71.6%と減少しています。Xも71.7%、70.9%、66.8%と、Instagram同様に下落しています。
これらSNSの利用率の減少についてはいくつかの要因が考えられるのですが、私は「AI検索」が大きく影響しているとの仮説をたてています。今やChatGPTに対し人生相談をする人もいるほどです。人々はあらゆる目的でAIを使用しており、その結果SNSの使用時間が削られているのではないでしょうか。
もしこの仮説が正しければ、従来のSNS戦略は見直しが必要かもしれません。SNSの利用率についてはあらためて別の回で触れることができればと思っていますが、SNSの利用率が減少しているとしたら、マーケティング戦略を根本から見直す必要性のある企業は多いと思います。この動向には注意深くチェックしていただきたいと思います。
AI検索における広告動向に注視
最後に、AI検索に関して2点触れておきたいことがあります。
1点目は「AI検索時の広告」についてです。米国OpenAIがChatGPTでの広告テストを日本含む5ヵ国へ拡大すると先日発表しました。AI検索において広告が登場するのは自然な流れだとは思いますが、消費者がAIによる客観性のある回答なのか、それとも広告なのかを明確に識別できるようになっていることが極めて重要だと考えられます。
※Open AIのリリースはこちら
AI検索では、多くのケースでユーザーは回答文章を素直に信頼して受け止めることでしょう。Googleなら「広告枠」「自然検索結果」という区別をユーザーはある程度理解していますが、AI検索では、回答全体がひとつの流れとして読まれやすく、広告との境界が曖昧になることが危惧されます。その点について注意して動向を見ておきたいと私は考えています。
AI検索対応では企業が本来追い求める本質が課題に
2点目は「AI検索対応」についてです。AI検索にうまく対応するために、AIO (AI Optimization)やGEO (Generative Engine Optimization)が重要などとよく言われています。
AIに自社の商品を認識してもらわなければ、そもそも消費者の目に触れることがありませんのでAIOなりGEOはとても重要です。しかしながら、きちんと認識してもらったとしても、類似商品との比較で負けてしまっては意味がありません。
世の中では今、AIO、GEOの議論が盛んですが、AIに認識してもらえるかどうかはテクニカルな話しです。ですがその後はAIによってシビアな比較がなされます。したがってAI検索時代は、商品の価値やブランドの特性が、今まで以上に厳しく問われる時代だと私は考えています。つまりテクニカル面の対応もさることながら、商品価値やブランド特性といった、企業が本来追い求めるべき本質がクローズアップされるようになると思います。
以上
【筆者プロフィール】
本谷 知彦(もとたに ともひこ)
株式会社デジタルコマース総合研究所 代表取締役 ECアナリスト
シンクタンク大和総研にて国内外の産業調査・コンサルティング業務にチーフコンサルタントとして従事。EC業界のスタンダードな調査レポートである経済産業省の電子商取引市場調査を2014年から2020年にかけて7年連続で責任者として手掛ける。その他日本政府の調査研究案件の実績多数。
2021年末に同社を退職し2022年初に株式会社デジタルコマース総合研究所を設立。EC市場の調査研究はもとより、豊富なデータに基づいた消費財のマーケット分析や事業戦略のアドバイス、および講演・執筆活動等を行っている。
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