2026.04.28 通販会社
第一歩は「顧客を知ること」! LTV最大化に向けたファンケルの顧客育成施策とは?(下)
データ分析を通じて顧客層別のアプローチを強化するファンケルは、従来の固定コスト配分の見直しや再配分を通じ、生きた顧客育成投資を進めている。さらにメンバーズサービス刷新により顧客アクションをスコア化して体験価値を高め、自社とのつながり推進を図る。EC・通販と店舗の連動によるOMO施策も手がける石川雅俊氏と佐藤眞梨氏に、前回に続き顧客育成やLTV最大化に向けた取り組みを聞いた。
時流に合わないサービスコストを見直しインパクトがある施策に再配分
――利益率を上げるために顧客にかけるコストを見直し、再配分や置き換えを進めてきた。メンバーズサービスの刷新なども実施したが、具体的な取り組み内容についてうかがいたい。
石川:コスト配分見直しの狙いは、時流に合っていないサービスコストを改めて見直すことだった。コストの置き換えの具体例としては、ライト層中心にコストをかけること、さらにそのかけ方を変えたことだ。2019年から取り入れたバースデーポイントはそれなりに成果や反応はあったが、お客様も次第に慣れてしまうし、他企業も同じことをしている。果たしてこのままでいいのか、と考えた。
ファンケルの強みの1つは美容と健康における様々な商品ラインナップであり、この強みをうまく使えないかと思っていた時、ミニサイズの商品を使っていただいたらどうかと思いついた。サンプルではなく、プレゼント用や通常販売しているミニサイズの商品で、スキンケアやサプリメントなどのミニサイズならば試使用や旅行、何かの際に持ち運びも便利なので喜ばれるのではないかと。クーポンやポイントという使ったら消えてしまうものよりも、誕生日という特別な時にモノとして残るほうが、お客様にとってもファンケルにとっても良い形になると考えた。
ライト層のお客様を中心に、お誕生日に合わせて何品の中からお好きなミニサイズ商品を選んで使ってもらえるように、プレゼント提供を実施した。もちろんそれだけではないと思うが自分で選べることも好評だったようで、始めた2024年から翌年にかけての継続率がアップした。コストが結構かかることは分かっていたが、バースデーポイントのようにもともとあったコストを置き換えるので大丈夫だろうと考えた。同じバースデーという切り口でもコストを置き換え、よりインパクトが強い方に投入したことになる。
――とても分かりやすい事例だが、バースデー用以外にもコスト配分を見直した事例はあるか。
石川:コロナ禍以前には、インターネット経由で注文するとプラス1ポイント還元のサービスがあった。これにはかなり多くのコストがかかっていたが、コロナが終息する頃にはインターネット注文が当たり前になったので、このサービスも終わらせた。
また、店舗でのアプリ登録や利用を推奨するために、アプリ使って注文するとやはり1%のポイント還元というサービスもあったが、こちらも取り止めた。その代わりに、そういったコストをもっと違ったサービスに置き換えるという施策を進めた。
石川雅俊氏
セグメントした層に会員向け情報誌も展開(出典:ファンケル)
顧客行動をスコア化し月単位に変更したステージアップに反映
――メンバーズサービスも大幅に刷新したが、その内容と狙いは。
石川:25年4月に、260万人の登録者に向けて新たなメンバーズサービスを開始した。これまでの購入金額に応じたポイント付与に加え、公式アプリやLINE、メルマガへの登録や口コミ投稿などお客様によるアクションをスコア化して集計し、ステージアップに反映。お客様の体験価値を高めることで、LTV向上を目指すサービスへと進化させることにした。
――さらに、かなり思い切った施策としてステージアップの機会も年1回から月1回へと変更したが、これについてはどうか。
石川:スコアが貯まれば、翌月からのステージアップが可能となった。これまでは1年待たないとステージアップの恩恵を受けられなかったが、やはりお客様からすると1年はちょっと長いというお声もあった。なので、しっかり継続してくださるお客様には少しでも早く還元できるようにと考えたが、ライト層や離反復活のお客様に対してこの変更のインパクトはかなり大きいと思う。メンバーズサービスの特典もステージに合わせ、商品体験や店舗でのメイク体験などさまざまなサ-ビスを追加した。
―― 1ヶ月単位でのステージアップはとても珍しいが、実施しているEC・通販企業はあるのだろうか。
石川:変更にあたって、他社の同様なサービスについてはかなり調べた。導入検討をしていた2023年当時には1か月単位でのステージアップ企業も数社あったが、全体として年間での更新が多い印象ではあった。
――ステージアップの変更にもコストはかかっていると思うが。
石川:かかってはいるが、やはり従来大きかったポイントやクーポンなどのコストを再配分することでカバーにつながっている。
ステージアップのチャンスは毎月(出典:ファンケル)
店舗での無料スキンチェックサービスも強化
――店舗における顧客育成の取り組みについてもお聞きしたい。昨年4月から今年3月にかけ、来店者への無料スキンチェックサービスを次々導入している。
石川:昨年6月に導入した「スキンチェックスコープ」は肌状態をわずか10秒程度で解析できる機器で、予約なしで来店したお客様に利用していただくことを想定した。今年3月に開始した「FANCL SKIN PATCH(ファンケル スキンパッチ)」は、AIによる角層解析技術を活用して肌状態や将来の肌リスクを予測することができるカウンセリングサービスだ。
「FANCL SKIN PATCH」はお客様ごとに、肌の強みである「GOODポイント」と、ケアすることで伸びしろのある要素「MOREポイント」の両面を提示している。お客様ごとに、やるべきこととやらなくていいことをお伝えすることができるため、信頼にもつながりコミュニケーション力が高まった。解析には30分ほどかかるので、事前にアプリやWEB経由による予約受付で対応している。
――WEBを通じて予約し店舗に足を運んでもらういわば「OtoO(Online to Offline)」の手法といえるが、現在OtoOでどのような取り組みを実施しているのかうかがいたい。
石川:まさに現在取り組んでいるところだが、ECなどのオンラインと店舗をつなぐ中核となるのはアプリだと思っている。ECのお客様も店舗のお客様もそれぞれアプリを持っているので、EC中心の方ならばお店でできることを体験していただく、逆に店舗中心の方ならばオンラインのコンテンツに触れていただく、といった動きを増やしていきたい。
「ファンケル スキンパッチ」は全国の直営店で体験できる(出典:ファンケル)
通販と店舗を一括設計するオムニチャネル本部を新設
――最近実施した組織改正もOtoO施策にかかわってくるのではないか。
石川:OtoOやオムニチャネルということで言えば、今までは本部が通販と店舗で分かれており、それぞれで業務に携わっていた。それが今年1月にオムニチャネル本部が立ち上がったことで、通販と店舗で共通することはオムニチャネル本部でやろうということになった。顧客育成や直営チャネルにおける一貫した体験は基本的に通販・店舗で共通のため、オムニチャネル本部で一括してどういった設計がよいか考えるようにした。これは通販と店舗の連動を強化するために、かなり大きい要素だと感じている。
組織や部署名を変えて機能を移管し整理しただけではなく、実際に店舗営業本部にあった販売企画機能をオムニチャネル本部に合体させた。これまでは店舗は店舗のお客様向けに企画し、通販は通販で企画していたのだが、それを見直した。
佐藤:店舗を利用している方のデータを見ると、自宅から店舗までの距離が5km以内など、アクセスのしやすさも大きく影響している。一方で通販ご利用者でも店舗未利用の方はまだまだいらっしゃり、すぐ近くに店舗があるのに通販しか利用していない、店舗が近くにあることを知らない方も多い。来店へのアプローチがうまくできていないわけで、こういった方たちを店舗へと誘導できればと思う。
また、店舗のお客様は、アプリは入れてくださっているものの、会員証のバーコードを使用するためでしか使ったことない方もいらっしゃる。こういった方たちに、もっとアプリを活用していただけるようにしたい。
佐藤眞梨氏
――アプリは通販と店舗で共通なのか。
石川:共通だが、実はアプリの中身でも以前は通販用、店舗用のように少しだけ垣根はあったので、それを取り払おうとしている。例えば通販のみのお客様が通販のコンテンツを見ている時にちょっと店舗の情報が出てくるとか、逆に店舗のお客様がお店で会員証の代わりにバーコードをスキャンすると通販の情報にちょっと触れられ、通販のプッシュ通知が来るとか。そういった仕組みがあってもよいのではと考えている。
――昨年4月には全店舗のスタッフに、新たに開発した接客用のサポートアプリを導入した。来店客の情報をスマートフォンで閲覧できるので、オムニチャネル化にも役立ちそうだ。
石川:導入からちょうど 1年経過しているタイミングだが、役立つと思う。お客様一人ひとりの製品購入履歴や過去の接客情報などを、スタッフが手元のスマートフォンで閲覧できる。通販や店舗での購入実績、カウンセリング履歴など、お客様とのコミュニケーションに必要な情報をすぐに確認できるため、これまでよりも深い接客が可能になった。お客様と接する場面には、きちんと完全に行うカウンセリングと、店頭でお話しした口頭ベースの接客みたいなのがあるが、現在はその両方の情報を接客アプリの中にしっかりと貯め込むことに取り組んでいる。
今後はさらに接客アプリに取り込んだそれらの情報を会社のデータとして蓄積し、接客アプリだけでなく顧客アプリやEC サイトでの施策にもきちんと生かしていきたい。顧客育成に向け、そういったお客様起点でのコミュニケーションや体験の提供に向けた仕組みづくりが、これからの重要な課題だと思っている。
インタビュー・執筆/渡辺友絵
▼石川雅俊氏プロフィール
(マーケティング推進統括オフィス オムニチャネル本部 戦略企画部 部長)
2000年にファンケル入社。IT部門にてDWH/BIツールの企画・運用・活用推進、ERP(企業資源計画)・業務改革等のプロジェクトに従事し、その後、通販のCRM・戦略部門でデータを活用した顧客価値向上の推進に取り組む。2023年から通販全体の戦略策定や推進、顧客分析や顧客育成、サービス変革などを手がけ、現在はオムニチャネルによる企業価値向上を進めている。
▼佐藤眞梨氏プロフィール
(マーケティング推進統括オフィス オムニチャネル本部 顧客育成推進部 カスタマーグロースグループ 主査)
2014年にファンケル入社。店舗や電話窓口で顧客対応業務を学び、2015年以降は通販部門で主に健康食品の販売企画に従事、キャンペーンの企画立案や継続購入の促進に携わる。2021年には通販のCRM業務に従事し、データ分析から方針立案、実行、検証までを一貫して手がける。2026年からは通販と店舗の垣根を越えたオムニチャネルによる企業価値向上に取り組んでいる。
【記者紹介】
渡辺友絵
長年にわたり、流通系業界紙で記者や編集長として大手企業や官庁・団体などを取材し、 通信販売やECを軸とした記事を手がける。その後フリーとなり、通販・ECをはじめ、物 流・決済・金融・法律など業界周りの記事を紙媒体やWEBメディアに執筆している。現在 、日本ダイレクトマーケティング学会法務研究部会幹事、日本印刷技術協会客員研究員 、ECネットワーク客員研究員。
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