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通販通信ECMOニュース・記事調査・統計『このデータが面白い!』【 第2回】リテールメディアの市場規模に注目、2028年に市場規模は1兆円に

2025.11.26 調査・統計

『このデータが面白い!』【 第2回】リテールメディアの市場規模に注目、2028年に市場規模は1兆円に

(株)デジタルコマース総合研究所の代表でECアナリストの本谷(もとたに)と申します。普段はEC市場に関する調査研究や消費財の市場調査、売上予測、競合分析などを行っています。このたび通販通信様のサイトでコラムを連載させていただくことになりました。ECビジネスに関するレポートや資料のデータを独自の目線で考察するスタイルで、皆様に有益な情報をお届けできればと考えています。

第1回目はTemuのオンラインショッピング実態調査を取り上げました。第2回の今回は株式会社CARTA HOLDINGS発表の「リテールメディア広告市場規模」について紹介します。サードパーティクッキーの規制強化に伴い、ファーストパーティデータ、すなわち小売業が所有するデータの重要度が増しています。リテールメディアはまさにその流れに沿ったトレンドであり、市場規模が今後大きく拡大すると予測されています。詳しく見てみましょう。



・タイトル: リテールメディア広告市場規模推計・予測

・発表企業: 株式会社CARTA HOLDINGS

・公開日: 2025年1月

・URL: https://cartaholdings.co.jp/news/20250123_2/

※留意点 当データはStatistaを経由して取得しています。


■前回連載

『このデータが面白い!』【 第1回】「Temuによる「オンラインショッピング実態調査」


リテールメディアの全体像と注目される背景

はじめに、リテールメディアの全体像を整理しておきたいと思います。リテールメディアの媒体にはオンライン系とリアル系があり、次の図に示すようにそれぞれにいくつかの媒体があります。それらの媒体めがけて広告コンテンツを制作しますが、その源となるのはアイテムの属性であり、そのアイテム属性の特徴を広告で最大限生かすために、小売側が保有する顧客属性系と購買履歴系の蓄積データがキーとなります。リテールメディアの全体像


また、リテールメディアが注目される背景について、私は次の①~⑤の5つの要素があると考えています。特に②小売業の収益多角化は重要です。日本における小売業の売上高営業利益率は2%台で推移しています。一方製造業は5%台、不動産業と広告業は10%近くであり、他の業種と比較すると小売業の売上高営業利益率は高くありません。本業を凌ぐほどの利益を得るレベルには到達しませんが、それでも少しでも利益を得たいと小売業が考えるのは、自然なことだと思います。

市場規模予測に見る小売業の自社サイトの“メディア価値”の高さ


続いて本題である市場規模を見てみましょう。2025年の予想値は5,982億円となっています。しかし4年後の2028年には1兆845億円と予想されています。表記の通り2022年からの6年で3.5倍に拡大する計算です。これだけ速いペースで拡大する市場規模は、近年では他に例がありません。このデータはあくまでも予測に過ぎませんが、それでもこのペースの速さからリテールメディア市場への期待がうかがえます。

 


少し角度を変えて、このデータを見てみましょう。国内のインターネット広告費について、電通が毎年その数値を公開しています。そのなかで「物販系ECプラットフォーム広告費」という、まさに楽天、AmazonといったECモールの広告費に関する項目があります。


2024年の同金額は2,172億円となっていますが、過去の金額を見てみると、2022年は1,908億円です。コロナ渦の2020年が1,321億円でしたので、一気に拡大するかに見えましたが、2022年からの2年での伸びは大きくありません。


リテールメディア全体の伸びの予想は上述の通りです。物販系ECプラットフォーム広告費をそれと比較すると、今後伸びるとは思いますがリテールメディア全体の伸び予想よりも低いかもしれません。つまり物販系ECプラットフォーム(=ECモール)もさることながら、小売業にとって自社サイトのメディアの潜在価値が高いことを、この市場規模の伸び予測は物語っているのではと私は分析しています。


リテールメディアのタイプは7分類


リテールメディアには様々な事例があることはご存じでしょう。そこで個々の事例をボトムアップで整理してみたところ、次の表に示す通り①~⑦までの7つのタイプに分類することができました。


個別に見てみると、①ECモール・サイト内広告型や②店舗広告型については、あらためて言及するまでもなくわかると思います。また③についても、一消費者として目にする機会は多いのではないでしょうか。興味深いのは⑥総合支援型で、オイシックス・ラ・大地が商品の認知・理解促進から流通拡大までを一気通貫で支援する広告ソリューションサービスを展開しており、とても興味深く感じます。


そして見逃せないのが⑦サービス業活用型です。外食をはじめとした多様なサービス業が実店舗を活用したデジタルサイネージなどを展開しています。表には特定の企業名のみを列挙していますが、ネット検索するととても多くの事例を目にすることができます。思わぬ事例を目にすることができ、リテールメディアのすそ野が広いことが理解できます。




メーカーやブランドに対し魅力的なコストパフォーマンスを発揮できるかがカギ


リテールメディアは小売業にとっての収益源です。したがってリテールメディアを活用したいと考えるメーカーやブランドは、どの小売業のリテールメディアが自社商品をアピールするうえで最も適しているのかを比較することになります。


自社のリテールメディアに特徴がなければ、メーカーやブランドの目には魅力的に映りません。自社がリーチできる顧客セグメントやその数、頻度などは基本的な項目ですが、最大のポイントは料金でしょう。ネット広告単価がここ数年上昇していますので、メーカーやブランドにとってリテールメディアのコストパフォーマンスが良ければ、魅力的に映ると思われます。


リテールメディア市場はとても潜在性の高い市場ですので、今後も継続してウォッチし必要に応じて有益な情報を発信していきたいと思っています。


以上


【筆者プロフィール】

本谷 知彦(もとたに ともひこ)

株式会社デジタルコマース総合研究所 代表取締役  ECアナリスト


シンクタンク大和総研にて国内外の産業調査・コンサルティング業務にチーフコンサルタントとして従事。EC業界のスタンダードな調査レポートである経済産業省の電子商取引市場調査を2014年から2020年にかけて7年連続で責任者として手掛ける。その他日本政府の調査研究案件の実績多数。

2021年末に同社を退職し2022年初に株式会社デジタルコマース総合研究所を設立。EC市場の調査研究はもとより、豊富なデータに基づいた消費財のマーケット分析や事業戦略のアドバイス、および講演・執筆活動等を行っている。






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