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通販通信ECMOニュース・記事調査・統計『このデータが面白い!』【 第1回】「Temuによる「オンラインショッピング実態調査」

2025.11.07 調査・統計

『このデータが面白い!』【 第1回】「Temuによる「オンラインショッピング実態調査」

(株)デジタルコマース総合研究所の代表でECアナリストの本谷(もとたに)と申します。普段はEC市場に関する調査研究や消費財の市場調査、売上予測、競合分析などを行っています。このたび通販通信様のサイトでコラムを連載させていただくことになりました。ECビジネスに関するレポートや資料のデータを独自の目線で考察するスタイルで、皆様に有益な情報をお届けできればと考えています。

第1回の今回は、8月にTemuが発表した日本の消費者のオンラインショッピング実態に関する調査レポートを取り上げたいと思います。Temuは2023年7月に日本でサービスが開始されました。わずか2年ほどしか経過していませんが、実はかなりの消費者がTemuを使用していることがわかっています。同レポートから意外な事実が判明するなど、とても興味深い内容となっています。詳しく見てみましょう。


・タイトル: オンラインショッピング実態調査

・対象者: 20-69歳の男女計2,000名

・レポート日付: 2025年8月4日

・URL: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000151947.html




Temuの利用者は平均世帯年収が高い

はじめにTemuの利用者属性について触れたいと思います。次の表をご覧ください。私が最も着目したい点は平均世帯年収です。全調査対象者の平均が634万円に対し、Temuは706万円と1割以上高い値になっています。年収がまだ高くない若者層がTemuを多用しているようなイメージを持っている方は多いかもしれませんが、実は高収入層もよく買っているということがわかります。


また、「ネットショッピング月1回以上利用者」91%、「重視項目1位コスパの高さ」42%、価格を「常に+よく比較する」82%となっている点も見逃せません。世帯平均年収と併せてTemuの利用者像を読み解くと「普段からECをよく利用していて、世帯年収は平均よりも高いが、商品選びについては価格に敏感な消費者」といったイメージでしょうか。これまでTemuに関する情報は少なかったため、当レポートを通じて具体的な消費者像が浮かび上がり、とても興味深く思います。Temuの利用者のプロファイル 出典:Temu「オンラインショッピング実態調査」より



30~40代がTemu利用の中核

続いて利用頻度を見てみましょう。レポートでは次の表の通り、Temuを「月1回以上利用する」回答率について、性別および年代別に算出しています。まず性別ですが、女性が41%と男性37%よりもやや高くなっています。しかしその差はわずか4%ですので、Temuの利用者像として性別ではそれほど大差はないとみてよいでしょう。


一方で年代別ですが、20~40代が50%と50~60代の23%よりも圧倒的に高くなっています。今のところ高齢層はTemuの利用にまだ本腰ではないようです。もう少し掘り下げてみると、前述の通り、世帯平均年収が706万円と高く、また子供ありが40%となっていますので、20代よりはむしろ30代、40代といった年代層がTemu利用の中核を成しているように想像されます。



「全体的に「衣料品・靴」「インテリア・家具・生活雑貨」の購入率が高い」

次のグラフはTemuでの購入カテゴリーに関するものです。上段に着目してください。全体的に「衣料品・靴」、「インテリア・家具・生活雑貨」の購入率が高く、Temuで人気のあるカテゴリーであることがわかります。また女性では「衣料品・靴」が63%と男性よりも高く、「アクセサリー・貴金属」も30%と比較的高い点が特徴的です。


しかしながら「衣料品・靴」が全体の50%以上を占めてはいるものの、残りの約半分は「インテリア・家具・生活雑貨」「家電」「アクセサリー・貴金属」などで構成されています。つまりTemuは多様なカテゴリーと豊富な選択肢を持つ総合型ECプラットフォームであるということです。今後も取り扱いカテゴリーはますます多様化し、さらに充実していくと考えられます。Temuでの購入カテゴリー(複数回答)(%) 出典:Temu「オンラインショッピング実態調査」より


20~40代のTemuの推奨度は75%

Temu利用者による他人への推奨度についてもチェックしてみましょう。「とてもすすめたい」「すすめたい」「自分からはあまり言わないが、聞かれたらすすめたい」の3項目の回答率を合算した数値を「おすすめ度」とすると、全体では66%が推奨しています。性別では、男性は68%、女性は64%となっており、それほど大差はありません。


年代別では20~40代が75%である一方、50~60代が55%と差が生じています。この数値は前述のTemuの利用頻度と相関がありそうです。よく利用する年代層ほど満足度が高く、他人への推奨度も高いということでしょう。50~60代はまだ利用頻度が低い状態ですが、今後利用が広がることで自動的に満足度や推奨度も高まるのではないでしょうか。


日本でのTemuのGMV(流通総額)は既に4千億円

レポートデータの考察は以上の通りですが、ここでTemuのGMV(流通総額)について確認しておきましょう。同社は正式な数値を公開していませんが、ECDBによる調査では2024年の日本のGMVは28億USドルとされています。日本円換算で既に4千億円以上という非常に巨大なGMVが既に日本で形成されていることです。2023年7月にスタートしたばかりですが、この成長ぶりに驚きを隠せません。


私の試算では同年の楽天のGMVは約4兆円です。またいくつかの指標からTemuの日本でのユニークユーザー数は楽天3分の1程度と私は踏んでいます。ユニークユーザー数が楽天の3分の1、1人あたりの購入単価が楽天の3割と仮置きすれば、TemuのGMVは楽天の10分の1程度、確かに4千億円という計算になります。正式な数値は非公開なためこの数値が正しくない可能性はありますが、いずれにせよ既に巨大なGMVであることに間違いはないようです。


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日本のセラーにとってTemuは新たな選択肢に

私の独自試算では、Temuを除く6つのECモール(Amazon、楽天、Yahoo!ショッピング、au PAYマーケット、ZOZOTOWN、Qoo10)合計のGMVは約11.8兆円です。これはBtoC-EC市場規模全体の約8割を占める比率であり、消費者はECモールを好んで利用していることがわかります。この特徴を踏まえれば、Temuの利用度が増え、GMVがさらに拡大することで、日本のEC市場全体がより活性化し、消費者にとっての選択肢や可能性が一層広がっていくことが期待されます。


Temuは2025年6月に日本において「国内販売事業者の募集」を全面開放すると発表しました。Temuは日本の消費者に向けた「越境EC」としてこれまで発展してきましたが、これからは国内のセラーも加わることで、越境EC+国内ECという日本初の「ハイブリッドECモール」が誕生したことになります。日本のセラーにとっても既存のECモール以外に新たな選択肢が増えたことを意味しますので、消費者動向を踏まえつつ、新たな選択肢を模索してみてよいのではと思います。



【筆者プロフィール】

本谷 知彦(もとたに ともひこ)

株式会社デジタルコマース総合研究所 代表取締役  ECアナリスト


シンクタンク大和総研にて国内外の産業調査・コンサルティング業務にチーフコンサルタントとして従事。EC業界のスタンダードな調査レポートである経済産業省の電子商取引市場調査を2014年から2020年にかけて7年連続で責任者として手掛ける。その他日本政府の調査研究案件の実績多数。

2021年末に同社を退職し2022年初に株式会社デジタルコマース総合研究所を設立。EC市場の調査研究はもとより、豊富なデータに基づいた消費財のマーケット分析や事業戦略のアドバイス、および講演・執筆活動等を行っている。






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