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通販通信ECMOニュース・記事行政情報「しばりなし」定期購入の申込でアップセル “ちょっと待った”は違法の恐れ(後編)

2025.09.02 行政情報

「しばりなし」定期購入の申込でアップセル “ちょっと待った”は違法の恐れ(後編)

わかりにくい表示によって、いつでも解約できる「しばりなし」の定期購入コースを「しばりのある」コースへ変更させる手口が、インターネット通販で横行している。申し込み時に“ちょっと待った”と呼びかけて、「特典」や「お得なプラン」をアピールし、アップセルを狙う広告手法に行政側も警戒を強めている。



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消費者を惑わす商法が次々と登場


消費者を惑わせて、事業者にとって都合の良い選択を強いるダークパターン。日本では法規制が追いついておらず、「ダークパターン天国」の状況が続いてきた。消費者トラブルが後を絶たないことから、これまでに消費者庁はナンバーワン表示やステルスマーケティングの規制に着手。さらに、消費者契約法を中心とした消費者法制度の抜本改正にも乗り出している。


消費者にとってわかりにくい定期購入商法も、ダークパターンの典型例だ。悪質な定期購入商法による被害の防止に向けて、2022年6月に改正特定商取引法が施行されたが、その後も消費者トラブルは減少していない。この背景として、次々と新たな手口が登場していることがある。


「しばりなし」の定期購入コースの申し込み時に、“ちょっと待った”と呼びかけるアップセルの手法もその1つ。「しばりなし」のコースか、それとも「しばりのある」コースなのかがわかりにくく、消費者の誤認を招くことになる。


美容液のネット通販D社の事例


消費者庁は今年6月、インターネット通販で美容液を販売するD社に対し、特商法違反により、6カ月間の業務停止命令を出した。D社の手口を見ていく。


同社は「■■コース」というページで、「購入回数の縛りはなし!」と目立つように表示。「万が一自分に合わなかったって場合も、1回で解約しちゃえばOK」と強調していた。


ページの途中に出てくる「初回のみで解約OK」などの記載があるボタンを押すと、申し込みの受付画面が出現。「しばりなし」のコースを申し込むと、「プレミアムコース」というページに遷移する。このページには、「ご注文ありがとうございました」と注文が完了したことを伝える文面が表示される。


これに続けて、「■■コースをご注文のお客様に 10分間限定で今すぐ使える特典クーポンプレゼント」や、特典クーポンの利用によって「さらに2回目以降永久に10%OFF」などの表示が出てくる。また、特典クーポンを利用した場合と利用しない場合の料金を比較し、どの程度「お得」なのかを説明していた。


さらに、「特典クーポン失効まで09:22:11」と表示されたカウントダウンタイマーによって、特典クーポンの利用を急かす仕組みとなっていた。カウントダウンタイマーを用いて、慌てて申し込ませる手法もダークパターンの1つとして知られている。


「人を誤認させるような表示」と認定


「プレミアムコース」のページをスクロースしていくと、「ご注文内容の確認」が出てきて、小さな文字で「本コースは4回のお受け取りが必須となります」などと表示し、「ご注文完了へ」というボタンが出てくる。


このボタンは、単に特典クーポンを利用するためのものではなく、実際には4回の購入が条件の「しばりのある」コースへ申し込むためのものだった。


「4回しばり(がある旨の表記)まで、なかなかたどりつかない」(取引対策課)状況にあり、「消費者はよくわからず、読み飛ばしていく」と考えられるという。


消費者庁は、分量・価格・契約解除に関する事項と、新たに「しばりのある」定期購入契約の申し込みとなることについて、消費者を誤認させるような表示をしていたと判断した。「全体を通して誤認すると認定した」(同)と説明している。


今回の処分は、特商法第12条6の第2項を適用。第2項は、サイトの手続きに従った情報の送信が申し込みとなることや、最終確認画面の分量・価格・契約解除などに関する事項について、「人を誤認させるような表示」を禁止している。


D社の行為は、表示全体を通して消費者を誤認させたと判断された。消費者庁によると、「アップセルの事案で第12条6の第2項を適用するのは初めて」(同)という。


消費者を惑わす“ちょっと待った”の手法


消費者庁や東京都による行政処分から、いつでも解約できる定期購入コースを申し込もうとした際に、“ちょっと待った”と呼びかけて、「特典」や「お得なプラン」をアピールし、「しばりのある」コースへ誘導する行為は、法令に抵触する恐れのあることが明確となった。


悪質な定期購入商法の新たな手口は、今後も登場すると予想される。消費者が安心してネット通販を利用できるように、行政の取り締まりの強化をはじめ、ダークパターンを網羅的に規制できる法制度の整備が求めらそうだ。


(了)


(木村 祐作)







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