au経済圏とPonta経済圏
――国内通販市場の現状をどのように見ていますか?
八津川博史氏(以下、八津川):国内のEC比率は、海外諸国に比べるとまだまだ小さいですね。ただ、コロナ禍で“おうち消費”によってEC利用者が増え、今までECでは買わなかった物を買うようになる動きがさまざまなカテゴリーで広まり、利用率が上がったと感じています。
一方、成長率はカテゴリーによって揺れ戻しも見られます。全体的にはプラス成長を続けているものの、コロナ禍のころと比べると落ち着いてきたという印象があります。
――そうした状況下で、貴社はどのように取り組んできたのでしょうか。2024年度下期の取り組みを振り返っていただけますか。
八津川:通信キャリアのauやUQ Mobileのお客様が、よりご利用いただきやすい形にするためのサービスやプロモーションを強力に打ち出してきました。
具体的には、昨年10月に「買い得メンバーズ」(購入金額・条件に応じたポイント還元率アップやクーポン配布など)の内容をリニューアルしました。auやUQ mobileをご利用のお客様に向けて、ポイント利用によるお得さや使いやすさをご提供することで流通規模の拡大を図り、開始以降、auやUQ mobileのご利用のお客さまも伸長している。
その一方で、「au PAYマーケット」に出店している店舗様とのコラボレーションも、従来以上に重視しました。ポイント還元を絡めたキャンペーン「ポイント超超祭」や、3の付く日に行うキャンペーン「三太郎の日」を展開していますが、そうした販促イベントで出店店舗様とのコラボレーションを一段と強化しました。その結果、カテゴリーによっては、前年比で数倍ほど売上が伸びた事例もあります。店舗様から評価していただくとともに、より積極的に取り組もうとしてくださる店舗様が増えてきたと感じています。

auコマース&ライフ株式会社 代表取締役 副社長 八津川博史氏
Pontaパスとの連携、より刺激的な販促活動
――昨年10月からはPontaパスがリブランディングしました。
八津川:Pontaパスへとリブランディングし、Pontaパスとの更なる連携によって、お客様の行動が広がると見ています。KDDIではPontaパスの会員数を2000万人に伸ばすことを計画していますので、今後はPonta経済圏のお客様を取り込んでいくことになります。それに伴って、当社のサービスの認知が拡大し、利用者も増加していくことが期待できます。
ポイントやクーポンが必ず当たる「買い得ルーレット」で、Pontaパス会員の場合、贈呈するポイントを2000ポイントから4000ポイントに引き上げたり、最大1万ポイントが得られるルーレット券を贈呈したりするなどの大盤振る舞いも行いました。そのほか、あげすぎチャレンジやPontaポイント還元率が最大4倍になる「Pontaパスブースト」などが好評を博し、開始2週間でデイリーアクティブユーザーが約1.5倍に増加するなど、Pontaパス会員数が大きく伸長しています。このように昨年10月以降には、お客様を刺激するような打ち出し方を強めてきました。
Pontaパス会員の増加は、au PAY マーケットへの誘導にも繋がっており、特に、「ポイント交換所 大還元祭」や「あげすぎチャレンジ」などのキャンペーン実施などの効果も相まって、au PAY マーケットの利用頻度向上にも繋がっています。
経済圏で得たポイントをお得なポイント交換所で増量して、日頃の買い物や、自分へのご褒美の購入などに、お得にご利用いただくという習慣を創出していきたいですね。
店舗対応を強力に推進
――出店店舗様への対応で出店料金プランを改定しましたが、その狙いは?
八津川:改定前までは、1カ月当たり4800円(税別)でご利用いただけるプランを提供していましたが、これを月額9800円(税別)に改定しました。ほぼ2倍になったのですが、単に金額を上げたわけではなく、店舗様にご利用いただく販促ツールにかかる費用を織り込んだプランにしました。この「コミコミ出店プラン」には、スタンダードとプレミアムの2種類があり、どちらも、予め自動販促オプションの料金が含まれています。
改定前、メールマガジンの配信は従量課金制のため、配信量が多いほどその分費用もかかるという仕組みでした。これに対してプレミアムの場合、メールマガジン配信の費用を予めプラン料金に織り込んでいます。このため、ある程度の実績がある店舗様にとっては、結果的に費用を従来よりも低く抑えることが可能です。
一方、これからご入会いただく店舗様からすると、ちょっと割高ではないかと思うかもしれません。しかし、競合モールと比べるとそうではなく、また、立ち上げ時にさまざまな販促メニューを組み込んでいる点を説明させていただいています。これにより、入会を足踏みするケースよりも、むしろ、入会を検討していただくケースが増えていると感じています。
また自動販促オプションは、4月以降大変ポジティブにご活用いただいていて、多くの店舗様がプレミアムプランに移行し、現在もプレミアムプランへの移行を積極的に検討していただいている店舗様も多いと聞いています。
――店舗育成の取り組みについてはどうですか?
八津川:新たな取り組みとして、店舗様にLINEアカウントの開設を勧めているところです。店舗様からお客様へのアプローチは、今までメールマガジンや、当社のアプリの「タイムライン」をいうコミュニケーションツールが中心でした。しかし、SNSが重視されるようになり、特にLINEが当たり前という状況になってきたことから、LINEで店舗様とお客様がコミュニケーションを取れるように推進しています。
また、店舗様からフェイス・トゥ・フェイスによる商談やリアルの勉強会によって、レベルアップしたいという要望も多くいただいていたため、大阪にも営業拠点を置き、多数のスタッフを配置して、店舗様とのコミュニケーションを量・質ともに引き上げる取り組みを進めています。
――サイトの品質やCX(顧客体験)を向上させるための施策は?
八津川:まず、セキュリティ対策の強化によって、お客様に安心してご利用いただける環境の整備を重視してきました。近年、クレジットカードの不正利用が、お客様にとって非常にセンシティブなテーマになっています。不正利用を防止するため、当社では「3Dセキュア」と呼ばれる本人認証サービスの導入が完了済みです。
これに加えて、AIを活用して不正取引を検知するレベルを向上させ、イエローカードが出るような取引をかなり削減できています。当社のデータによると、不正取引の99%を見つけ出し、抑止できています。
最近では、不正レビューの問題も浮上しています。店舗や商品の信頼性を高めるために、サクラレビューを行うケースもあります。そこで、当社では不正レビューの対策を強化して、年間20万件ほどの不正レビューを削除し、お客様に安心してもらえるようにしています。このほか、偽造品や模造品については専属チームが対策を強化しています。
2025年度に予定している注目の施策
――次に、2025年度の事業方針をお聞かせください。
八津川:経済圏のお客様にとって最も優れたECモールになれるように、しっかりと施策を打っていきます。
Pontaパスとの連携についても、もう一段加速して進めていく予定で、この点を非常に重視しています。その中で、昨年から実施している「あげすぎチャレンジ」や、Pontaポイント還元などを拡充するとともに、安心してご利用いただける取り組みを強化する方針です。
――Pontaパス連携の強化に向けた取り組みとは?
八津川:今年8月以降に、大がかりな新しい施策を提供していく予定です。
考え方としては、Pontaパスのお客様が、キャンペーン期間だけ“お得”というのではなく、日頃からお得な商品が提供されているという状態へと、もう一段引き上げていく形にしたいと思っています。
――今年3月から、3980円以上の買い物をすると送料が無料になる「サンキュー配送」プログラムを開始していますが、これまでの反響は?
八津川:正直なところ、店舗様に「サンキュー配送」プログラムをご利用いただくのは、もう少し時間がかかるかなと予想していたのですが、高めの目標をクリアする勢いで、ご参画いただいています。当初の想定よりも早く、送料無料の商品ラインアップができたと思います。
お客様に対しては、Pontaパス会員のお客様なら日曜日に商品を購入すると、5%のポイント還元になるといった「サンキュー配送」の特長を周知していきたいですね。日曜日の販売状況を見ると、ご参画いただいている店舗様に関しては26%の売上増となっています。
「三太郎の日」を大幅に刷新
――「au PAYマーケット」と言えば「三太郎の日」が頭に浮かびますが、大幅なリニューアルに乗り出したそうですね。
八津川:「三太郎の日」については、7月3日からリニューアルを開始しています。これまで「三太郎の日」は3の付く日だけのキャンペーンでしたが、その翌日と翌々日までを対象に、お客様が複数の店舗様で買うと、よりお得にポイントがもらえる「お買い物ラリー」を組み合わせる内容に変更しました。三太郎の日は、購買意欲を大きく刺激する最大のイベントとなるので、特典を大幅に強化することで一回の買い物あたりの顧客単価の向上に加えて、各店舗様の購入頻度の増加を図る狙いがあります。
新しい「三太郎の日」の仕組みを広く周知し、多くのお客様にご活用いただきたいですね。店舗様には、買い回りをする新しいお客様がどんどん訪れるような販促活動へとギアアップしていただき、年末商戦で勝ち上がっていくという流れを作ってほしいです。
――最後に、読者に向けたメッセージをお願いします。
八津川:当社はさまざまなユニークな取り組みができていると思いますし、経済圏についてはローソンというリアルの接点も含めて持っています。
また、安心感と信頼感があり、リピートのお客様を大事にされる店舗様であれば、喜んでいただける立ち位置にあると思いますので、一緒にECマーケットを盛り上げていきたいですね!
――ありがとうございました。