2025.07.14 行政情報
消費者法制度を抜本改正へ、不適切なデジタル取引にメス…特商法の取り締まりは限界に(後)
消費者庁の「デジタル社会における消費取引研究会」は6月19日、デジタル社会の消費取引への対応方針を提言した報告書を取りまとめた。前編・中編で述べた消費者委員会「消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会」の報告書とともに、デジタル化の進展に伴う新たな消費者トラブルへの対応で、今後の法制度改正に向けた検討のベースとなる。パラダイムシフト専門調査会が消費者契約法を中心に検討したことに対し、消費取引研究会は特定商取引法を中心に議論を重ねた。報告書は、特商法の「通信販売」類型では新たな問題を捉えることが困難とし、従来の法規制にとどまらず、ソフトローなどの手法を取り入れた「総合的なパッケージ施策」の検討を提言した。
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「通信販売」類型では捉えられない
現行の特商法は、「通信販売」「訪問販売」「電話勧誘販売」など7つの取引類型を規制。対象とする取引主体を「販売業者」「購入者」などとし、対象とする取引を「有償」で提供する契約としている。
一方、ネット通販の現状を見ると、事業者・消費者間の取引だけでなく、消費者間取引の市場も拡大。また、従来のカタログ通販で見られたマス・マーケティング手法から、個々の消費者をプロファイルしてアプローチするパーソナライズド・マーケティングへと移行しつつある。
そうした状況の中で、ネット通販の悪質商法の手口も多様化。さらに、近年では急速なAI技術の進展もあり、サイト運営者による消費者のプロファイルも緻密化している。
消費取引研究会の報告書は、通信販売について、ネット取引を中心に加速的な変化が見られ、今後の発展を踏まえると、特商法が射程としてきた「通信販売」の類型では捉えることが困難としている。
同研究会の議論を振り返る限り、特商法の「通信販売」類型を延長する、または8つ目の新たな類型を設けるといった考え方は示されなかった。
後追い規制ではなく、「一般通則」を導入
報告書は、(1)信頼性の高い取引市場の整備、(2)消費者に必要な情報の開示を販売業者へ求めることと、不当な介入・操作(例えばダークパターンなど)の排除によって、消費者が契約時に自立して意思決定できる環境の確保――を柱に据えた。
今後の法整備のあり方については、新たな悪質商法を後追いして規制を追加する手法には限界があると指摘。海外の制度を参考に、不公正な取引を横断的に取り締まるための「一般通則」による規制を導入し、執行ルールの詳細を別途定めることを提言した。「事前公表」などの社会的に制裁する手法を加える案も盛り込んだ。
通販サイトによるポイント付与や、消費者がアテンション(関心のある事柄に関する情報)を提供する動画視聴といった無料サービスについても、有料サービスと同等に扱うことで、消費者を保護できるという考え方を示した。
また近年、ネット通販では、消費者を騙す手法「ダークパターン」によるトラブルが増加している。ダークパターンなどを用いて「消費者の脆弱性」を作り出したり利用したりする事業者や、SNS上で悪質な勧誘を行う事業者に対しては、デジタル取引の特徴を踏まえた対応が必要とした。
具体的な取り組みとして、(1)ターゲティング広告を配信する際に、その前提となる情報を活用していることを消費者へ通知、(2)申し込み時と同等以上に、明確に契約の撤回・解約方法を表示――することを挙げた。
「総合的なパッケージ施策」の検討を提言
報告書は、従来の取り組みにとどまらず、ソフトローなども含めて、新たな「総合的なパッケージ施策」を検討するように求めた。
その際には、パーソナライズド・マーケティングをはじめとしたネット取引の特性を踏まえた対策と、オンラインプラットフォームも視野に入れた新たな手法を加えることが必要と指摘した。
6月19日の記者会見で消費者庁の新井ゆたか(前)長官は、「政府横断的に取り組まなければならない課題もあり、整理しながら進めていく」と述べた。
消費者庁では今後の検討について、「どの法律で対応するかという出口は決めていない。特商法を含めて、どういった法制度で対応可能かを検討していく」(取引対策課)と話している。
(了)
(木村 祐作)
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