2025.07.11 行政情報
消費者法制度を抜本改正へ、不適切なデジタル取引にメス…ポイント付与も「有償」取引(中)
消費者法制度の改正の方向性を示した消費者委員会「消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会」の報告書は、インターネット通販で商品を購入するという有償の取引だけでなく、ポイント付与といった無償の取引も、消費者契約法などの対象に加えるよう提言した。動画を閲覧したり、サイト会員登録を行ったりする際に、消費者が事業者に対し、個人データやアテンション(個人がどのような事に関心を持っているかという情報)を提供する行為についても、消費者契約法などの規制が及ぶ「取引」として捉える必要性を訴えた。
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個人データやアテンションは“原材料”
消費者法制度が適用される「消費者」や「取引」の捉え方についても、従来から大きく転換する。
消費者はインターネット上のサービスを無償で利用できる代わりに、個人データや時間、自分の関心事項に関する情報を事業者に提供している。例えば、サイトの閲覧時に個人データを取得されたり、キャンペーンに参加するために会員登録を求められたりする。事業者は収集した消費者の情報をビジネスに利用し、その対価として、消費者は無償で動画を見たり、買い物で使用できるポイントを付与されたりする。
これまで消費者契約法や特定商取引法などの消費者法制度は、商品・サービスを購入して事業者に金銭を払う者を「消費者」として捉えてきた。このため、サイト会員登録やポイント付与といった無償の行為は、規制の対象外となってきた。
一方、事業者は、消費者から収集した個人データやアテンションを利用して、ターゲティング広告やレコメンデーションを行うことができる。その際に、AI技術を用いて個人の「消費者の脆弱性」を緻密に推測し、ビジネスに悪用することも可能だ。例えば、消費者の関心事項を煽って、健康食品や医薬品の広告を執拗に表示したり、美容医療サービスやエステサービスを勧誘したりすることも考えられる。
そうした現状を踏まえて報告書は、消費者法制度の対象となる「消費者」について、従来の事業者に金銭を払う者ではなく、金銭や物・サービスに加えて、情報・時間・アテンションをやり取りする者と捉える考え方を示した。ネット通販会社やプラットフォーマーなどにとって、消費者の情報・時間・アテンションはビジネスの“原材料”に該当し、消費者は“原材料”の調達先という位置づけだ。
通販サイトで見られるポイントサービスについても、消費者が個人データやアテンションを提供した対価としてポイントが付与されることから、「有償」の取引と捉えることも可能としている。
報告書は、消費者が時間・情報・アテンションを提供する取引についても、消費者契約法などで規制することを検討課題に挙げた。有償・無償によって線引きするのではなく、幅広く規制の網をかける方向性を示した。今後の法改正に向けた検討で、実効性のある施策を打ち出せるかどうかが注目される。
サブスクなど「履行」「継続」「終了」も射程に
消費者法制度の民事ルールの中核を担う消費者契約法は、規制の対象範囲を主に「契約の締結過程」と「契約内容」としてきた。しかし、動画配信サービスや音楽配信サービスなどで見られるサブスクリプションサービスの台頭に伴って、消費者契約法の射程でない“中途解約”をめぐる消費者トラブルが増加している。
そうした問題を受けて報告書は、消費者契約法の適用範囲を拡大する考えを示した。具体的には、「履行」「継続」「終了」の各課程についても、消費者トラブルを防止するために必要な規制を設けるよう求めている。
また、トラブルを解決するために、証拠となるネット通販の申込画面の保存が重要となることから、事業者による保存を促進するとともに、消費者による保存をサポートする仕組みも課題の1つに挙げた。消費者庁では「申し込み時に申込画面を自動的に保存する仕組みなどが考えられる」(消費者制度課)と説明している。
新法も視野に入れて検討か
法律に基づく規制だけでなく、行政のガイドラインや業界の自主規制も含めたさまざまな手法を組み合わせて、消費者が信頼できる取引環境を整備するよう提言したことも、報告書の特徴だ。
現行の消費者契約法は、「契約の取り消し」を中心とした規制を設けているが、「契約の無効」「契約の撤回・解除」も追加するよう提言。また、柔軟な対応が可能となる「不法行為」に基づく損害賠償制度の活用を検討するよう求めた。
行政規制については、後追い的な対応を避けるために、法律に抽象的な規範を定め、細則を下位規範で規定するという考え方も示した。
報告書を取りまとめた消費者委員会に対し、消費者庁は「消費者法制度を抜本的に再編・拡充する。具体的には法改正なのか、新法なのかと思う。速やかに進めていくべきと考えている」と今後の取り組み方針を説明した。
(つづく)
(木村 祐作)
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