2025.11.27 ECモール
海外アパレルブランド、目まぐるしい再上陸や撤退の背景は?
海外の人気アパレルブランドが、日本からの撤退を余儀なくされている。ファストファッションの「フォーエバー21」が2025年10月、再々上陸からわずか2年半で日本から完全撤退。24年には「ベネトン」や、やはり再上陸組の「アメリカンイーグル」も営業を終了した。一方で「エディー・バウアー」のように、再上陸後も店舗を拡大しているブランドもある。こういった目まぐるしい動きや、その背景を追ってみたい。
「フォーエバー21」は2年半で完全撤退
「フォーエバー21」は2023年2月に日本に再々上陸し、アダストリア(現アンドエスティHD)がパートナーとなって店舗やECサイト運営、商品企画などの国内事業を支援。しかし米国本社が25年3月、19年に続く2回目の破産申請をしたため商品供給が途絶えたこともあり、収益性や事業継続性が困難になったと判断したという。10月中には全店舗とECサイトを閉め、来年2月までに完全撤退する。「フォーエバー21」は19年に日本から撤退していたが、それ以前にも参入・撤退したことがあり、今回が3度目の撤退となる。
渋谷にオープンしたポップアップストアのイメージ(出典:アンドエスティHD)
再々上陸にあたり、日本マーケットにローカライズしたジャパンモデル商品と本国からの仕入れ商品の二軸で展開。日本の顧客ニーズを掴みきれず失速したかつての轍を踏まないように、23年春夏商品企画は日本に合わせたジャパンモデルが約8割となる構成とした。
「フォーエバー21」は、2,000万人以上の会員を有するアダストリアの公式WEBサイト「ドットエスティ」(現アンドエスティ)で約1,000点の春夏商品を扱い、同時に期間限定ポップストアを展開。その後、人気インフルエンサーとのコラボ商品開発も実施し、実店舗を次々とオープンするなど、積極的に市場を攻めた。
前回の撤退については、コロナ禍も含めた消費者の購買行動の変化をはじめ、「ユニクロ」や「GU」、「しまむら」などファストファッション市場での競争激化や、D2Cブランドの台頭など、さまざまな要因がある。ただ、このたびの撤退はあまりにも唐突で、OMO(オンラインとオフラインの融合)が得意なアダストリアとの相乗効果も果たせなかった。やはり本国での破産申請が大きく影響しているとみられる。日本撤退が判明した翌日には、アンドエスティHDの株価は前日と比べ8%超下落した。
定着ブランドの大量閉店や撤退が相次ぐ
ここ数年間は、日本でもファストファッションをけん引してきた「H&M」や「ZARA」、「GAP」などの大量閉店が相次いだ。中には旗艦店のような大型店舗もあり、日本に定着しているこういったブランドの思い切った決断をみると、日本市場がシュリンクしているという事実に否応なく向き合わざるを得ない。
2024年2月には、22年10月に3年ぶりに再上陸したアメカジブランド「アメリカンイーグル」が、わずか1年余りで全4店舗を閉鎖するという衝撃的な報道があった。20年に復活したECサイトは今も運営されているが、完全に再撤退する可能性もある。
若年層を中心に「アメリカンイーグル」のアメカジテイスト自体が古いと感じる消費者が増加し、日本市場でのミスマッチが指摘された。「ユニクロ」と比べると、品質、デザイン、価格のいずれも勝ち目がなかったことも要因といえよう。
再上陸し渋谷に初の旗艦店をオープン(出典:アメリカンイーグル)
また、80~90年代に一世を風靡したイタリア発カジュアルブランド「ベネトン」も、24年10月に日本市場からの撤退を発表した。00年12月に東京・表参道にオープンしたのは日本では初めてといえる大型店舗で、その後他のアパレルブランドが開いた旗艦店の先駆けモデルとなった。
「ベネトン」はフランチャイズ形式で全国に店舗数を増やしたが、価格帯や商品コンセプトが顧客ニーズと乖離してきたことや、「ユニクロ」や「H&M」といったファストファッションブランドの台頭もあり、長らく苦戦が続いた。10年代後半には店舗運営から撤退し、その後はオンライン販売のみで展開していた。
「エディー・バウアー」はMDやビジネスモデルを見直し再発進
「フォーエバー21」や「アメリカンイーグル」とほぼ同時期に日本に再上陸し、現在も事業を継続しているのが、米国のアウトドアブランド「エディー・バウアー」だ。2021年12月に全店舗とオンラインストアを閉鎖して撤退したが、23年春夏シーズンから国内での本格展開を始めた。
中高年世代に根強いファンを持つ同社が撤退した背景には、コロナ禍以前からの業績低迷があった。本国のアウトドア路線とは異なり日本ではカジュアルウェアを軸としていたため、「ユニクロ」など価格帯が低いカジュアルブランドと競合し苦戦。ダウンウェアなどが得意な高級ブランドとの差別化も困難を極めた。固定費がかさむ50を超える店舗や、コストがかかるカタログ通販というビジネスモデルも重荷となり、収益が悪化したとみられる。
再上陸に際し、「エディー・バウアー」は国内アパレルメーカーとのライセンス生産を締結。本国にならいアウトドアウェアをメインに据えるなどMD企画を見直し、実店舗とオンラインで販売する。費用がかさむ通販カタログや冊子の配布は行っていない。店舗は25年8月に2店舗を閉店も、10月と11月に3店舗をオープンするなど、スクラップアンドビルド運営の手法が目立つ。秋以降は全11店舗での展開となる。
そのほか、ファッションモール「ZOZO」への出店や、「東京アウトドアショー」など各種イベントにも積極的に参加している。
再上陸後は商品企画にとどまらず、若年モデルの起用など顧客ターゲット層についても見直しを図っているようだ。従来固定客の高齢化も見据え、20~30代の新規顧客開拓やファンづくりを目指していくとみられる。再上陸ブランドの再撤退が目立つ中、成功事例となるか見守りたい。
再上陸後、都内・吉祥寺に1号店をオープン(出典:エディー・バウアー)
そのほか、コロナ禍による本国の販売減少を理由に20年に日本から撤退した英国のファッション雑貨ブランド「キャス キッドソン」も、25年に再上陸を果たしている。ヴィンテージ感とモダンなデザインを融合させた花柄バッグなどに幅広いファンが付いているため、3月の表参道第1号店オープン時には長い列ができた。すでに4店舗が稼働しオンライン販売も展開しており、アパレルブランドではないものの、再定着できるかどうか注目が集まる。
都内・表参道第1号店のオープンにはファンの列ができた(出典:キャス キッドソン)
まとめ
“低価格で高品質”を実践する「ユニクロ」や「GU」が日本のファストファッションを凌駕している限り、同じフィールドで戦おうとする海外ブランドの苦戦は続くだろう。今後また上陸するとしても、市場に食い込むにはかなり違ったコンセプトや手法でアプローチする必要がある。
「フォーエバー21」を保有する米アパレル大手オーセンティック・ブランズ・グループは2025年8月、「フォーエバー21」の中国上陸を発表した。今回は、現地EC企業と組んだうえでの4回目の上陸となる。人口減や消費意欲減退で縮小する日本市場と比べて有望とはいえ、「SHEIN」「Temu」など強力な現地格安ECブランドに囲まれ、果たして勝ち目はあるのか。その動向も注視していきたい。
執筆者/渡辺友絵
【記者紹介】
渡辺友絵
長年にわたり、流通系業界紙で記者や編集長として大手企業や官庁・団体などを取材し、 通信販売やECを軸とした記事を手がける。その後フリーとなり、通販・ECをはじめ、物 流・決済・金融・法律など業界周りの記事を紙媒体やWEBメディアに執筆している。現在 、日本ダイレクトマーケティング学会法務研究部会幹事、日本印刷技術協会客員研究員 、ECネットワーク客員研究員。
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