ユニクロやしまむらといったアパレルの有店舗EC企業が、ユニフォームのBtoB事業強化に乗り出している。機能性や豊富なデザインで訴求する自社の定番商品を、法人や自治体のユニフォームとして提案。中には、発注先や人気ユーチューバーとコラボ展開する動きもある。専門部署の新設や現場ニーズに合わせた商品開発などを通じ、中核ビジネスへの成長も見込む。
ユニクロは専門部署を立ち上げて体制を強化
ユニクロは2025年9月、専用ECサイトを通じて法人や団体、自治体が定番商品をユニフォームとして購入できるBtoB事業「UNIQLO UNIFORM」を刷新・強化すると発表した。仕事着、制服、ユニフォームとして利用する企業や団体、学校、スポーツチームなどが26年8月期中に2万件を超える見通しとなったことを受け、さらなる拡大を図る。
法人・団体向けサービスは00年代初頭に着手し、16年に専用のオンラインストアを開設。20年に「UNIQLO UNIFORM」に改称した。このほど、同部署と、オリンピック・パラリンピックのスウェーデン代表選手団公式ウェア制作を担当する部署を統合し、「ユニフォーム&カスタマイズ部」を新たに設けた。
従来の営業力・顧客基盤に世界的大会向けウェアづくりの知見を融合させ、クライアントの要望にワンストップで対応。必要な数量を短納期で届けられるように、営業・在庫管理・生産の体制を強化する。
同サービスは定番商品の中から選べる利便性に加え、機能性や実用性を備えた品質やデザイン、色柄のバリエーション、XSから4XLまでというサイズ幅の豊富さなどが特徴だ。手ごろな価格でまとまった数量を揃えられ、独自のロゴやチーム名などを入れて加工できる点などが支持されている。
納期も最短3日、加工品の場合は3週間と迅速対応で展開。専用のシーズンカタログをWEB上で閲覧できるのに加え、希望すれば冊子タイプカタログも郵送する。物流・運送業、工場、介護施設、病院、幼稚園、飲食業、スポーツチームなどのユニフォームとして利用されてきたが、スーツとして活用できるオールシーズン型のジャケットやパンツの開発に力を入れたことから、旅客業、ホテル、中高学校制服としても需要が高まっている。
25年9月には、26年にイタリアで開催予定の世界的スポーツ大会で、スウェーデン代表選手団の公式ウェアを4大会連続で提供すると発表した。これまでもアスリートの声をもとに素材を細かく改良しており、開会式・閉会式のジャケットとパンツには防水性、透湿性、低結露性の高さを誇る東レの防水透湿素材を採用。新設の「ユニフォーム&カスタマイズ部」では、こういった知見も活用するとみられる。

「UNIQLO UNIFORM」刷新の記者発表会にはユニフォーム導入企業も参加(出典:ユニクロ)
専用サイトを設けたしまむらはESG活動も意識
しまむらは2025年7月、病院や介護施設などの職員や入居者向けに、介護用品や日用品をまとめ買いできるBtoB 直営オンラインストア「しまサポ直トク便(ちょっとくびん)」をオープンした。「直トク便」の名称は「直接届く」と「ちょっとお得」を掛け合わせたもので、同一商品を大量に注文したり定期的にまとめて注文したりする法人が利用しやすいようにした。
取扱い商品は肌着やパジャマ、タオル、エプロン、スリッパ、寝具、日用品、介護用品、介護ユニフォームなど。大量注文で在庫がない場合は「注文リクエスト」を送るとすくに手配するほか、サイトに掲載されていない商品も「商品要望フォーム」に記入すれば対応するという。介護施設などでは会員登録した代表者がまとめて注文する際に、利用者ごとの名前を入力しておけば小分け梱包し宛名シール付きで届ける。
法人・個人とも登録が可能で、専用オンラインストアで注文。送料は税込550円だが、税込1万円以上の注文で無料となる。法人向けには月1回まとめて支払う「NP掛け払い」も導入する。
同社は24年度から全国のしまむら(一部店舗除く)において、買い物に出かけることが困難な施設の入居者などに買い物支援サービス「しまサポ」を展開。自治体の施設や介護施設に出向く「出張販売」や、貸し切りにしたしまむら店舗に入居者を招く「買い物ツアー」を提供してきた。「直トク便」は、持続的な成長を目指すESG活動の一環である「しまサポ」がきっかけになったとしている。

「直トク便」は大量注文や定期注文に対応する(出典:しまむら)
デザインやファッション感度にこだわったアダストリア
機能性や耐久性だけでなく、デザインやファッション性にこだわったユニフォーム提供に乗り出したのがアダストリア(現アンドエスティ)だ。自社グループ内のBtoB事業を手がけるプロデュース部門やブランドを通じ、法人や自治体に個性的な製品を展開する。
2021年8月、社内にBtoBプロデュース事業を手がける「アダストリア・ライフスタイル・クリエイション(ALC)」を設立。コラボアイテムの企画・販売や新規ビジネス支援など、企業との協業案件を受け付ける専門チームとしてスタートした。
ALCは23年8月、アダストリアとしては初めて介護施設の従業員ユニフォームを制作。速乾性や伸縮性のある独自開発の素材などを使い現場で動きやすくしたのに加え、スタッフの“働くワクワク感”を重視しファッション性も追求した。
25年1月には、イベントや展示会のプロデュースを手掛ける博展社のスタッフが製作現場や会場で着用するオリジナルユニフォームをプロデュース。博展社より提供されたオリジナルアートを背中にプリントした個性的なジャケットを製作した。
自治体ともコラボし、5月には渋谷区とホノルル市の姉妹都市提携を記念した渋谷区のアロハユニフォームを製作。区の地域資源であるパブリックデータの「シブヤフォント」を取り入れたデザインで、希望する区職員が購入・着用したほか、ホノルル市役所にも届けたという。
アンドエスティへと社名変更した9月にはルミネと協業し、「ルミネ」と「ニュウマン」コンシェルジュの新ユニフォームをプロデュースした。グループのサステナブルに特化したBtoBブランド「O0u」が担当し、サステナブル素材や高機能性仕様を取り入れて環境負荷軽減につなげた。
通常のユニフォームは春夏・秋冬と衣替えし、着用期間終了後は固形燃料へリサイクルしつつも、多くの廃棄が出ることが課題だった。そのため、耐久性や手入れのしやすさを重視し、デザインにこだわりながらも年間を通して着用できるユニフォームを製作。着回しが効き、季節を通して様々なスタイリングを楽しめる仕様にしたという。

着回しが効き遊び心も取り入れたデザインの「ルミネ」ユニフォーム(出典:アンドエスティ)
ニッセンは人気介護ユーチューバーとコラボ
実店舗は持たないが、カタログ通販のニッセンも2024年12月に、看護師や介護士など医療従事者向けのユニフォームブランド「Nursereine(ナースレーヌ)」をスタート。専用サイトには法人窓口を設け、まとめ購入の見積りも行っている。
スクラブ(医療用ウェア)やパンツ、介護士用ポロシャツ、ナースシューズなどを扱い、アンケートを通じて現場のニーズに応えた商品開発を実施。医療介護従事者の声に応え、サイドに切替を入れたり吸汗速乾素材を使用したりと工夫したうえで、SS〜6Lまでの幅広いサイズで展開する。
また、総フォロワー数が22万人を超える人気介護ユーチューバーの「ごぼう先生」とコラボしたユニフォーム企画を25年2月から開始。商品への要望をごぼう先生のSNSを通じて発したところ3,000件以上のコメントが集まったため、その声を参考にデザインや快適性、機能性へのニーズを深掘りしたユニフォームを開発した。
完成後は現役介護士たちとごぼう先生が参加する試作品の試着会を開催し、8月から新ユニフォームの予約受付を開始。開始から2日で当初の予約目標点数を上回ったため、9月から本格販売を行い、その後第2弾のコラボ企画が進行中だ。

「ナースレーヌ」サイトでは様々なタイプやカラーのスクラブを紹介(出典:ニッセン)
まとめ
企業がユニフォームのBtoB事業を強化することで生まれるメリットは、必ずしも売上増だけではない。受注をきっかけに、自社が得意とするプロデュース力や提案力を示すことができる。様々なコラボ企画なども見込め、ユニフォーム販売を大幅に超えた事業拡大につながる可能性がある。
また、ユニフォームの素材や耐久性をアピールすることで、サステナブルやエシカル、ESGを実践する企業との認識を高めることができる。国内だけでなく海外においても、企業価値向上につながるだろう。
さらに、実際にユニフォームを着用して好感度を抱いたユーザーは、その後個人客になってくれる可能性が高い。企業としての認知度アップや広告効果など、BtoBの枠を超えたメリットも期待できそうだ。
執筆者/渡辺友絵
【記者紹介】
渡辺友絵
長年にわたり、流通系業界紙で記者や編集長として大手企業や官庁・団体などを取材し、 通信販売やECを軸とした記事を手がける。その後フリーとなり、通販・ECをはじめ、物 流・決済・金融・法律など業界周りの記事を紙媒体やWEBメディアに執筆している。現在 、日本ダイレクトマーケティング学会法務研究部会幹事、日本印刷技術協会客員研究員 、ECネットワーク客員研究員。


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