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2025.08.27 マーケティング

月商6,000万円、返品率1%未満。FUKAMI氏に学ぶ、LTVを最大化するライブコマースの新戦略

スタイリストとして活躍するFUKAMI氏が手掛けるアパレルブランド「weakend」。インスタグラムのライブコマースを軸に、2025年4月には月商約6,000万円を達成、ライブ配信1時間で1,200万円超を売り上げるなど、驚異的な実績を誇る 。

特筆すべきは、その高いエンゲージメントとビジネス効率だ。熱狂的なファンコミュニティを形成し、業界平均を大幅に下回る返品率を実現している 。

今回はFUKAMI氏本人にインタビューし、その成功の裏にある、再現性のある事業戦略とブランド哲学を、EC事業者・経営者視点で深掘りしていく 。

 


「まずファンになってもらう」—共創から生まれる商品と、信頼を育むための顧客導線

ーーー人気スタイリストとしてご活躍されるFUKAMI氏が、ご自身のブランド「weakend」を立ち上げられた際、まず初めに、どのようなコンセプトを掲げ、お客様とはどのような関係性を築いていきたいとお考えだったのか、その原点にある想いをお聞かせください。


FUKAMI氏: 従来のプロダクトアウト的な服作りではなく、フォロワーさんやお客様と「一緒にお洋服を作り上げたい」という共創モデルを実践したかったのが原点です 。私が一方的に「このトレンチコートを作りたい」と発信するのではなく、「こういうものがあったらいいよね」という皆様との話し合いから商品開発に繋げています 。まさにSNS上の井戸端会議のようなコミュニケーションが、私たちのものづくりの基盤です 。



ーーーお客様との「井戸端会議」から商品が生まれるというお話、非常に興味深いです。その共創の場であるライブコマースは、現在、事業全体に対してどのくらいのインパクトがあり、どのように位置付けていらっしゃるのでしょうか。


FUKAMI氏: 事業の初期段階では売上の過半数がライブ経由でしたが、現在はアプローチを広げているため、ライブ経由の直接売上は全体の3〜4割ほどです 。しかし、私たちの事業の核がライブ配信にあるという考えは変わりません 。そのため、現在は広告や雑誌掲載からの新規流入も、あえてECサイトではなく公式Instagramに集約させて、ライブ配信へと繋げる戦略をとっています 。



ーーー広告からの流入をECサイトではなく、あえてInstagramに集約するというのは非常にユニークな戦略ですね。新規のお客様にまずブランドの強みであるライブ配信を体験してもらうとのことですが、その具体的な狙いやビジネス上の意図について、もう少し詳しくお聞かせいただけますか。


FUKAMI氏: ブランド最大の強みであるライブ配信をまず体験していただくことが、ブランドへの深い理解と高いCVR(購入率)に繋がるからです 。いきなりECサイトで商品を見ていただくよりも、まずライブで商品の価値やブランドの思想に触れていただく 。この一手間が、結果的にLTV(顧客生涯価値)の高いお客様を育成する上で、極めて重要なプロセスになっていると考えています 。

 

weakend ディレクター・株式会社F  代表取締役 FUKAMI氏


返品率1%未満の秘訣は徹底した“正直さ”

ーーーFUKAMI氏の「台本なし」スタイルは、視聴者との距離を縮める素晴らしい手法だと感じます。このスタイルに行き着いたきっかけは何でしたか?


FUKAMI氏: 私が徹底しているのは「お客様に嘘をつかない」こと、これに尽きます 。例えば、お客様に合わないと思えば「こういうデザインが好きなお客様には、来月の新作の方が     ぴったりですよ」と正直にお伝えする 。お客様に後悔するようなお買い物をしてほしくない、という想いが強くあります。台本を用意するのではなく、お客様からのご質問にその場で真摯にお答えすることを徹底しています。この「嘘をつかない」姿勢が、コンバージョンそしてLTVに直結しているのです 。目先の売上を追って無理に販売すれば、お客様との長期的な信頼は得られません。短期的な機会損失を許容してでも正直さを貫くことが、安定した事業成長の基盤になると考えています 。



ーーーライブ中の雑談も魅力的ですが、商品紹介と雑談のバランスはどのように意識されていますか?


FUKAMI氏: 私は雑談の時でも、良いものは良い、悪いものは悪いとはっきりお伝えします。例えば「先日行ったお店は期待通りではなかったです」といった話をした後だからこそ、商品をおすすめする際の「この服は素敵に着こなせますよ」という言葉に、真実味を感じていただけるのかなと。雑談を通じて、私の正直な人間性をお見せすることが、お客様の信頼に繋がっているのかもしれません。


ーーー様々な体型のスタッフさんが着用される様子は、多くの顧客の「サイズ不安」を解消していると思います。この取り組みによって、EC事業者が課題としがちな返品率の改善など、事業的な効果は実感されていますか?


FUKAMI氏: お陰様で、返品率は驚くほど低く、1%にも満たない水準です 。私たちは基本的にお客様都合の返品・交換を受け付けていない分、ライブやECサイトでの「情報透明性」を徹底しています。例えば「この商品は伸縮性がありません」といったリスク情報を包み隠さずお伝えします 。私自身が正直に言うことで、お客様は納得して購入を判断できる 。このミスマッチを未然に防ぐコミュニケーションが、返品率の劇的な低下に繋がっていると感じます 。


ーーーKPIという観点では、ライブコマースの成果を測る上で、売上以外に重視している指標はありますか?


FUKAMI氏: チームでは「ライブの同時接続者数」と、配信をアーカイブした後の「再生数・リーチ数」を重視しています 。過去には最大で約2,200人の方に同時視聴いただきました 。この2つの指標に大きな乖離があれば、配信時間が最適でなかったと判断し改善します 。また、お客様が集中できる時間は45分程度という体感があるので、配信はなるべく1時間以内に収めるように心がけています。


ファンコミュニティという最強のマーケティング資産

ーーー配信の人気の根底にはブランドの思想があると感じます。改めて、「weakend」というブランド名に込めた“弱さを終わらせる”というコンセプトの原点や、FUKAMI氏ご自身の原体験についてお聞かせいただけますでしょうか。


FUKAMI氏: スタイリストとして綺麗な方をさらに綺麗にする仕事をする中で、少し違和感がありました 。一方で、フォロワーさんとの会話の中で「もうおしゃれをしにくくなった」など、服を着ること自体にネガティブになっている方が世の中にたくさんいると知り、それが私には衝撃でした 。そんな方たちに優しく寄り添えるブランドがあったらいいな、という想いから「weakend」を立ち上げたんです 。


ーーーそのブランドの世界観を、デジタルの接点であるライブ配信を通じてお客様に届ける際に、最も大切にしていることは何でしょうか?


FUKAMI氏: 「置いていきすぎない」ことですかね。私たちファッション業界の人間が「これ、すごくおしゃれでしょ」と突き抜けたものを作っても、一般の方からすると「いやいや、そんなおしゃれな人生私送ってないよ」となってしまう。お客様が必ずご自身の生活の中でイメージできるように、「やりすぎない」というのをポイントに置いています。


ーーーライブ配信が、単なる販売チャネルではなく「ファンコミュニティ」として機能しているように見えます。この熱量の高いコミュニティが生まれることで、LTV(顧客生涯価値)の向上や、良質なUGCの創出といった、ビジネス上のメリットにどう繋がっているとお考えですか?


FUKAMI氏: お客様と商品開発のプロセス自体を共有している点が大きいですね 。例えば、「このシルクは新潟の五泉という伝統的な産地で…」といったストーリーをお客様にお伝えすると、コミュニティの皆さんが一緒にそのプロセスを追いかけてくださる。そうすると、発売される頃には「待ってました」という状態が生まれるんです 。この「一緒に作っている」という感覚が、お客様の離脱率の低さにも繋がっています。以前、インセンティブなしで顧客アンケートをお願いしたのですが、3日間で500人以上の方が、ものすごい熱量の長文で回答を寄せてくださいました 。お客様自身が「ブランドを一緒に作っている」という当事者意識を持ってくださっている証拠だと感じています 。さらに、顧客の方だけを招いた「お見立て会」(というイベント直販)の参加者が、その後のライブ配信でリアルな感想をコメントしてくださることで、お客様同士でも接客いただいているような、素晴らしいサイクルが生まれています。

 

weakendのライブコマースの様子


視聴者数やトークスキルよりも重要な成功の極意

ーーーこれからライブコマースに挑戦するEC事業者が、陥りがちな「失敗のパターン」とは何だと思われますか?


FUKAMI氏: やはり、視聴者の「数」を追いかけてしまうことだと思います 。ライブを見てくれている方が一人でもいるなら、その方はお客様です 。私たちはたまたまSNSというツールを使っているだけで、本質は一対一のコミュニケーション 。その一人のお客様に対して誠実に向き合っていく姿勢が、結果的にコミュニティの拡大に繋がるのではないでしょうか 。


ーーー「FUKAMI氏のように上手く話せない」と考える担当者も多いと思います。事業者としてライブコマースを成功させるために、個人のトークスキル以上に重要になることは何だとお考えですか?


FUKAMI氏: 「正直であること」と「無理をしないこと」 。これは個人のスキルというより、ブランドとして貫くべき姿勢 。頑張って売ろうとする気持ちは、今の賢い消費者にはすぐに見透かされてしまいます 。お客様から聞かれたことに誠実に答えるだけでいい。いい意味で「頑張り過ぎない」余裕を持つことが、信頼される配信の鍵だと考えています 。


ーーー最後に、この記事を読んでいるEC業界で奮闘する経営者やご担当者様へ。お客様に愛され、事業としても成長していくためのメッセージをお願いします。


FUKAMI氏: 正直なところ、以前はKPIなどのビジネス指標に対して少し苦手意識がありました。ですが、そうした数値を追いかけることで、明らかにブランドが伸びたのも事実です。その上で伝えたいのは、ECやSNSはその他大勢に向けているようで、実は一人ひとりの顧客との対話が本質だということです 。お客様の顔を思い浮かべ、その人に届ける意識を持つこと 。その人のページに少しだけ足を運んでみるだけでも、お客様との繋がりは深まります。そして、経営者ご自身が「こうなりたい」「これを実現したい」と強くイメージできたことは、必ず実現できると私は信じています 。できない理由を探すのではなく、ビジョンを信じて挑戦し続けてほしいです 。


―――ありがとうございました。

今回のインタビューでFUKAMI氏が語った哲学は、顧客への徹底した誠実さである 。商品を無理に売るのではなく、「嘘をつかない」ことを最優先し 、SNSでの対話を通じて、顧客と「一緒にお洋服を作り上げたい」という共創スタイルを原点としている 。

ライブ配信は、不特定多数ではなく、画面の向こうにいる「一人」と向き合うための大切な場である 。テクニック重視ではなく正直さで築かれる顧客との深い信頼関係こそが、多くの人に長く愛されるブランドの秘訣なのだ 。



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