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2025.07.11 調査・統計

「暮らし」の総合サイト目指すニトリ、前期EC事業が伸張

「住まい」から「暮らし」の総合マーケットへと進化を目指すニトリのEC事業が好調だ。2025年5月に行われた決算発表では、売上高・購入者数とも拡大。ライブコマースやアプリなどによる積極的なアプローチが成長につながった。今年度は他社が参加する総合マーケットプレイスのオープンも控えているが、これらEC事業の伸びは追い風になりそうだ。


国内EC売上高は二桁近い増収に

ニトリホールディングスの2025年3月期決算で、国内のEC(通販)売上高は前期比9.5%増の954億円と二桁近い増収だった。EC経由の購入者数は、前期に比べ10.7%増になった。


顧客参加型のライブコマース「ニトリLIVE」が好調で視聴者数が増えたことや、アプリを使ってECサイトと店舗をつなぐOMO(オンラインとオフラインの融合)施策などが奏功。商品のおすすめポイントを画像内に追加し分かりやすく紹介するなど、サイト内の仕組みを強化したことも寄与した。国内売上高に占めるEC化率は13.2% となった。


アプリ会員が目標を超えて大幅に拡大

2025年3月期末に2,200万人の目標を挙げていたアプリ会員数は、前期より323万人を上積みし2,256万人と拡大した。24年12月末時点で2,173万人となり、1月時点ですでに2,200万人の目標を達成。26年3月期末は、2,500万人の獲得を目標に掲げる。


アプリ会員の履歴を見ると、店舗・EC併用者による年間購入回数は店舗のみ利用者の2.0倍となる。年間購入金額についても併用者は店舗のみ利用者の2.5倍と、両チャネルをまたぐことで売り上げ増に貢献。ECで購入した商品を店頭で受け取るOMOサービスの活性化などにつながっている。


26年3月期の国内重点課題としてもEC・アプリ刷新を挙げており、25年5月にはアプリをリニューアルして“暮らしの困りごと”を解決する総合サイトへの進化を図る。


リニューアル後は店舗とECとの連携をより強化し、まずは商品の受け取り方から選択できるようにするのに加え、送料や最短納期などを一緒に表示。店舗在庫も表示することで店舗を利用しやすくし、店舗とEC両チャネルの連携や価値の最大化を狙う。ニューアル後は、これまで別々だったニトリネットとニトリアプリの利用規約を1つに統合した。


さらに利便性の向上に向けてブランドごとに特集ページを設け、カテゴリーからでもブランドからでも検索できるように設計。ニトリネットの集客力を生かし、グループ全体のビジネス拡大につなげるという。


 

アプリは店舗とECをつなぐ重要なフックとなる(出典:ニトリ)


配信回数増やし視聴者数も伸びたライブコマース

EC売上高伸張の要因の1つとなったのが、ここ数年ノウハウを蓄積してきた視聴者参加型のライブコマース「ニトリLIVE」だ。2025年3月期の累計視聴者数は前期比48.0%増となり、935万人を突破した。


さかのぼって25年3月期第1四半期には、「ニトリLIVE」を週3回と定型化し計50回配信。同第2四半期には、6か月間で前期比73.7%増の計99回の配信を行った。配信回数に伴い視聴者数も増え、その6か月間では同94.6%増の393万人と約2倍に拡大している。


このように週に4~5回と多くの頻度で配信する「ニトリLIVE」には、社内オーディションを通った若手スタッフが専任で従事。商品紹介の配信中にリアルタイムで寄せられる視聴者の質問コメントにも答えながら、手作り感満載の雰囲気の中で進行する。


「“推し活グッズ”収納家具」「スぺパ・タイパ・コスパ最強調理アイテム」など、視聴者が興味を持ちそうなテーマを毎回設定して展開。収納やコーディネートを学べる人気講座の「みんなで学ぼう!#ニトコーデ」も定期開催している。23年にはキャンプフェスに参加し、初めて屋外イベント会場からアウトドア商品を生配信するなど、実績を積み上げてきた。


ライブ配信のショート動画などはニトリネットの商品ページにもポップアップ表示し、アーカイブでも見られるようになっている。


 

「ニトリLIVE」は週4~5回ペースで配信(出典:ニトリ)


マーケットプレイス化に向けてECサイト刷新も

従来の「住まい」から「暮らし」の総合マーケットへ進化を目指したニトリが踏み切ったが、マーケットプレイス事業への進出だ。中⻑期ビジョンである「2032年 3,000店舗 売上高3兆円」の達成に向けた取り組みの⼀環として、2024年2月に参入を発表。世界中で400以上の企業型マーケットプレイス機能を提供するミラクル社のシステムを採用して展開する。もともとは24年秋にECサイトのリニューアル予定があったが、構想を検討するなかでマーケットプレイス化を決めた。


アマゾンや楽天のような巨大プラットフォームを目指すのではなく、「暮らし」というカテゴリーに特化したプラットフォームを計画。家具やホームファッション、家電といった自社が扱うカテゴリーにとどまらず、食材や消耗品、介護用品、ペットフードなど幅広い商品を手がける企業を誘致する。


すでにニトリのECには、2,256万人のアプリ会員や935万人の「ニトリLIVE」視聴者が強固な顧客基盤として存在している。プラットフォームの出店企業にとって、こういったリソースを活用できるメリットは大きい。マーケットプレイスのオープンについては、25年以降の見通しとしている。

 

25年5月にECサイトとアプリをリニューアルしたが、その前の3月には既存のリフォームサイトもプレリニューアル。従来は拠点情報や納品事例などの「リフォームサイト」と、商品情報などの「システムキッチンサイト」の2サイト展開だったものを1つにまとめ、より見やすい仕様にした。5月末にはさらに商品情報を増やし、ニトリでリフォームした顧客のインタビュー記事や役立ちコラムを新コンテンツとして導入する。


 

実績が豊富なミラクル社とタッグを組む(出典:ニトリ)


DXの強化やAI活用を推進

同社は「製造物流IT小売業」というビジネスモデルを掲げ、DXの強化に取り組んでいる。文字通りIT部門の内製化を進めており、ECサイトやアプリのシステム開発・構築、運用などは自前で手掛ける。


グループのDXを加速するため、22年4月にはニトリ全体のIT・デジタル分野を担うニトリデジタルベースを設立。新技術の積極的活用を図り、DXによる新たな購買体験の提供を目指す。内製化の推進に向けてIT部門人材の拡充を強化し、2032年には1,000人体制を計画する。


 

ニトリデジタルベースを立ち上げDX事業を加速する(出典:ニトリ)


DXに注力する同社が強化しているのが、AI技術の活用だ。23年12月からは、自動収集した商品情報をECサイトに反映させる実証実験に着手。商品情報掲載作業の効率化や生産性向上に取り組む。


24年11月には生成AI支援サービスを手がけるギブリー社と組み、AIを活用した「コンタクトセンター」プロジェクトに着手。チャネル統合型のナレッジデータベースなどを最大限に活用して無人対応などの割合を増やし、高品質のAI接客対応の実現を目指している。


こういったDXやAIの技術は、今後オープンするマーケットプレイス事業にも活用していくとみられる。


まとめ

「暮らしの総合マーケット」を目指し中⻑期ビジョンに向けて邁進するニトリだが、新たなマーケットプレイスを成功させることはそう楽ではない。「暮らし」というキーワードを軸に専門性を高めながら、大手プラットフォームにはない価値をいかに生み出していくかがポイントになりそうだ。


同社最大の強みは、マーケティングから商品開発、製造、IT、物流、販促、小売まで、自社独自で手がける「自前主義」のビジネスモデルにほかならない。必要に応じて他社と連携することはあっても、今後も成長のカギは“内製”の充実にあるといえるだろう。

 

執筆者/渡辺友絵



【記者紹介】
渡辺友絵
長年にわたり、流通系業界紙で記者や編集長として大手企業や官庁・団体などを取材し、 通信販売やECを軸とした記事を手がける。その後フリーとなり、通販・ECをはじめ、物 流・決済・金融・法律など業界周りの記事を紙媒体やWEBメディアに執筆している。現在 、日本ダイレクトマーケティング学会法務研究部会幹事、日本印刷技術協会客員研究員 、ECネットワーク客員研究員。





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