2022.12.09 行政情報
健食留意事項改正の背景とポイントとは?消費者庁・田中室長に聞く(前)
目次
後編:健食留意事項改正の背景とポイントとは?消費者庁・田中室長に聞く(後)はこちら>>
「妊活」は悪質、「腸活」も規制から逃げられない
――今回改正した背景は?
田中誠氏(以下、田中) 全面的な改正を行った平成28年(2016年)から、違反事例がかなり積み上がってきた。かつては痩身系の健康食品で違反が多かったが、それ以降、取り締まりを強化し、例えば「免疫」など、その対象もバラエティーに富んできた。また、健康食品業界で使用される不適切な標語などの事例も蓄積されてきたことから刷新した。
――規制の対象となる健康保持増進効果の事例に、「妊活」「腸活」が追記されたことも注目されている。
田中 「妊活」を標ぼうするサプリメントでは、不妊に悩んでいる方に向けて、「妊娠しやすくなる」「妊娠率を向上させる」とうたっているものが多く、景品表示法に基づく措置命令を受けた事例もある。特にマカを主成分とするサプリメントに多く、「妊活サプリ」を標ぼうした多数の商品が出回っている。
誤解がないようにしてほしいのは、健康保持増進効果をうたったからと言って、即違反になるわけではなく、エビデンスがない場合に問題になるという点だ。「妊活」については、妊娠率を向上させる食品は基本的にないため、問題となる可能性がかなり高い。
健康食品業界には、「不妊の改善」などと表示できないことは理解しているものの、「妊活サプリ」「授かりたい方へ」といった表現ならば規制から逃げられると誤解している事業者も多い。不妊に悩む方は藁をもすがる思いでいることを考えると、悪質と言える。
「腸活」については、エビデンスがなくても、抽象的な表現なので許されると考えている事業者も多いようだ。いわゆる健康食品で安易に「腸活」と表示しているケースがあるが、十分な科学的根拠がないと違法になる。このことを理解してもらうために、効果を暗示するキャッチフレーズとして「妊活」「腸活」を追記した。
その他の「〇〇活」も不適切な表現
――「妊活」「腸活」だけでなく、最近では「脳活」「骨活」「美活」といった表現も見られる。
田中 基本的に「妊活」や「腸活」の考え方と同じと考えてよい。「〇〇活」という表現が不適切であることを明確にするために、今回の改正で代表的な「妊活」「腸活」を追記した。
――このほかにも健康保持増進効果の事例として、「年齢とともに、低下する〇〇成分」が追記された。この表現は、大手食品メーカーなどのヒアルロン酸やコラーゲンを配合したサプリメントの販売サイトでよく見かける。
田中 「このサプリメントを摂取すれば、○○成分を補完してくれる」という表示であり、例えば、「年齢とともに体内の酵素が減る」という表示が見られるが、植物酵素で補完できるというエビデンスがない。ヒアルロン酸やコラーゲンについても、その商品を摂取すれば、補完してくれるというエビデンスが必要となる。
例えば、「年齢とともに骨密度が低下する」と表示すると、一般消費者はサプリメントの摂取により、低下した骨密度を補完してくれると期待してしまう。このため、販売する商品でエビデンスがない場合には問題となる。
景表法・健増法は「成分広告」にも切り込む
――「成分広告」(商品名を出さずに、特定の成分の効能効果をうたう広告)の考え方を具体的に盛り込んだことは、業界にインパクトを与えたと考えられる。
田中 「成分広告」はチラシや小冊子で行う例が多く、クロレラの効能効果をうたったチラシの配布をめぐる訴訟もあった。景品表示法や健康増進法の規制対象となる表示は、顧客を誘引するためのあらゆる手段が該当することから、商品名を出さなければよいというわけではない。
今回の改正では、「成分広告」といった商品名をあえて出さない手法に対する考え方を盛り込んだ。例えば、ダイレクトメールや小冊子を用いて成分と商品をつなげる事例があるが、規制の対象になるかどうかは、全体の流れを見て判断することになる。
さらに、成分名と商品名・ブランド名を統一して、一般消費者に特定の商品を想起させるという手法も、「ブロリコ事件」(健康食品「ブロリコ」の表示が景品表示法違反に問われた事件)を踏まえて追記した。
――例えば、「成分広告」で「〇〇乳酸菌」の効果を説明し、別の媒体で「〇〇乳酸菌」入りヨーグルトを宣伝するという手法が不適切であることが、明確になったと考えてよいか。
田中 その考え方に近い。「成分広告」については、薬機法(医薬品医療機器等法)では手が出しにくいが、景品表示法や健康増進法では実質的に判断していくということだ。「成分広告」から特定の商品が想起され、疾病予防・改善などをうたっているケースがあるが、そうした表示については抑止していきたい。
規制対象となる表示と認定できれば、あとはエビデンスを見ていくことになる。具体的な商品名が記載されていなくても、いろいろな仕組みを使って商品に誘引する行為が広く見られることから、そうした手法を取り締まっていく。一般消費者が明らかに特定の商品を想起できるケースについては、踏み込んでいきたい。
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