2026.08.17 コラム
波に乗るLINEヤフー!AIやポイント活用、セブンとの提携で事業拡大急ぐ
LINEヤフーが、矢継ぎ早にさまざまな成長戦略を打ち出している。「LINE」と「PayPay」のアカウント連携をはじめ、AIを活用した各分野の進化構想を発表。セブン&アイとの資本・業務提携によりリアルとデジタルの融合に乗り出すとともに、カカクコムへのTOBを通じてシナジー創出を目指す。いっきに押し寄せたデジタル化の波に乗り、事業拡大と巨大経済圏構築に向けて突き進む。
「LINE」と「PayPay」のアカウントを連携
LINEヤフーは2026年7月、夏以降に「LINE」と「PayPay」のアカウント連携を始めると発表した。1億人規模のLINEユーザーと7,400万人以上のPayPayユーザーの基盤をつなぎ、より利便性が高いサービスを提供する。
PayPayアプリを介さなくてもLINE上でPayPayアカウントの登録が可能となるため、LINE経由で「PayPay残高」の送金や「グループ支払い」機能による割り勘ができるようになる。また、PayPayアプリ上でユーザー設定すれば「LINE」の友だち表示が可能となり、よりスムーズに「PayPay残高」を送ることができる。
加えて、「LINE」上で提供している「LINEミニアプリ」版の「PayPay」も提供する予定だ。「PayPay残高」や保有する「PayPayポイント」の確認をはじめ、「送る・受け取る」機能や取引履歴の確認、ATMからのチャージといった「PayPay」の機能を「LINEミニアプリ」内で利用できるようになる。
今後は「LINEポイント」と「PayPayポイント」の統合も予定しており、「LINEポイント」を有効期限のない「PayPayポイント」へと移行できる。統合後は「PayPayポイント」として、一元的に貯めたり使ったりできるようになる予定だ。「LINE」上のECでの買い物にも「PayPayポイント」が付与され、「LINEギフト」でギフトをもらうと「PayPayポイント」がもらえるなど、「LINE」内で「PayPayポイント」の付与や利用ができるサービスを順次拡充する。
「LINEポイント」と「PayPayポイント」の統合も予定(出典:LINEヤフー)
「LINE」の独自決済サービスだった「LINE Pay」は、2025年4月に日本国内での提供を終了。決済や送金が可能な代表的コード決済として活用されていたが、LINEとヤフーの経営統合を受けて「PayPay」に一本化された。
記念イベントではAIによる進化構想を発表
「LINE」と「PayPay」のアカウント連携を発表した同日、同社は「LINE15周年記念イベント」を開いた。アカウント連携の詳細をはじめ、AIエージェントの活用を推進する「Life on LINE」の進化構想を明らかにした。
次の15年に向けて、Information、Shopping、Life、Talkの4領域における「LINE」上の取り組みを紹介。Shopping領域では、「LINEギフト」を起点に成長してきた「LINE」のECについて説明し、「LINE」の「ショッピングタブ」を2026年9月に正式リリースすると発表した「ショッピングタブ」の導入により、LINEヤフーグループが扱う3億点以上からユーザーは自分に合う商品を見つけ、比較・検討し、購入から配送までをシームレスに行えるようになる。さらに特定商品の先行・限定販売やAIエージェントによる接客体験などを通じ、「LINE」ならではの新たなショッピング体験を目指すという。
Talk領域では、自社のAIエージェント「Agent i」を活用し、質問への回答やタスク管理などを支援する新機能「Agent i in chat」を2026年内に提供する。そのほか、自社のメンバーシッププログラム「LYPプレミアム」の新たな取り組みとして、「LINE」通話を録音・録画・文字起こしして保存するなどの新4機能を8月からリリースすると発表した。
「Agent i in chat」ではAIがさまざまなサポートを行なう(出典:LINEヤフー)
セブン&アイとの資本・業務提携で顧客接点を大幅拡大
デジタル社会の先端を走る同社がリアルとの融合に踏み切った施策が、セブン&アイ・ホールディングス(HD)との資本・業務提携だ。
2026年7月にソフトバンク、LINEヤフー、PayPayと、セブン&アイHDおよびセブン-イレブン・ジャパンは、戦略的パートナーシップに合意し、三井住友カードとも合意に至った。セブン&アイHDは、ソフトバンクおよびPayPayとの間で1,000億円ずつ、三井住友カードとの間で1,000億円の資本提携契約を締結した。
消費者の購買行動や生活スタイルが多様化する中で、コンビニエンスストアにおいてもリアル店舗とデジタル接点の融合が不可欠となっている。今後は国内で2万店超の店舗網と1日約2,000万人の来店者を有するセブン-イレブンの顧客接点を、LINEヤフーやPayPay、ソフトバンクが持つ人工知能(AI)、データ活用力、ITソリューションや顧客基盤などと連携。三井住友カードのキャッシュレス決済・ポイント領域における知見も組み合わせることで、顧客接点のさらなる拡張・融合を図る。
具体的には、ID・ポイント・サービスの相互連携強化を進める。セブン&アイHDの共通会員基盤である「7iD」を「PayPay ID」に統合し、国内最大級の共通顧客基盤を構築。セブン-イレブンでの買い物には、ストアポイントとして「PayPayポイント」と三井住友カードの「Vポイント」を導入する。
また、ソフトバンク通信サービス利用者、PayPayやLINEヤフーのユーザー、三井住友カード決済サービス利用者などに向け、割引やポイント還元、大規模な販促・キャンペーンを行う。例えば「PayPayポイント」のセブン-イレブン商品券との交換や、有料会員へのポイント付与率優遇、お得なクーポンの提供などを実施。PayPay・LINE・三井住友カードのセブン-イレブンでのミニアプリ展開によるデジタル接点の拡充も行なう。
中長期的な取り組みとしては、各社が有する大規模かつ多様なデータとリアル・デジタル接点を組み合わせ、顧客にパーソナルな体験を提供。ソフトバンクのAI技術を活用し、需要予測や店舗オペレーションの省人化などを進める。
これまで「7iD」や「セブンマイル」という独自施策を展開してきたセブン&アイHDだが、方針転換して国内最大級の「PayPay経済圏」への参加を選択した。提携における最大の核はセブン-イレブンのデジタル基盤をPayPayに一本化することであり、巨大ポイント経済圏が誕生する。今後は「楽天経済圏」や「au経済圏」などとの競争が激化しそうだ。
膨大な会員基盤を軸にID・ポイント・サービスの相互連携を強化(出典:LINEヤフー)
第1Q説明会ではカカクコム買収の詳細を発表
LINEヤフーは8月に2027年3月期第1四半期決算を発表した。複数の連結子会社化に伴う増収に加えてPayPay連結売上やコマース事業売上が増加し、売上収益は同期間として過去最高となる5,539億円(前年同期比13.1%増)を達成。調整後EBITDA(本業の収益力をより正確に示すために調整した利益指標)も、同じく過去最高の1,548億円(前年同期比23.1%増)と伸張した。
コマース事業の売上収益は、連結子会社化による増収および「Yahoo!ショッピング」やリユース事業の高成長、ZOZOグループの増収などより、2,428億円(前年同期比12.5%増)と増加。調整後EBITDAは、販売促進・広告宣伝費や人件費など販管費の増加があったものの、増収が費用増を吸収し420億円(前年同期比10.2%増)となった。売上収益とともに2桁増を達成したことになる。
売上収益・調整後EBITDAともに2桁成長した(出典:LINEヤフー)
AIエージェントの「Agent i」は「ファッション」「くらし」など新たな領域への導入が進み、合わせて25領域へと拡大。導線強化や利便性向上によって日常利用を促進した結果、延べ利用者数は1,200万人超まで増えており、今後の事業で核となるサービスと位置付ける。
セブン-イレブンとの連携施策については、2,556万人いる有料のLYPプレミアムグループ会員向けに、ポイント付与率アップやセブンカフェクーポン提供といった各種キャンペーンを実施。2,897万人の「LINEミニアプリ」月間利用者に向け、アプリを通じてクーポン・スタンプカード発行やモバイルオーダー機能導入を展開するなど、デジタル接点の拡充を図る。
「食べログ」などを手がけるカカクコムの買収についても、「提携によりシナジー創出を目指す」と改めて提案。すでに海外投資ファンドなどがカカクコム買収に手を挙げているが、LINEヤフーは米投資ファンドのベインキャピタルと組み買い付け価格を引き上げて対抗、9月にはTOB(株式公開買い付け)を行なうと予告した。
また、TOBを実施した場合の買収総額は約6,900億円になると公表。持分比率はベインキャピタルが50.1%、LINEヤフーが49.9%としている。
買収後の具体的シナジーについては、カカクコム事業へのユーザー送客や「Agent i 」における価格.comアセットの活用、「食べログ」とLINEを活用した飲食店向けソリューションなどを挙げる。中でも「食べログ」とのLINE公式アカウント連携を重要と位置づけ、優先順位の高さを強調した。
まとめ
同社は「Agent i」を軸に据えたサービスやセブン-イレブンとの提携、PayPayを中心とする決済・金融分野の伸びを追い風に、デジタル社会の先端で成長戦略を描く。多大な資金が必要なものの、引き続き大規模投資やM&Aも進めていくだろう。
楽天など競合デジタル経済圏の追い上げも無視できない中、今後どのようなステージを目指すのか。次世代を担う巨大企業が打つ成長戦略に注目していきたい。
執筆者/渡辺友絵
【記者紹介】
渡辺友絵
長年にわたり、流通系業界紙で記者や編集長として大手企業や官庁・団体などを取材し、 通信販売やECを軸とした記事を手がける。その後フリーとなり、通販・ECをはじめ、物 流・決済・金融・法律など業界周りの記事を紙媒体やWEBメディアに執筆している。現在 、日本ダイレクトマーケティング学会法務研究部会幹事、日本印刷技術協会客員研究員 、ECネットワーク客員研究員。
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