2026.07.22 コラム
配送費や用紙、梱包資材も!止まらないEC周辺コストの値上げ
配送や資材など、ECを取り巻く周辺業界の値上げが止まらない。長引く円安による諸価格の高止まりに加え、中東情勢悪化に伴う原油不足など、さまざまなマイナス要因がEC業界を揺るがしている。配送費用をはじめ、カタログ用紙や梱包用の段ボール、包装フィルムなどEC業務に欠かせない関連コストが軒並みアップし、利益面への影響が懸念される。
ヤマト運輸と佐川急便が「燃油サーチャージ」導入へ
中東軍事衝突によるホルムズ海峡封鎖の影響はさまざまな経済分野に広がっているが、中でも燃料となる原油価格の高騰が物流業界に及ぼす不安は大きい。商品配送が不可欠なEC業界で現在懸念されているのが、基本運賃に上乗せする追加料金となる「燃油サーチャージ」の導入だ。燃料価格や為替変動によるコスト増の一部を利用者に転嫁する仕組みで、航空業界では一般的なものの、陸路の輸送ではほとんど事例がなかった。
燃油サーチャージ導入が一気に具体化しそうだと注目を集めたきっかけは、ヤマト運輸と佐川急便の親会社がそれそれ開いた決算説明会における経営陣のコメントだ。
ヤマト運輸の親会社であるヤマトホールディングスは2026年4月の決算説明会で、燃料サーチャージの導入検討を明らかにした。今期のプライシング適正化の⽅向性と外部環境の変動に対する対応策として語ったもので、中東情勢による燃料価格の急激な⾼騰に対し持続的な物流ネットワーク維持の必要性を強調。機動的に価格に反映する仕組みとして、すでに燃料サーチャージ導入の検討を始めていることを明らかにした。中東情勢悪化が長引いた場合は、今年度中の導入の可能性も示唆している。
法人契約サービスに燃料サーチャージの導入を検討(出典:ヤマト運輸)
佐川急便を傘下に持つSGホールディングスは5月の決算説明会で、原油価格の上昇などを鑑み、経営への影響が広がるようであれば燃油サーチャージ導入も検討すべきとした。現状では車両を使わない配送やエコドライブによる燃費の向上など、燃料使用を抑えていく取組みを推進。ただ、こういった自助努力で吸収しきれない場合は燃料サーチャージ導入に踏み切るという認識を示し、その手法や時期については検討中と語った。
両社とも燃油サーチャージを導入する対象は法人に限られ、個人向けの宅配便などは対象外とみられる。個人向け運賃は国への届け出が必要だが、法人の場合は自由契約のため契約条件に導入するだけで実行できるからだ。
もともと法人契約は出荷数や発送形態に基づき契約先によって引き受け価格が変わってくるので、燃油サーチャージも組み込みやすい。そのため、ほとんどのEC事業者は対象になるとみられる。燃油サーチャージが導入された場合、EC企業がその分のコストをどのように吸収するのかが課題だが、商品価格や送料など顧客への価格転嫁が不可欠になる可能性も高い。
ゆうパック料金など値上げが続く日本郵便
燃油サーチャージが注目されている一方で、配送料の値上げも続いている。日本郵便は2026年7月、諸物価や人件費の上昇に伴うコスト増加を理由に、宅配便の「ゆうパック」と、小型荷物向けの「ゆうパケット」および「クリックポスト」の運賃を10月から引き上げると発表した。これに伴い、ゆうパック包装用資材価格の値上げも実施する。
ゆうパックはサイズや配送先により改定率が異なるが、平均値上げ率は基本運賃の約 10%となる。重量、ゴルフ、スキー、空港のゆうパックの料金も見直す。ゆうパケットは全サイズを一律360円に引き上げ、クリックポストも185円から240円に見直し、厚さとサイズによって引き受け条件を変更する。
ゆうパック包装用資材は、各サイズのゆうパック箱やゆうパック袋をはじめ、酒箱・ワイン箱やカバー類、クッション封筒など幅広い包装用品が値上げ対象となる。
同社は2024年10月、郵便事業の赤字拡大などを理由に封書やはがきをはじめ、レターパックやスマートレターなどの値上げを行った。2026年6月には、郵便料金を柔軟に改定できる「改正郵便法」が参院本会議で可決、成立。現在は国が定めている上限額を日本郵便の申請に応じて総務相が認可する仕組みに緩和されたため、2027年度中にもさらなる料金引き上げに踏み切る可能性がある。
2024年に続く値上げを今年10月から実施する(出典:日本郵便)
マテリアル販売商品やBtoB配送料を引き上げた佐川急便
ヤマト運輸は2025年10月から、 120〜200サイズの大きめの宅急便や、ゴルフ・スキーの宅急便などを平均約3.5%値上げした。60〜100サイズや宅急便コンパクトは対象外だったのに加え、現状で公式には値上げの動きは見られない。
佐川急便は2023年と2024年の2年連続で宅配便の基本運賃を値上げし、2024年4月の改定では「飛脚宅配便」を平均7%程度引き上げた。さらに2026年はEC事業者の負担増につながる基本運賃以外の料金引き上げが続いており、4月にエクスプレスバッグや段ボールBOXなどの梱包資材(マテリアル販売商品)30品目の値上げを実施。10月からは、従来は無料だったセーフティサービス(貴重品・高額品の手渡しによる厳重管理配送)に1個220円の手数料が新設される。
佐川急便の宅配便基本運賃引き上げについては、現状では公式発表はない。ただ、最近同社から個別に配送料の値上げ要請があったため送料を値上げせざるを得ないと顧客にアナウンスするEC企業も見受けられ、BtoBサービスでは値上げ交渉が進んでいるようだ。
今年4月には30品目の梱包資材を値上げした(出典:佐川急便)
ナフサ不足で容器や包装、パッケージ、梱包資材が値上り
原油不足によるナフサの高騰と供給不安は一向に解消されず、その影響は食品包装フィルムや弁当トレー、ビニール袋などをはじめテープ、ラベル、梱包用PPバンド、緩衝材などさまざまな包装資材に及ぶ。
包装資材メーカー各社で値上げの動きが広がっており、2026年3月以降は容器・フィルム・袋・備品や消耗品などを扱うメーカーが軒並み価格改定を実施。各社で幅はあるものの、5月~6月からの出荷分で10~30%以上の値上げを発表した。加えて、受注調整や出荷数量制限、納期遅延の可能性も挙げている。これにより、食品を扱うメーカーや小売事業者、さらにEC企業も大きな影響を受けることになる。
EC・通販に必須な印刷・情報用紙や段ボール原紙も
製紙業界でも値上げが続き、印刷用紙や段ボールなどECに不可欠な資材が高騰している。原燃料の多くを輸入に頼っていることもあり、長引く円安により輸入コストが膨らみ利益を圧迫。2025年10月以降、大王製紙や日本製紙などの大手製紙メーカーが印刷・情報用紙で10%以上の値上げを実施した。
さらに2026年に入ってから、大手製紙メーカー各社は印刷・情報用紙の価格を7~8月にかけて10~15%以上値上げすると相次ぎ発表。2025年秋以降2回の引き上げとなり、値上げ幅は合わせて25%以上に及ぶ。カタログやチラシ、ダイレクトメールなどの紙媒体を併用するEC企業にとっては、大きな痛手といえる。
EC事業には必須の段ボールも値上がった。段ボール原紙で国内最大手メーカーのレンゴーも、2025年10月に段ボール原紙の価格引き上げを発表。同社や王子マテリアなど段ボール原紙を扱う主要各社がそろって価格改定を打ち出したことで、段ボールシートなどを製造する業界全体がついに値上げを了承。2026年2月には、3年ぶりに約10%の値上げとなった。コスト上昇分については段ボール箱価格に転嫁され、小売事業者やEC企業の仕入れ値上昇につながることになる。
段ボール緩衝材などもECには必須(出典:レンゴー)
まとめ
中東情勢の鎮静化が見通せない現状では、今後もEC周辺事業者の値上げは続くとみられる。そういったコスト負担の軽減に向け、EC企業は自衛策を確立していくことが重要だ。
例えばファンケルは2026年6月から、ヤマト運輸の「宅急便コンパクト」を活用した配送に本格着手。自社ロゴ入りの専用箱により荷物サイズの統一化を図ることで積載効率を高め、配送業務効率化や物流コスト抑制につなげる。「置き配」も選べるようになるため利便性が高まり、顧客サービスも向上する。
荷物サイズ統一化で積載効率をアップ(出典:ファンケル)
EC企業においては顧客への価格転嫁も選択肢の1つだろうが、効率や付加価値により値上げ分を吸収できるようなこういった取り組みにも期待したい。
執筆者/渡辺友絵
【記者紹介】
渡辺友絵
長年にわたり、流通系業界紙で記者や編集長として大手企業や官庁・団体などを取材し、 通信販売やECを軸とした記事を手がける。その後フリーとなり、通販・ECをはじめ、物 流・決済・金融・法律など業界周りの記事を紙媒体やWEBメディアに執筆している。現在 、日本ダイレクトマーケティング学会法務研究部会幹事、日本印刷技術協会客員研究員 、ECネットワーク客員研究員。
※「資料掲載企業アカウント」の会員情報では「通販通信ECMO会員」としてログイン出来ません。
資料DLランキング
-
1
今注目のライブコマースで変わるこれからのEC
-
2
【無料公開】食品EC「カオスマップ」2025 – 食品EC業界の最新動向
-
3
SHOPLINEがあなたのブランドを世界へ! 越境EC成功の鍵とは
-
4
ペット×ECの未来を拓く!導入事例あり!
-
5
東南アジア最大のECプラットフォーム Shopeeのサービス概要
ニュースランキング
-
1
「Qoo10」、ビューティーアワード上半期 総合1位に「RX ザ・アルファアルブチンセラム」
-
2
【7月22日10時更新:物流配送状況】日本郵便/ヤマト運輸/佐川急便/西濃運輸/福山通運
-
3
テレ朝、テレビ番組視聴でポイント・クーポンがもらえるサービス開始
-
4
警察庁、家庭用IoT機器を悪用したサイバー攻撃 不正送金で29億円の被害
-
5
6月に観賞魚用製品など14件削除…製品安全誓約
