2024.07.04 行政情報
悪質な定期購入商法は減少するか?…本格化する改正特商法による取り締まり
「お試し」という表示を見て申し込んだところ、複数回の購入が条件となる定期購入契約だったという消費者トラブルが後を絶たない。改正特定商取引法の施行から2年が経過し、行政の取り締まりも本格化してきた。その一方で、新たな手口が登場するなど、悪質事業者と行政の“イタチごっこ”が続いている。
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法改正後も消費者トラブルが増加
2024年版消費者白書によると、インターネット通販の定期購入に関する消費者相談が23年に約9万8000件に上った。全体の相談件数の1割強を占めるという異常な状況にある。
国は特商法を改正(2022年6月1日施行)し、新たな規制を導入。しかし、その後も消費者トラブルは減少するどころか、むしろ増加傾向にある。
そうした中、特商法を所管する消費者庁では、昨年6月の行政処分を皮切りに、法執行に動き出している。今年3~4月には、3件の行政処分を立て続けに発表した。
法改正後、初の行政処分を受けたヘアケア商品・サプリメントの通販会社では、販売サイトの申し込み最終確認画面に「初回特別価格 990円」とうたいながら、各回の分量や代金などは何度もスクロールしなければ読めない位置に表示していた。
ダイエット飲料の通販会社のケースでは、申し込み最終確認画面に、分量、価格、支払い時期など、定期購入であることがわかる表示事項が記載されていなかった。
また、サプリメント通販会社の事例を見ると、「24時間365日自動音声で解約可能」の表示とともに、解約の面倒な手続きも「ゼロ」と広告。しかし、実際に解約を申し出ると、煩雑な手続きを求められ、簡単に解約できなかったという。
新たな手口が登場
法改正後、行政の取り締まりが本格化してきた一方で、悪質な定期購入商法の手口も多様化している。
その1つとして、「回数縛りなし」と表示しているものの、クーポンを利用すると勝手に定期購入に変更されるというトラブルが新たな問題に浮上している。
消費者が「回数縛りなし」の表示を見て、1回だけのつもりで商品を注文すると、その直後に「特別割引クーポン利用」「プレゼント特典付き」といった表示が出現。得すると思って「利用する」を選択すると、勝手に定期購入コースに変更されるという手口だ。
このほか、SNSを悪用した手口も登場している。SNSの広告で「お試し」とうたって消費者の関心を惹き、ハイパーリンクを押させて、スマホの画面全体にチャットの申し込み画面を表示。これにより、定期購入コースであると気づきにくくして、申し込ませるという内容だ。
改正法に基づく取り締まりに乗り出した行政と、あの手この手で消費者をだまそうとする悪質事業者の“イタチごっこ”が続いている。
消費者団体が対策を要望
京都消費者契約ネットワークは5月15日、消費者担当大臣と消費者庁長官へ意見書を提出した。
意見書では、定期購入契約で「初回価格」を切り分けて表示すること自体が消費者を誤認させるとし、これを禁止する規制を特商法と景品表示法に導入するよう要望。
また、初回分のみで購入が終わると誤認させる広告については、申し込み最終確認画面に必要な表示事項が記載されていたとしても、特商法で禁止する誇大広告や景表法で禁止する有利誤認表示に該当するとして、行政処分の実施を求めている。
未成年者や高齢者によるネット通販の利用増に伴って、悪質な定期購入商法の餌食となる消費者が増加。新たな手口への対応も急がれる。通販業界にとっても市場を拡大する上で、消費者が安心して利用できる環境の整備が必要となる。
消費者トラブルを減らすためには、消費者団体が求めるように、さらなる法規制や法執行の強化は避けて通れない。一方、通販業界内では「一部の悪質事業者のために、全体に規制がかかるのはいかがなものか」(団体関係者)という不満がくすぶっている。
従来の対策が行き詰まりつつあるなか、消費者庁は6月27日、「デジタル社会における消費取引研究会」を発足し、規制の在り方や対処方法の検討に着手した。次の一手を打ち出せるかどうかが注目される。
(木村 祐作)
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