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2022.09.08 その他

日経クロステックが指摘した「機能性表示食品の課題」を考察(後)

経済専門誌「日経クロステック」(日経BP)が報じた機能性表示食品の記事が、健康食品業界で話題となっている。記事は、機能性を裏づける科学的根拠があいまいで、消費者の信頼を裏切っているという内容。同誌が取り上げた「多重検定」「ジャーナル」の問題を中心に考察する。(前編はコチラ



不十分な「CONSORT声明」「PRISMA声明」への対応


 機能性表示食品制度は企業責任の下で成り立っている。これは企業の創意工夫、業界全体のレベルアップ、市場拡大にもつながり、時代に沿ったものだ。ただし、そうした制度上のメリットを発揮するには、利用する業界側の姿勢やモラルがカギを握る。

 「日経クロステック」が報じた多重検定やジャーナルの問題は、“企業責任の下”という制度の立て付けを考えると、届出企業の姿勢にも大きな原因がある。サイエンスとしっかり向き合おうとする企業と、そうでない企業が混在しているからだ。

 届出ガイドラインでは、誰もが適切に試験結果を評価できるように、ヒト試験については「CONSORT 2010声明」、研究レビューについては「PRISMA声明チェックリスト」への準拠を求めている。現状を見る限り、しっかりと対応している企業は少数派とみられる。

「UMIN臨床試験登録システム」への登録は必須だが…


 ヒト試験については、「UMIN臨床試験登録システム」への事前登録も必須としている。事前に計画した試験デザインが、後に改ざんされないようにする目的がある。

 「CONSORT 2010声明」「PRISMA声明チェックリスト」「UMIN臨床試験登録システム」への対応が適切ならば、「日経クロステック」が報じたような問題はほとんど生じないはずだ。だが、現状は異なる。

 一例を挙げると、UMIN登録時の試験デザインと、論文の試験デザインに食い違いが生じるケースもある。機能性表示食品の届出をめぐり、本来起こり得ないことが起きているわけである。もはや、企業モラルの欠如以外の何者でもない。

困難なジャーナルの線引き


 「日経クロステック」が提起した問題の1つに、研究論文の投稿先であるジャーナルの質がある。

 機能性表示食品として消費者庁に届け出るためには、学術誌などに掲載された査読付き論文を表示の根拠に用いる。

 同誌は、機能性表示食品の多くの届出が、論文の採択率が9割という某ジャーナルを活用していると批判した。採択率が9割というのは、査読がかなり緩いことを意味するからだ。

 ジャーナルの問題は、同制度の創設に向けて開かれた消費者庁の検討会でも取り上げられた。委員からは、具体的な方法論も聞かれた。掲載料を支払えば必ず掲載される悪徳ジャーナル(ハゲタカジャーナル)の問題も指摘された。

 だが、ジャーナルの線引きは困難だった。このため、届出ガイドラインでは、著者との利益相反が疑われるジャーナルに掲載された論文の使用を禁止することや、査読の透明性が高いジャーナルが望ましいなどの記載にとどめている。

ジャーナルの選別も企業姿勢が問われる


 「日経クロステック」が問題視した某ジャーナルは商業誌の1つで、食品企業に人気がある。ある業界関係者は、「手っ取り早いから利用する」と打ち明ける。多くの企業は問題があると知りながら活用しているという。

 問題は深刻だが、ジャーナルの線引きは困難で、行政がすぐに手を打てる状況にないとみられる。当面、この問題も企業姿勢に頼らざるを得ないのが現状だ。

トクホはどうか?


 ジャーナルや多重検定の問題は、機能性表示食品に限ったことではない。トクホの論文も同様の問題を抱えているとみられる。

 ただし、トクホは多数の専門家が審査し、不明な点があれば追加データの提出を求めるなどして問題点をクリアにする。

 エビデンスのレベルについても、機能性表示食品より高いわけではない。機能性表示食品の場合、研究レビューによって機能性を確認できる。既存の論文を集めて総合的に判断するため、1回のヒト試験と比べ、より信頼性の高い手法と位置づけられている。

 例えばDHA・EPAを配合した機能性表示食品の研究レビューを見ると、最終的に検証した論文が10報以上を数える。

 その一方で、わずか1報の論文で研究レビューを行って届け出る企業も多く、今後の課題に挙げられる。

業界団体は役割をはたせるか?


 「日経クロステック」の報道に対し、業界内には反発する声も聞かれる。しかし、外部からの批判は、制度改善のための絶好の機会と捉えるべきだろう。

 すぐにジャーナルの線引きを行うことは困難としても、多重検定の問題については届出ガイドラインや事後チェック指針の拡充によって対応が可能だ。消費者庁が対応するかどうか、である。

 企業責任という制度の趣旨を踏まえると、本来ならば行政に頼るのではなく、業界が自ら襟を正す方向に動くことが求められる。

 その際、主導的な役割を果たさなければならないのが業界団体だ。業界横断的組織の健康食品産業協議会などがリーダーシップを発揮することが重要となる。

 また、消費者庁は近く、業界団体による届出資料の事前チェック制度を本格化させる計画という。事前チェックを行う団体は、ぎりぎりクリアできるというチェックの仕方ではなく、疑義が出ないような取り組みが必要と言える。消費者庁には、そのための厳格な基準の策定が求められそうだ。

消費者にどう伝えるか


 「日経クロステック」や前述の科学ジャーナリスト・植田氏の問題提起は、極めて正当な主張だ。残念なのは、消費者にそうした情報が伝わらないことである。

 消費者にとって、どの商品が不適切な研究によるもので、どの商品を選べばよいのかがわかりにくい。一部の消費者団体が届出資料を評価して公表しているが、消費者間の活用は進んでいない。

 今後、第三者による評価が普及し、消費者への啓発が進めば、適切な商品選択につながると期待される。そうした状況が整い出したとき、不適切な論文を用いた企業は消費者からしっぺ返しを食らうことになる。

 ■日経クロステックが指摘した「機能性表示食品の課題」を考察(前)
 https://www.tsuhannews.jp/shopblogs/detail/69594
 
(終わり)

 (木村 祐作)






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