通信販売で「注文した商品が届かない」「定期購入を解約できない」といったトラブルが多発している。そうした消費者被害を防止し、公正な取引の実現と消費者利益を守るための法律として、特定商取引法(特商法)がある。特商法はあらゆる業種を対象とし、企業の規模を問わず適用される。ところが、特商法違反に問われる通販会社は後を絶たない。すべての通販会社が押さえておきたい特商法の基礎を解説する。
ユーザーは「広告」を見て判断
特商法は、「通信販売」「訪問販売」「電話勧誘販売」など消費者トラブルが多い7つの取引類型を対象に、それぞれのルールを細かく定めている。そのうち、通信販売については、主に「広告」に関するルールが中心となる。
訪問販売や電話勧誘販売の場合、突然、商品購入契約の勧誘を受けることから、消費者にとって“不意打ち性”がある。営業マンの巧みなセールストークによって冷静に判断できないまま、強引に契約させられ、その後、「不要な契約だった」と思うこともある。
これに対し、通信販売の場合、消費者は広告を見て、自らが納得した上で申し込むことになる。ネット通販であっても新聞広告であっても、基本的に急かされることもなく、消費者は十分な時間をかけて吟味し、判断できる(ただし、「50%オフ あと15分で終了」と表示し、カウントダウンタイマーによって焦らせる手法も散見される)。
このように通信販売は“不意打ち性”のない点が、訪問販売や電話勧誘販売などと大きく異なる。
一方、消費者にとっては、広告のみが情報源で、注文するかどうかを判断するための材料となる。そこで特商法は、事業者が通信販売を行う際に求められる表示事項や表示方法を細かく定めている。このため、通販会社では特商法の広告に関するルールを十分に理解することが重要となる。
コールセンターでのクロスセル・アップセルは電話勧誘販売
特商法の規制対象となる「通信販売」とは、事業者が新聞・雑誌、テレビ、チラシ、ダイレクトメール、インターネット上のサイトなどで広告を行い、郵便や電話、ネットなどの通信手段によって申し込みを受ける取引のこと。「通販通信ECMO」の読者であるネット通販会社は、当然ながら法の対象となる。
ただし、「電話勧誘販売」に該当するものを除く。ネット通販やテレビショッピング通販などで、消費者が注文で電話をかけた際に、コールセンターのオペレーターが広告にない商品を案内したり、定期購入コースへ引き上げたりする行為は、“不意打ち性”があり、特商法上の「通信販売」ではなく、「電話勧誘販売」に該当する。
電話口での“不意打ち性”のあるクロスセルやアップセルは電話勧誘販売に該当することから、通販会社はこの点について十分に注意する必要がある。
特商法の規制はBtoC取引に適用
特商法は事業者・消費者間(BtoC)取引に適用され、原則として事業者間(BtoB)取引には適用されない。
ただし、零細な個人事業主を狙って、BtoB取引と見せかけて特商法の規制を逃れようとする動きも見られることから、商品・サービスの使用が家庭用(個人用)の場合には、特商法が適用されるケースもある。
特商法の「行政規制」
特商法が定める規律は、大きく「行政規制」と「民事ルール」に分かれる。通信販売の主な行政規制として以下がある(民事ルールは別途解説)。
(1)広告の表示
(2)誇大広告等の禁止
(3)未承諾者に対する電子メール広告の提供の禁止
(4)特定申し込みを受ける際の表示
(5)前払式通信販売の承諾等の通知
(6)契約解除に伴う債務不履行の禁止
(7)顧客の意に反して申し込みをさせようとする行為の禁止
業務停止命令と業務禁止命令
違反行為が認められた場合には、改善を求める行政指導や、法人に対する業務停止命令が行われる。業務停止命令は3カ月間や6カ月間が多く、繰り返し違反などでは12カ月以上となるケースもある。
これに加えて、違反行為を主導した個人には、業務禁止命令が出される。別の通販会社を立ち上げて、同じような行為を繰り返すことを防止するためである。
また、悪質な定期購入商法に対しては、行政指導や行政処分を経ずに、すぐに刑事罰を科すことができる「直罰」規定も設けている。「直罰」規定は、抑止効果を狙った面が大きいとみられる。
特商法違反による行政処分は、事業活動に致命的な打撃を与えるだけでなく、企業イメージを大きく損なう。次回から行政規制の詳細ルールを見ていく。
(つづく)

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