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2025.12.22 コラム

ECのステマ規制対策 景品表示法違反になる「二次利用」の境界線とは?

「インフルエンサーにはPR表記を依頼したから大丈夫」。そう安心していませんか?実は今、その投稿を自社サイトに転載する「二次利用」の不備で、大手企業が相次いで措置命令を受けています。

本記事では、最新の摘発事例を紐解き、どこからが景品表示法違反になるのか、その境界線を専門家の視点で徹底解説します。知らぬ間に法律違反を犯し、大切なブランドを傷つけないために具体的な対策とチェックリストを持ち帰ってください。



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【大手製薬会社の措置命令事例】から学ぶ、「景品表示法・ステマ規制」の基本と違反ポイント 



2025年11月、業界に衝撃を与えるニュースが報じられました。大手製薬会社に対し、消費者庁が景品表示法違反(ステルスマーケティング告示違反)に基づく措置命令を出したのです。この事例は、多くのEC事業者が陥りがちな「二次利用の落とし穴」を浮き彫りにしました。

なぜ「適法な投稿」が違反になったのか? この事例で特筆すべきは、インフルエンサー自身はSNS投稿時に「#PR」等の表記を適切に行っていたという点です。 しかし、問題となったのはその先、事業者がその投稿を自社LP(ランディングページ)等へ「二次利用(転載)」した際の表示でした。

事業者は転載時、元の投稿にあった「PR」等の関係性明示を削除、あるいはトリミングして掲載していました。これにより、LPを訪れた消費者は、それが「企業が依頼した宣伝」であることを認識できず、「第三者の純粋な口コミ」であると誤認する構成となっていたのです。

これが、景品表示法が禁じる「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」と認定されたのです。 



ステマ規制の核心:「事業者の表示」の定義 2023年10月施行のステマ規制(指定告示)は、以下の2要件を満たすものを禁止しています。


1. 事業者の表示であること(事業者が投稿内容に関与している)

2. 一般消費者が判別困難であること(広告であることが隠されている)

EC実務において、対価を支払って依頼したインフルエンサー等の投稿は、すべて事業者の管理下にある「広告」とみなされます。今回の事例が示す教訓は、「SNS上で適法なら終わりではない」ということです。

その素材を自社サイトで二次利用する場合、掲載面が変わるたびに改めて「広告」「プロモーション」といった関係性を明示する義務が生じます。「元の投稿に書いてあるから大丈夫」という理屈は通用しないのです。


 (出典:大正製薬の事例に学ぶ!ステマ規制の落とし穴と対応策|三村小松法律事務所)


「知らなかった」は通用しない。景品表示法違反がもたらす深刻な事業リスク 


EC事業者が最も警戒すべきは、景品表示法が原則として「事業者の故意・過失を問わない」という厳しい法理に基づいている点です。「担当者が知らなかった」「騙すつもりはなかった」という弁明は一切通用しません。

逃げ場のない「措置命令」と社会的信用失墜 違反が認定されると、消費者庁から措置命令が下されます。最も深刻なのは、消費者庁公式サイトでの社名と違反事実の公表です。これはデジタルタトゥーとして半永久的にネット上に残り、検索結果に悪影響を及ぼし続けることで、ブランドへの信頼を根底から覆します。

課徴金と改正法の厳罰化 経済的制裁も強化されています。ステマ告示違反自体は課徴金の対象外ですが、実務上は「No.1」「著しい効果」など根拠のないアピール(優良誤認・有利誤認)を併発するケースが大半です。

この場合、対象売上の3%の課徴金が課されます。 さらに2024年の法改正により、悪質な優良誤認等には100万円以下の罰金(直罰)が新設され、再犯者の課徴金算定率は1.5倍に引き上げられました。安易な広告運用は、利益をすべて吐き出すほどのリスクを孕んでいるのです。


(出典:令和5年改正景品表示法の概要について|消費者庁)


明日は我が身!自社ECサイトを今すぐ守るための「ステマ規制」対策チェックリスト 


行政処分はある日突然やってきます。今回の事例と最新の法運用を踏まえ、EC事業者が直ちに取り組むべき対策をまとめました。


1. 「二次利用」における再表示(最重要) 

今回の事例の核心です。インフルエンサーの投稿を自社LPやバナーに転載する際、元の投稿に「#PR」等の表記があったとしても、転載先のクリエイティブ内で改めて「広告」「プロモーション」等の関係性を明記する必要があります。一般購入者の口コミと混在させず、掲載エリアを明確に区別するデザイン上の配慮も不可欠です。

2. 過去の投稿の「アーカイブ・クレンジング」 

意外な盲点ですが、ステマ規制は施行日(2023年10月1日)以前の投稿であっても、現在消費者が閲覧可能な状態であれば規制対象となります。過去数年分に遡ってインフルエンサー投稿や記事広告を棚卸しし、PR表記が欠落しているものは修正を依頼するか、削除(非公開)する対応を完了させてください。

3. 従業員(中の人)の投稿ルール整備 

社員が身分を隠して自社商品を推奨する行為は、典型的な「なりすまし」型ステマです。個人のSNSで発信する際は、「〇〇社社員です」「#社員の個人的感想」といったタグ付けを徹底させ、就業規則やSNSガイドラインに明記しましょう。

4. 契約書と検収フローの見直し

 外部パートナーとの契約に「ステマ規制の遵守」条項を盛り込みます。特に「二次利用時の表記ルールの遵守」や「違反時の修正対応」を義務付けるとともに、クリエイティブの公開前に法務や管理部門がチェックする検収フローを確立してください。


(出典:「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準|消費者庁)


ステマ対策と景品表示法まとめ

ステマ規制の強化により、EC事業者は「知らなかった」では済まされない局面に立たされています。今回の事例は、SNSでの適法な投稿であっても、自社サイトでの二次利用時には新たなリスクとなることを示しました。

コンプライアンスはコストではなく、顧客との信頼を築くための投資です。目先の売上よりも「透明性」を選ぶことが、長く愛されるブランドへの近道となります。まずは今日からECサイトの再点検を始めていきましょう。




筆者プロフィール情報

  つきみ株式会社  山本 達巳

https://tsukimi.ne.jp/

静岡市出身、関西学院大学卒。留学をきっかけに輸入雑貨のEC事業を開始し、令和元年に独立。

自社アウトドアブランドの展開を経て、令和6年につきみ株式会社を設立。商品ページ作りや広告運用、SNSなどECに関係する領域を幅広く対応しつつ、商品ブランディング支援を行っている。



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