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2025.11.20 通販支援

まだ「治る」「痩せる」と表示してる? 薬機法違反のリスクとEC事業者の対策リスト

表法は対策しているが、薬機法はよく分からない…」その認識は危険です。2025年2月、「糖尿病が治る」という広告で医療機器販売会社の役員が逮捕される事件が発生しました。

本記事では、この薬機法違反事例に基づき、景表法とは比較にならない「逮捕」という刑事罰のリスクと、取引先離反などの深刻な事業リスクを専門的に解説します。EC事業者が即退場を避けるために最低限知るべきNG表現と、今すぐ実行すべき対策チェックリストが分かります。自社の広告表現を即座に見直すきっかけとしてご一読ください。


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薬機法違反で逮捕?EC事業者が陥る誇大広告の罠


2025年2月、医療機器販売会社の役員らが、未承認の医療機器(ブレスレット)について「糖尿病が治る」などと虚偽・誇大な効能をうたい、薬機法違反(未承認医療機器の広告、誇大広告)の疑いで逮捕されました。健康・美容関連商品を扱うEC事業者にとって、これは決して他人事ではありません。


多くのEC事業者は「景表法」(景品表示法)のリスク(課徴金など)は意識しても、薬機法違反が「逮捕」という刑事事件に直結するリスクを軽視しがちです。しかし、薬機法の根本的な目的は、景表法の「公正な取引」の確保とは異なり、「国民の保健衛生の向上」にあります。


消費者の生命・身体に直接影響を及ぼす可能性があるからこそ、広告には極めて厳格な規制が課されているのです(※出典1)。



EC事業者が今回の「薬機法違反・逮捕」を「自分事」とすべき最大の理由は、薬機法の広告規制(第66条、第68条など)の対象が「何人も」と規定されている点にあります(※出典2)。


これは、商品の製造メーカーだけでなく、広告代理店、アフィリエイター、そして商品を販売するEC事業者自身も規制対象となり得ることを意味します。「メーカーから提供された素材をそのまま使っただけ」という言い訳は一切通用しません。

今回の逮捕容疑は、薬機法違反の中でも特に重い類型です。


一つは「第68条(承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止)」です。EC事業者が扱う「健康食品」や「雑貨(美容機器など)」は、医薬品・医療機器としての承認を得ていません。これらについて、あたかも病気の治療・予防ができるかのような「医薬品的」な効能効果(例:「糖尿病が気になる方へ」「ガンに効く」)をうたった瞬間、その商品は「未承認の医薬品・医療機器」とみなされ、第68条違反が成立します(※出典3)。


もう一つは「第66条(誇大広告等)」です。これは、医薬品等の効能効果について、虚偽または誇大な広告を禁じる規定です。「糖尿病が治る」「シミが完全に消える」といった治癒・完全性を保証する表現や、「医師の推薦」によって効果を保証するような表現は、たとえ承認された製品であったとしても、その承認範囲を著しく逸脱する「誇大広告」の典型とみなされます(※出典4)。

健康・美容関連のEC事業者は、自社のLP、メルマガ、SNSのすべてにおいて、薬機法違反が「行政処分」を超え、「逮捕」に直結するリスクを再認識し、即座に広告表現を全件チェックする必要があります。


逮捕は他人事ではない。「薬機法違反」がもたらす事業存続の深刻なリスク


EC事業者は、薬機法違反のリスクを「景表法違反(課徴金)」と同列に考えてはいけません。薬機法違反がもたらす最大のリスクは、事業の「即時停止」に繋がりかねない刑事罰、すなわち「逮捕」です。


今回の医療機器販売会社の事例のように、第66条(誇大広告)または第68条(未承認医薬品等の広告)に違反した場合、「2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金(またはその両方)」という刑事罰が科される可能性があります(※出典2)。


逮捕は、行政指導や課徴金命令とは異なり、経営者や担当者の身柄が拘束され、即座に事業の継続が困難になります(※出典5)。

もちろん、刑事罰とは別に、行政処分も存在します。違反広告の中止や再発防止を命じる「措置命令」のほか、2021年8月には第66条(誇大広告)に対し「課徴金納付命令」が導入されました(※出典6)。


注目すべきは、景表法の課徴金算定率が「売上の3%」であるのに対し、薬機法は「違反対象商品の売上額の4.5%」と、より重く設定されている点です(ただし、対象売上が5,000万円未満等の場合は適用除外となる場合があります)(※出典7)。

しかし、法的な罰則以上にEC事業者が恐れるべきは、事業の「死」に直結するリスクです。「医療機器販売会社 逮捕」といった事実はデジタルタトゥーとして永久に残り、ブランドは回復不可能なまでに毀損します。SNSで「#薬機法違反」などのハッシュタグと共にネガティブな情報が拡散し、炎上するリスクも避けられません。

さらに深刻なのは、取引先・関係先の一斉離反です。薬機法違反(特に逮捕)という事実は、決済代行会社、モール運営者、広告代理店、そしてアフィリエイターやインフルエンサーからの信用を完全に失うことを意味します。自らへのリスク波及を恐れた彼らは一斉に提携を解除し、EC事業者は販売チャネルの多くを失うことになります。


明日は我が身!EC事業者が即時実行すべき「薬機法」広告チェックリスト

薬機法違反による「逮捕」リスクを回避するため、EC事業者は自社サイト、LP、SNS、アフィリエイト広告のすべてを対象に、即時の「薬機法チェック」が必要です。以下の緊急診断リストを確認し、該当する表現は即時修正してください。


【即時実行】薬機法コンプライアンス 緊急自己診断チェックリスト

1.「病名」と「治癒」の表現(最重要・即時修正)

  • 「糖尿病」「高血圧」「アトピー」などの具体的な病名を記載していないか?
  • 「治る」「完治する」「(シミが)消える」といった、治癒・完全性を保証する断定的な表現を使用していないか?
  • 健康食品や一般化粧品に「予防」という言葉を使用していないか?


2. 健康食品(サプリメント)の表現

  • 「疲労回復」「老化防止(アンチエイジング)」「免疫力向上」など、医薬品的な身体機能の増強をうたっていないか?
  • 「飲むだけで痩せる」など、食品の範囲を超えた痩身効果をうたっていないか?


3. 化粧品・医薬部外品の表現

  • 一般化粧品で、厚労省が認める「54の効能効果」(例:「肌にうるおいを与える」)を逸脱していないか?
  • 医薬部外品(薬用化粧品)で、承認された範囲(例:「ニキビを防ぐ」)を超えた効果をうたっていないか?


4. 医療機器・雑貨の表現

  • 未承認の器具(雑貨)に、「血流改善」「リンパの流れを良くする」など、医療機器的な効果をうたっていないか?


5. 専門家の推薦・体験談

  • 「医師が推薦」など、専門家が効果を「保証」しているかのような表現になっていないか?
  • 「○kg痩せた」「(病気が)治った」など、効果を断定・保証する体験談を掲載していないか?


6. 広告・アフィリエイト管理

  • アフィリエイターやインフルエンサーに対し、薬機法ガイドラインを配布し、監視体制を整えているか?


薬機法違反のリスクとEC事業者の対策まとめ

医療機器販売会社の逮捕事例が示すように、健康・美容関連のEC事業において薬機法違反は、景表法違反とは比較にならない「逮捕」という事業存続の危機に直結します。「知らなかった」「メーカーの素材を使っただけ」という言い訳は通用しません。自社サイトや広告で「治る」「痩せる」といった断定表現や、病名を記載していないか、本記事のチェックリストを元に即座に全件確認し、コンプライアンス体制を再構築することが急務です。




【出典・参考文献】

(※出典1)医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律の概要|厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/content/001424957.pdf

(※出典2)薬機法の広告規制|国民生活センター

https://www.kokusen.go.jp/wko/pdf/wko-202509_09.pdf

(※出典3)健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について|消費者庁

https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/extravagant_advertisement/assets/representation_cms213_230131_01.pdf

(※出典4)「医薬品等適正広告基準」の解説及び留意事項等について|厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/0000179263.pdf

(※出典5)ステラ漢方の従業員など6人逮捕 「肝臓疾患の予防に効果」の表示で薬機法違反の疑い|日本ネット経済新聞

https://netkeizai.com/articles/detail/1345

(※出典6)薬機法改正 ~医薬品等の虚偽・誇大広告等による課徴金制度の創設~|松田綜合法律事務所

https://jmatsuda-law.com/legal-note/2021-8-3/

(※出典7)薬事法広告研究所 Web サイト

https://www.89ji.com/keihyou-guide/administrative_monetary_penalty.html

https://www.89ji.com/guide/administrative-guidance.html#i-5



筆者プロフィール情報

  つきみ株式会社  山本 達巳

https://tsukimi.ne.jp/

静岡市出身、関西学院大学卒。留学をきっかけに輸入雑貨のEC事業を開始し、令和元年に独立。

自社アウトドアブランドの展開を経て、令和6年につきみ株式会社を設立。商品ページ作りや広告運用、SNSなどECに関係する領域を幅広く対応しつつ、商品ブランディング支援を行っている。





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