2025.10.10 ECモール
フードロス削減へ!産直ECも企業連携で参画
政府が「フードロス」削減に注力するのに伴い、企業でも機運が高まっている。廃棄される規格外の果物や製品加工過程で生まれる食品廃棄物を活用したプロジェクトを立ち上げ、食品ロス削減と生産者支援に挑む。複数の企業が連携し取り組んでいるのが特徴で、産直ECサイトも競合先やメーカー、コンビニなどとのコラボを通じて社会的課題の解決に踏み出す。
政府が大幅なフードロス削減目標を設定
本来は食べられるのに捨てられてしまう食品を指す「フードロス」は「SDGs」の項目にも盛り込まれ、国際的な解決課題に挙がっている。 環境省が発表した2022年度における国内のフードロス量は前年を下回ったものの、年間で約472万トンにのぼった。
政府は30年度までに、フードロスの総量を00年度と比べて半減させる目標を掲げる。実現には食品の製造や卸、小売、外食産業など多岐にわたる企業の協力が不可欠なため、昨今では複数企業が連携してフードロス削減に取り組む動きが目立ち始めた。
キリン主導のプロジェクトに産直EC2サイトが参画
キリンビールが立ち上げた企業横断型の「モッタイナイ!を、おいしい!にプロジェクト」に、オイシックス・ラ・大地とビビッドガーデンが参画した。25年4月に3社合同で発表したもので、前者は「Oisix」、後者は「食べチョク」と、いずれも農家などの生産者と消費者をつなぐECサイトを運営する。企業の壁を越え各社の強みを生かしながら協働することで、果実のフードロス削減と果実農家支援を目指す。
キリンビールは食用できるうえ美味しいにもかかわらず、規格の問題で廃棄される果実を「モッタイナイ果実」と命名。24年5月にこれら果実を活用した「氷結®mottainaiプロジェクト」を発足させ、第一弾として「氷結®mottainai 浜なし」を限定発売した。
各社の強みを生かして協働(出典:キリンビール)
横浜市の特産ブランドである「浜なし」の規格外品を原料として使用した缶チューハイで、1本につき1円を農業支援に活用。一般の氷結商品より数円高いにも関わらず、1週間のうちに完売となった。10月には第二弾の「氷結®mottainai ぽんかん」を発売したところ、初日で販売目標の18万ケースを突破した。
社会貢献というコンセプトに共感が得られたとみられ、約3.4万個の「浜なし」および約31万個の「ぽんかん」の「モッタイナイ果実」削減につながった。24年の農家への合計寄付金額は約1,165万円となり、苗の購入など果物の継続的な生産に活用してもらう。
予想を超える勢いで完売(出典:キリンビール)
「Osix」と「食べチョク」も「モッタイナイ果実」を活用
キリンビールが重視するのが、企業や団体などが集合的な形で社会課題に取り組むことで成果を生み出す「コレクティブインパクト」の創出だ。「モッタイナイ!を、おいしい!にプロジェクト」では自社だけでなく連携する企業などがそれぞれの強みを生かし、プロジェクト全体の成果をより高めていく狙いがある。
タッグを組む「Oisix」は創業時からフードロス問題に向き合い、不ぞろいだったり自然災害を受けたりした規格外野菜を積極的に販売。見栄えなどから廃棄されていた食材に新たな価値を付けて生まれ変わらせる「食のアップサイクル」にも取り組む。プロジェクト参画後は自社のミールキット「Kit Oisix」に「モッタイナイ果実」を使った商品を開発し、年内の販売を目指す。
「食べチョク」もこれまで、災害時に生産者を応援できるチケットの販売や、SDGsに貢献する生産者が育てた食材の企業への提供など、食品ロスに対する施策を展開してきた。今後は規格外品の販売・試食を行うマルシェ開催や、規格外品特設サイトの公開を実施。生産者ネットワークや自社冷凍食品ブランドで培った商品開発力などを活用し、プロジェクトコラボ商品の販売に着手する。
キリンビールは、「Oisix」と「食べチョク」が取引する果実農家の「モッタイナイ果実」を使った「氷結®mottainai」コラボ商品を年内に発売したい考え。27年までのプロジェクト目標として、約100軒の生産者参画を想定。両ECサイトの販路を通じて約1,200万人のユーザー参加を目指し、年間250トンの「モッタイナイ果実」を救う計画だ。
培った生産者ネットワークを活用する(出典:ビビッドガーデン)
「Kuradashi」は「かくれフードロス」に着目
日本酒の絞り粕やワインの澱(おり)など食品加工過程で生まれる食品廃棄物、いわゆる「かくれフードロス」の削減に着手したのが、食品ロス対象商品を扱うECサイト「Kuradashi」を運営するクラダシだ。これまでは規格外や賞味期限間近な商品、パッケージに傷や汚れがある“わけあり商品”を扱うなど、主に顕在化したフードロスの削減を手がけてきた。
このほど、従来の“わけあり商品”の上流で発生し、年間で約1,760万トンに及ぶ食品残渣などの「かくれフードロス」に注目。こういった未利用素材を使って新たな商品を開発する「THE GREEN TABLE」プロジェクトを25年4月から始動した。本来であれば捨てられてしまう食品廃棄物を新素材として定義し、食の専門家とマッチングさせることで、新たな価値を持つ商品を生み出す。
第一弾として、 著名パティシエ2人が「かくれフードロス」素材で作った極上スイーツを展開するブランド「GREEN DOLCE」を5月に数量限定で予約販売。一回目のテーマは「お酒に関連する未利用素材」で、利用するのは清酒製造工程後に残った搾りかすである酒粕と、タンニンやポリフェノールなどワイン熟成中に結晶化し沈殿した澱(おり)となる。
「かくれフードロス」を使った商品開発プロジェクトを始動(出典:クラダシ)
さらに4月からは、相手の住所や電話番号を知らなくてもオンライン完結でギフトを送れるeギフトサービス「Kuradashi e-gift」を開始。送り主だけでなく受け取る人も環境に貢献できるサービスの導入により、さらなるフードロス削減を目指す。
同サービス開始に合わせて、Kuradashiオリジナルギフト商品の企画開発にも着手。規格外果実を丸ごとドライフルーツにしたサングリア原料や、小ぶりで市場に出回る機会がなかった黒毛和牛の赤身部分を使った“モッタイナイ”ローストビーフなどを販売する。
大手コンビニECサイトでの限定販売が好調
フードロス削減の加速に向けてクラダシがさらに進めたのが、価値観が一致する大手コンビニエンスストアとの連携だ。
2025年3月に、ローソンの「ローソンオンラインギフト」内にある「もったいない」コーナーに「Kuradashi」の商品を出品。形の悪さや水揚げ量の少なさから廃棄されてしまう「未利⽤⿂」を使った海の幸セットや黒毛和牛福袋などのわけあり商品をギフトとして販売し、“もったいない”の想いを広く伝えていく。余剰食品の抑制や値引による商品売り切り、フードバンクへの食品提供など、さまざまな取り組みを手がけるローソンと価値観が一致した。
同様に4月には、ファミリーマートが運営する「ファミマオンライン」で「Kuradashi」商品の販売を始めた。第1弾として、賞味期限が短かったりパッケージが傷ついたりした加工食品やスイーツ、飲料商品などを20点以上詰め合わせた、通常価格の半額以下となる「ロスおたすけセット」を出品。「Kuradashi」では毎月定期購入で提供するセットで、ファミマオンライン限定で1回から購入できるようにした。
200セット限定で出品したところ、即日で完売。5月にも「ロスおたすけセット」を500セット限定で販売し、ほかにも商品ラインナップの拡充を検討していく。売上の一部は「クラダシ基金」として、地方創生や食育の支援などに活用する。
ファミリーマートもフードロス削減に注力し、商品の「てまえどり」推奨や規格外食材を使用した商品開発、家庭で余った食品を店頭で回収し福祉団体などに寄付する「フードドライブ」の運営などを行っている。
5月に第二弾を500セット販売する(出典:ファミリーマート)
まとめ
不ぞろいな野菜・果物や流通しにくい魚・肉、パッケージが傷ついた商品などの規格外品は意図せず生まれ出荷量も安定しないことから、計画的・継続的に販売するのは難しい。こういった品へのフードロスの取り組みは1社だけでは困難なため、競合相手や異業種であっても価値観や志を同じくする企業と組むことが「正道」になりそうだ。
企業同士が連携し第一次産業やNPO、自治体などと協働することで、消費者も巻き込み、より大きな成果創出を見込める。これだけ重要な国際的課題を解決するには、従来の枠にとらわれない大胆かつ繊細な打ち手が必要といえよう。
執筆者/渡辺友絵
【記者紹介】
渡辺友絵
長年にわたり、流通系業界紙で記者や編集長として大手企業や官庁・団体などを取材し、 通信販売やECを軸とした記事を手がける。その後フリーとなり、通販・ECをはじめ、物 流・決済・金融・法律など業界周りの記事を紙媒体やWEBメディアに執筆している。現在 、日本ダイレクトマーケティング学会法務研究部会幹事、日本印刷技術協会客員研究員 、ECネットワーク客員研究員。
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