2018.05.10 通販系書籍
ネット通販は「物流」が決め手!
通販会社の業務を大きく分けると、広告などの販促活動から商品購入に至るまでの「マーケティング」と、消費者が購入を決めてからの受注・決済~商品到着までの「フルフィルメント」の2つがある。本書は後者の「フルフィルメント」に特化した書籍で、200社以上の通販企業の立ち上げや物流受託に携わった経験を持つ(株)スクロール360取締役の高山隆司氏が、物流はネット通販の成功の鍵であり、物流を重視した取り組みが他社との差別化につながると説いている。
高山氏は同書で「ネット通販における物流は単なる在庫管理や受注・発送業務ではなく、ネット上のバーチャルなやり取りが具体的な商品の動きに代わる重要な顧客接点」としている。ネット通販での物流は、店舗の接客と同じような位置づけと考えていいだろう。
ネット通販を「桶の理論」に例えた説明がわかりやすい。桶は何枚かの板を組み合わせて作られており、板の高さが揃っていないと、一番低い個所から水がこぼれ出てしまう。ネット通販の各業務を桶の板とすれば、プロモーション・サイト設計・物流などは1枚の板で、いくら優れたプロモーションを実施したり売れるサイトを構築したとしても、配達が遅くなったり梱包が乱雑になるなど、物流の基準が低ければ桶から水が溢れ、物流のミスがネットショップ全体の評価になってしまうこともある。逆に言えば、物流はネット通販にとって、コストを抑えるだけでなく顧客の期待を裏切らない、ブランド構築につながるということだ。
また、売上と粗利だけ見ているとつい見逃しがちな在庫処理の損失や倉敷料など、「物流にはネットショップ経営上のヒントが数多く秘められている」とし、その上で同氏は「マーケティングとフルフィルメントの連動が大事」と説明している。
本書では、ネットショップの創業から年商10億円までを4段階(創業期・育成期・成長期・安定期)に分け、発展段階に応じた課題を紹介。ショップの発展段階に応じた課題に適切に対応することが、失敗を回避し、着実なステップアップにつながるという。また、ネットショップが把握すべき経営数値として、成長の4段階ごとの収支モデルを公表。年商10億未満の会社にとっては、これだけでも貴重な情報だ。
本書はどちらかというと、これからネット通販を始める新規参入企業や、年商10億未満の成長過程の企業に最も適している内容。ただ、スクロール360の手法を交えた物流の倉庫作業(ウェアハウジング)の流れについて、入荷から出荷までわかりやすく解説している点や、ネット通販の歴史や今後の展望についても触れており、物流や通販の知識を深めたい業界人にはお勧めの一冊となっている。
【著者プロフィール】――――――――――――――――――――――――――――――
高山 隆司(たかやま・りゅうじ)
(株)スクロール360 取締役オムニチャネル戦略室長
1981年スクロール(旧ムトウ)入社後、34年にわたり通販の実務を経験。2008年、通販企業をサポートするスクロール360設立に参画。以後、200社を超える通販企業の立ち上げや物流受託を統括。2014年からはオムニチャネル戦略室長として、他社のオムニチャネル戦略設計のコンサルティングに従事している。
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