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2026.07.07 調査・統計

ECアナリストによる解説シリーズ 『このデータが面白い!』 第9回:年代別での「EC利用率」の実態を知る

(株)デジタルコマース総合研究所代表の本谷(もとたに)と申します。ECアナリストによる解説シリーズ『このデータが面白い!』の連載も、今回で9回目となりました。今回のテーマは「年代別のEC利用率」です。

若い人はECを当たり前のように使う一方で、シニア層は対面を重視するあまり、ECそれほど使わないのではと思っている方は多いでしょう。しかし総務省発表の最新のデータを見るとそういうことでもないようです。今回は年代別での「EC利用率」の経年推移や、そのEC利用率に基づき独自に算出してみた「推定EC人口」について解説させて頂きます。さらに2035年のEC人口も予想してみました。それでは具体的に見てみましょう。



・対象データ
総務省統計局「通信利用動向調査」
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/statistics05.html


■前回記事

ECアナリストによる解説シリーズ『このデータが面白い!』 第8回:商品検索におけるAI活用の実態を知る


EC利用率の推移と高齢層への普及

年代別のEC利用率を見ると、20代から40代はもともと利用率が高く、2019年時点でもすでに6~7割台に達していました。そのため2025年までの伸びは比較的緩やかで、高水準で安定している状況といえます。

一方で、50代から70代にかけては2019年と比較して大きく上昇しています。特に50代は60%前後から70%台へ、60代は4割弱から6割台へ、70代も2割台から4割台へと拡大しており、中高年層にもEC利用が着実に浸透していることが分かります。全体としてEC利用は若年・現役世代を中心とした段階から、より幅広い年代へ広がる段階に移行していると考えられます。

20~40代は既にEC利用率が高く、大幅な伸びは期待しにくい一方、50代以上では利用率が大きく上昇しており、市場拡大を支える存在となっています。今後は高齢層でも利用しやすいUIや決済・配送サービスを充実させることが、さらなるEC市場の成長につながるのではないでしょうか。



ECでの決済手段の多様化とキャッシュレス化の進展

ECにおける決済手段を見ると、クレジットカードは2015年の65.0%から2025年には79.7%へ上昇しており、一貫して最も利用されている決済方法です。また電子マネーも3.8%から45.8%へと大きく伸びており、キャッシュレス決済の普及がEC市場にも広がっていることが分かります。ネットバンキングも長期的には利用が増加しており、決済手段が多様化しています。

一方、コンビニ決済は30%台半ばで推移しており、大きな増減は見られません。また金融機関の窓口・ATM決済は20%台前半で横ばい、代金引換は36.6%から15.2%へと大幅に低下しています。EC市場では、現金を介する決済からオンラインで完結するキャッシュレス決済への移行が着実に進んでいることが読み取れます。

EC市場では利便性や決済の迅速性を重視する消費者が増え、クレジットカードや電子マネーなどキャッシュレス決済の利用が拡大しています。一方、代金引換は大きく減少しており、今後はデジタルウォレットやスマートフォン決済など、より利便性の高い決済手段の普及が一層進むと考えられます。


SNS利用率の拡大と成長の成熟化

総務省の「通信利用動向調査」はECに特化した調査ではなく、個人のネット利用に関する様々なデータが記載されています。そのひとつにSNSの利用率が記載されているので見てみましょう。2019年以降、SNS利用率は一貫して上昇していますが、特に2020年から2021年にかけて大きく伸びています。これは新型コロナウイルス感染拡大により外出機会が減少し、情報収集やコミュニケーション、娯楽の手段としてSNSの利用が急速に拡大したことが背景にあると考えられます。

その後、感染症が落ち着いた2022年以降も利用率は緩やかな上昇を続けており、SNSが一時的な利用拡大ではなく、生活に定着したことがうかがえます。一方、2025年の伸びは前年と比べて小幅にとどまっており、普及率は高い水準に達し、市場は成熟局面へ移行しつつあることが読み取れます。今後は利用者数の増加よりも、動画コンテンツやライブ配信、ソーシャルコマースなど、SNS上での滞在時間や購買行動をいかに拡大するかが、事業者にとって重要なテーマになると思われます。


ネットオークション・フリマアプリ利用率の伸びが鈍化

ネットオークション・フリマアプリの利用率についても見てみましょう。2019年から2021年にかけて上昇しており、特にコロナ禍では、自宅にいながら売買できる利便性や、副収入への関心の高まりなどを背景に利用が拡大したと考えられます。

しかし、2022年以降は伸びが緩やかとなり、2023年以降は利用率がほぼ横ばいで推移しています。2025年も前年からの変化は限定的であり、大幅な利用者増加は見られません。フリマアプリは日常的なサービスとして定着した一方で、新規利用者の拡大は一巡し、市場全体は成熟段階に入りつつあることがうかがえます。

ネットオークション・フリマアプリは利用者数の拡大よりも、既存利用者の取引頻度や取扱商品の拡大が成長の鍵となる段階に入っています。今後はリユース需要の拡大やAIを活用した出品支援、真贋保証などにより、利用者の利便性や安心感を高める取り組みが重要になるでしょう。



2035年にはEC人口は今より750万人増加と予想

最後に、今後のEC市場を展望してみましょう。結論から言うと、私は人口減少が進む日本においても、EC利用人口は今後増加する可能性があると見ています。そのように考えるキーワードは「行動様式」です。

ECで買い物をすることは、一時的な流行ではなく生活に根付いた行動様式であり、一度利用が定着した世代は高齢になってもその利用習慣を維持する可能性が高いと考えられます。

ここで、2025年から数えて10年後の2035年を想像してください。行動様式が変わらないと仮定すれば、2025年時点の年代別EC利用率がそのまま2035年の各年代へ移行するでしょう。その結果、高いEC利用率が高齢層にも広がり、社会全体のEC利用人口は着実に増加していくと見込まれます。

2025年時点でEC利用人口は推定で約7,100万人です。10年後の2035年ですが、年代別利用率の上昇や世代交代、人口の自然減などを踏まえると、EC利用人口はトータルで約750万人増加すると私は試算しています。EC利用者の裾野が広がることで市場規模の拡大が期待され、EC市場は今後も日本の消費を支える重要な販売チャネルとして持続的な成長が見込まれます。

これは将来のEC市場を予想する上で明るい材料です。この予想を信じ、微力ながら私もEC市場、EC業界の発展に寄与し続けたいと思っています。



以上


【筆者プロフィール】

本谷 知彦(もとたに ともひこ)

株式会社デジタルコマース総合研究所 代表取締役  ECアナリスト


シンクタンク大和総研にて国内外の産業調査・コンサルティング業務にチーフコンサルタントとして従事。EC業界のスタンダードな調査レポートである経済産業省の電子商取引市場調査を2014年から2020年にかけて7年連続で責任者として手掛ける。その他日本政府の調査研究案件の実績多数。

2021年末に同社を退職し2022年初に株式会社デジタルコマース総合研究所を設立。EC市場の調査研究はもとより、豊富なデータに基づいた消費財のマーケット分析や事業戦略のアドバイス、および講演・執筆活動等を行っている。






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