2026.05.08 コラム
ECアナリストによる解説シリーズ 『このデータが面白い!』 第7回:Amazonの決算から同社の事業実態をひも解く
ECMOにてECアナリストによる解説シリーズ 『このデータが面白い!』を連載させていただいている(株)デジタルコマース総合研究所代表の本谷(もとたに)と申します。ECアナリストによる解説シリーズ 『このデータが面白い!』の連載を開始させていただき、今回で7回目となりました。今回のデータは米国Amazon本社発表の決算データです。
毎年2月初めに、米国Amazonはグローバルでの年度決算を発表し、同時にアニュアルレポートを公開します。このなかにはとても興味深い同社のデータが掲載されており、同社の実態を知るうえで重要な情報となっています。またアニュアルレポートには日本事業の売上高も発表されています。細かい事業別での数値までは発表されていませんが、日本事業の状況を理解するうえで重要なデータです。
当コラムでは、このアニュアルレポートに記載のデータの中から、私が特に注目しているデータについて解説を交えながら紹介したいと思います。それでは具体的見てみましょう。
・対象データ
米国Amazon本社発表の2025年の決算データ(アニュアルレポートより)
※以下のURLから2026年2月6日付Annual Report(Form 10-K)を参照
https://ir.aboutamazon.com/sec-filings/default.aspx
■前回記事
ECアナリストによる解説シリーズ 『このデータが面白い!』 第6回:ネット広告費の統計データを細かく掘り下げてみる
全世界売上高は日本円で110兆円とトヨタ自動車の2倍以上
はじめにAmazonの全世界売上高について見てみましょう。2025年の売上高は7,169億USドル、日本円で約110兆円と想像を絶する巨大な規模です。2017年が1,779億USドルですので、8年でちょうど4倍に拡大した計算になります。
ちなみにトヨタ自動車の2026年3月期の全世界売上高見通しは50兆円です。Amazonの売上高はトヨタ自動車の2倍以上というわけです。いかにAmazonの売上高が巨大であるか理解できるでしょう。
なお、売上高を分母、営業利益を分子とした「売上高営業利益率」は11.16%です。2022年に2.38%に落ち込みましたが、その後回復しており2024年には二桁台に乗せました。諸々の要因で最終利益が赤字になった期が過去にありましたが、本業の利益面では堅調であると思われます。
参考までに、米国小売大手のWalmartの全世界売上高と比較してみたところ、2025年にAmazonが逆転したことがわかりました。両社は売上の構成比が異なるため、一概に単純比較するのはやや無理があるのですが、実店舗を多く抱えるWalmartをEC事業中心のAmazonが抜いたというのは、やはり大きなインパクトがあるように思えます。
https://stock.walmart.com/financial-information/financial-results
自社ECよりもマーケットプレイス分野へ注力
Amazonの全世界売上高が巨大であると述べましたが、実は注意点があります。その売上高はECが全てではなく、「自社EC売上」「サードパーティ手数料」「AWS」「広告売上」など複数の事業分野に分かれているという点です。この点は誤解のないよう理解しておきたいとこです。
次のグラフは2019年時点と2025年時点での、各事業分野の売上構成比率について比較したものです。この比較から次のことがわかります。
- 各事業分野のなかで自社EC売上の比率がトップであるが、その比率は下落している
- 代わってサードパーティ手数料比率が上昇している
- AWSと広告売上の比率が上昇している
このなかで、自社EC(いわゆるファーストパーティ)よりもサードパーティ手数料の比率が上昇している点について、特に私は着目しています。自社ECを伸ばすには相応の経営リソースと在庫リスクを抱える必要があります。そのようなことからサードパーティ、すなわちマーケットプレイス分野に近年同社は力を注いでいるのではと私は見ています。
実はAWSが利益の「稼ぎ頭」
2019年時点では、AWSの売上高は全体の12.5%でした。しかし2025年時点では全体の18.0%にまで上昇しており、年を追うごとにAWSの存在感が強くなっています。ここで興味深いデータを説明させてください。AWSの売上高営業利益率と〝AWSを除く〝売上高営業利益率を計算し、その推移をグラフ化してみたところ次のようになりました。
AWSの利益率は2025年時点で35.43%という非常に高い数値です。一方でAWSを除いた場合は5.84%となり、両者には30%もの乖離があることがわかります。これは一時的なことではなく、グラフの通り長年にわたり同様の状態となっています。Amazonでは実はAWSが利益の「稼ぎ頭」になっていることが、このデータでよく理解できます。
米国の売上高が全世界の3分の2を占める
続いて売上高を国別に分解してみてみましょう。全世界売上高7,169億USドルのうち、米国がトップで4,897億USドルとなっています。その比率は68%となりますので、全体の3分の2が米国、残りが米国以外ということです。Amazonはグローバル企業ですが、やはり米国が占める比率が高いということです。
ここで日本について見てみましょう。2017年時点で119億USドルでしたが2025年には307億USドルとなりました。全世界売上高に占める比率を計算すると、2017年時点で6.7%でしたが、2025年時点では4.3%と少し下落しています。日本にはAmazonの他に楽天、Yahoo!ショッピング、ZOZOTOWNといった大型のECモールがあるため、その点が比率の減少に影響しているのかもしれません。
日本事業の成長率は年平均で16.7%
最後に日本について少し詳しく見ておきましょう。前項に記載している日本の売上高は億USドルでの表記です。これを各年の為替レートを適用して日本円に換算しグラフ化してみました。2017年は1兆3,355億円でしたが2025年には4兆5,943億円となっています。この間のCAGR(年平均成長率)を計算すると、16.7%となりました。日本でも毎年高い成長率なっていることがわかります。
なお、一点ご注意いただきたいことがあります。日本の売上高も「自社EC売上」「サードパーティ手数料」「AWS」「広告売上」などによって構成されています。したがって4兆5,943億円がそのままAmazon上での流通総額というわけではないことを、十分ご理解いただければと思います。
Amazon本社から発表される日本に関する数値はこのデータのみであり、詳細は発表されません。参考までに、私は自社ECおよびマーケットプレイスを合算した2025年の日本でのECの流通総額は約6兆円と推計しています。ご参考としていただければ幸いです。
まとめ
いかがでしょうか。Amazonは世界トップのEC事業者ですので、Amazonのグローバルの状況を理解しておくことは、EC業界で身を置くものとしてとても重要であると私は考えています。Amazonが決算発表したタイミングで、様々なメディアがその内容を報じます。しかし報じる内容は、売上高の伸びや利益の伸びといった表面的なことが大半であり、重要な点を見落としてしまっているようにいつも感じています。
本コラムで述べたように、少しだけブレイクダウンして見てみると、Amazonの実態について実に様々なことがわかります。私は年に4回発表されるAmazonの決算発表をいつも楽しみにしています。内容は英語で発表されるため、少し抵抗感を覚える方もいらっしゃるでしょう。私も決して得意ではありませんが、翻訳機能を使えばカンタンに数字を追うことができます。これを機会にぜひチェックしてみていただければ嬉しい限りです。
以上
【筆者プロフィール】
本谷 知彦(もとたに ともひこ)
株式会社デジタルコマース総合研究所 代表取締役 ECアナリスト
シンクタンク大和総研にて国内外の産業調査・コンサルティング業務にチーフコンサルタントとして従事。EC業界のスタンダードな調査レポートである経済産業省の電子商取引市場調査を2014年から2020年にかけて7年連続で責任者として手掛ける。その他日本政府の調査研究案件の実績多数。
2021年末に同社を退職し2022年初に株式会社デジタルコマース総合研究所を設立。EC市場の調査研究はもとより、豊富なデータに基づいた消費財のマーケット分析や事業戦略のアドバイス、および講演・執筆活動等を行っている。
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