2026.04.03 コラム
ECアナリストによる解説シリーズ 『このデータが面白い!』 第6回:ネット広告費の統計データを細かく掘り下げてみる
ECMOにてECアナリストによる解説シリーズ 『このデータが面白い!』を連載させていただいている(株)デジタルコマース総合研究所代表の本谷(もとたに)です。今回のデータは電通発表の「日本の広告費」です。このなかで「インターネット広告媒体費」(※以降「ネット広告費)と記述)に焦点をあてたいと思います。
同社は毎年春に必ずこのデータを発表しています。日本の広告市場のこれまでの経緯や現状を理解することができる貴重な数値ということで、毎年この時期になると私は同社からの発表を楽しみにしています。広告に関する代表的な指標として幅広いメディアで取り上げられていますので、ご存じの方は多いのではないでしょうか。では早速中身を読み解いてみましょう。
・対象データ
日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析(株式会社電通)
https://www.dentsu.co.jp/news/release/2026/0305-011004.html
日本の広告費(同上)
https://www.dentsu.co.jp/news/release/2026/0305-011003.html
(以上は2025年版であり、本コラム作成において過去分を別途使用しています)
■前回記事
『このデータが面白い!』 【第5回】1世帯あたりのEC支出額の変化を知る
2025年のネット広告費は3.3兆円とマスコミ四媒体広告費の1.5倍
はじめに、ネット広告費とマスコミ四媒体合計の広告費の推移を見てみましょう。ここでいうマスコミ四媒体とはテレビ、新聞、雑誌、ラジオを指します。2025年のマスコミ四媒体広告費は2兆2,980億円ですが、ネット広告費は3兆3,093億円と約1.5倍程度の違いがあります。マスコミ四媒体まとめてもネットには太刀打ちできず、1.5倍の規模の違いがあるということです。
経年推移を見てみると、2022年に両者の順序が逆転しその後の差は開く一方であることがひと目でわかります。とはいえマスコミ四媒体広告費も近年は決して大きく下落しているわけではありません。この四媒体はしばしば「オールドメディア」と揶揄されることがありますが、広告費の推移をみると、そこまで落ち込んでいるわけではないことがわかります。
ともあれこのように両者を対比してみると、あらためてネット広告の勢いの強さを視覚的に感じ取ることができます。2019年からの6年で2.0倍に拡大しているネット広告ですが、今後もさらに拡大するのではないでしょうか。
ネット広告は「広告種類別での分類」と「ソーシャルか否かでの分類」に大別
ここでネット広告費の分類について理解しておきましょう。次の図をご確認ください。電通はネット広告費を(A)広告種類別での分類、(B)ソーシャルか否かでの分類に大別しています。前者は成果報酬型広告(いわゆるアフィリエイト)、検索連動型広告、ディスプレイ広告、ビデオ(動画)広告といったように、広告の種類別に内訳が推計されています。
後者のソーシャル系については、SNS広告、動画共有系広告(いわゆるYouTubeなどでの広告)、その他となっています。ソーシャル系合計で1兆3,067億円であり、非ソーシャル系は2兆26億円です。それぞれ異なった切り口で分類された広告費の詳細はどのようになっているのでしょうか?(A)広告種類別での分類の方から見てみましょう。
広告種類別で最も勢いがあるのは「ビデオ(動画)広告」
広告種類別で、最も規模が大きいのは②検索連動型広告です。次いで④ビデオ(動画)広告、③ディスプレイ広告となっています。数字だけ見ると②検索連動型広告が確かに規模は大きいのですが、2019年から2025年までの6年間の伸びは1.9倍です。この値も冷静に考えれば素晴らしい伸び率ではあるのですが、ネット広告費全体の伸び率は2.0倍ですので、それを下回っている点には注意が必要でしょう
一方で最も勢いがあるのが④ビデオ(動画)広告です。2019年は3,184億円でしたが、6年後の2025年には3.2倍の1兆275億円にまで拡大しています。ビジネスでネット広告に携わっておられる方でしたら、肌感覚でビデオ(動画)広告のニーズの高まりを感じているのではないでしょうか。実際このように数字で表れており、今後も当面勢いは継続するものと私は想定しています。
多くの広告主がSNS広告と動画共有系広告へ重心を移し始めている
ではソーシャル系広告費はどうでしょうか。表の通り「SNS広告費」と「動画共有系広告費」が伸びています。前者は2019年から2025年までの6年で2.4倍の伸びです。後者はさらに伸びており、同期間に4.5倍もの伸びとなっています。
ここで、このふたつを合わせた広告費がネット広告費に占める比率を計算してみました。2019年はわずか20.6%に過ぎませんでしたが、2025年委は32.1%にまで至っています。単純計算でネット広告費の3分の1が「SNS広告費+動画共有系広告費」ということです。広告主がSNSやYouTube等への広告に年々重心を移し始めている表れと言ってもよいでしょう。
ECモール系広告費も伸びているがネット広告費全体の伸びと変わらない
最後にECモール系広告費を見ておきましょう。なお電通のリリースでは物販系ECプラットフォーム広告費と称していますが、ここではECモール系広告費と表現します。また電通は同広告費についてはネット広告費に含めず“別物”として取り扱っている点にもご注意ください。
2025年のECモール系広告費は2,444億円となりました。2019年が1,064億円ですので、6年で2.3倍の伸びです。ECモールでの販売を重視している事業者にとって、ECモールの広告は重要な手段であることは間違いありません。実際6年で2.3倍に拡大していますので、間違いなく成長している分野です。
しかしネット広告費に対する比率を計算してみると、2020年以降7%台で推移していることがわかりました。つまり「ECモール系広告費は伸びてはいるが、ネット広告費全体も同じように伸びている」ということです。この点は理解しておいた方がよさそうです。
ちなみにネット広告は購買チャネルとしてECに限定しない広告手段です。したがってECモール系広告費の占める比率が7%台と、1割を下回っている点は納得できます。今後EC化率が上昇すれば、必然的にECモール系広告費もさらに上昇するでしょう。
まとめ
いかがでしょうか。ネット広告に関するメディアの報道は、どちらかというと表面的な内容に終始する傾向があります。しかしながら以上のように詳細を掘り下げてみると、気づかなかった真実を目の当たりにすることができます。
ネット広告が伸びていることは、多くの方が自身の感覚として理解していることでしょう。このように実際の数値をみることで、より実態が鮮明化します。ネット広告について今後どのように向き合えばよいか悩んでいる事業者(広告主)の方は、ぜひこの数値を自分なりに眺めていただければと思います。
以上
【筆者プロフィール】
本谷 知彦(もとたに ともひこ)
株式会社デジタルコマース総合研究所 代表取締役 ECアナリスト
シンクタンク大和総研にて国内外の産業調査・コンサルティング業務にチーフコンサルタントとして従事。EC業界のスタンダードな調査レポートである経済産業省の電子商取引市場調査を2014年から2020年にかけて7年連続で責任者として手掛ける。その他日本政府の調査研究案件の実績多数。
2021年末に同社を退職し2022年初に株式会社デジタルコマース総合研究所を設立。EC市場の調査研究はもとより、豊富なデータに基づいた消費財のマーケット分析や事業戦略のアドバイス、および講演・執筆活動等を行っている。
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