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2026.03.27 コラム

定期購入の「ダークパターン」で業務停止命令も!EC事業者が見落とす特定商取引法違反と最終確認画面の落とし穴

「うちは初回価格もちゃんと書いているし、解約ページも用意している。定期購入の表示は問題ないはず……」。そう思っているEC事業者の方、その認識は危険かもしれません。2022年6月に改正特定商取引法が施行されて以降、消費者庁は「ダークパターン」と呼ばれる消費者を誤認させるUI設計への取締りを急速に強化しています。定期購入に関する相談件数は2024年度で約8万9,000件と高止まりが続き、2024年3月以降の行政処分は8案件に上ります。この記事を読めば、最新の違反事例と、自社サイトを今すぐ守るための具体的な対策がわかります。

(出典:通信販売での定期購入に関する相談件数|国民生活センター)



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定期購入の「ダークパターン」とは?行政処分の急増から学ぶ特定商取引法の違反ポイント

「ダークパターン」とは、消費者が気づかないうちに不利な判断をしてしまうよう誘導するウェブデザインのことです。ECサイトにおける定期購入では、初回価格だけを目立つように大きく表示して継続条件を小さな文字で隠す、解約手続きを意図的に複雑化するといった手法が該当します。


消費者庁は2023年9月に取引対策課内に「デジタル班」を設置し、AI技術やデータ分析を活用したECサイトの自動スクリーニング体制を構築しました。違反の疑いがあるサイトを機械的に検出し、注意喚起から行政処分まで段階的に対応する仕組みです。この体制の強化が転換点となり、2024年3月以降、定期購入関連の行政処分が急増しています。


特に注目されたのが、美容液の定期購入を行っていた中堅EC事業者2社に対する業務停止命令(6か月)です。両社は「購入回数の縛りなし」「いつでも解約可能」と大きく表示しながら、実際の解約手続きではチャットボットが介入し、解約意思を翻す誘導を行っていました。さらに、最終確認画面には2回目以降の価格と解約条件が十分に表示されておらず、改正特定商取引法第12条の6(通信販売における申込み段階の表示義務)に基づく違反として認定されました。

 

(出典:通信販売における"最終確認画面"について|消費者庁)


見逃してはならないのが、消費者庁が2024年4月から12月までの9か月間で約1,159件の注意喚起通知を事業者に送付しているという事実です。行政処分に至る前の段階で、すでに多くのEC事業者が消費者庁の監視下に置かれていることを意味しています。


2024年以降の処分11案件中10案件が、「誇大広告」と「最終確認画面の表示義務違反」のセットで認定されています。つまり、広告表現と最終確認画面の両方が同時に審査されるのが、現在の執行トレンドなのです。

(出典:改正特商法施行から3年、2025年も続く通販定期購入への厳しい法執行|compliance-ad.jp)


「知らなかった」は通用しない。定期購入の特定商取引法違反がもたらす深刻な事業リスク

改正特定商取引法に違反した場合、EC事業者が直面するリスクは行政処分にとどまりません。


まず行政処分として、業務改善指示、最長1年の業務停止命令、さらに役員個人への業務禁止命令が段階的に科されます。業務停止命令を受ければ、その期間中は新規の注文を一切受けられなくなり、事業の存続そのものが脅かされます。


刑事罰も見逃せません。最終確認画面で消費者を誤認させる表示を行った場合、100万円以下の罰金が科されます。さらに業務停止命令に従わなかった場合には、個人は3年以下の懲役または300万円以下の罰金、法人には3億円以下の罰金という重い罰則が待っています。

 

(出典:通信販売での定期購入に関する相談件数の推移|国民生活センター)


信用の失墜も深刻です。消費者庁の行政処分情報は公式サイトに原則5年間掲載され続けます。企業名で検索すれば処分歴がすぐに表示される時代において、一度の処分がブランドイメージに与えるダメージは計り知れません。ECモールでは、行政処分を受けた事業者に対してアカウント停止や出店取消といった独自の措置を行うケースも報告されています。


そして、行政処分には時効がありません。過去の違反であっても、発覚すれば処分の対象となるのです。「今まで大丈夫だったから」という安心感は、何の保証にもなりません。

(出典:令和3年特定商取引法・預託法の改正について|消費者庁)



明日は我が身!定期購入の最終確認画面における表示義務と対策チェックリスト

改正特定商取引法では、最終確認画面に以下の6項目を表示することが義務付けられています。1つでも欠けていれば法違反です。自社サイトを今すぐ確認してください。

最終確認画面の6つの表示義務 

分量:各回の商品数量と引渡しの総回数が明記されているか。無期限・自動更新の場合はその旨を記載しているか。

販売価格:初回価格だけでなく、2回目以降の価格と支払総額が同じサイズ・同じ目立ち方で表示されているか。送料を含めた金額になっているか。

支払時期・方法:各回の代金がいつ、どのように引き落とされるかが明記されているか。

引渡時期:各回の商品がいつ届くか、次回発送時期が表示されているか。

申込みの撤回・解除に関する事項:解約方法、解約受付の手段と時間帯、解約申出の期限、違約金の有無と金額が最終確認画面上に明記されているか。

申込期間:キャンペーンや特典に申込期限がある場合、その期限と適用条件が最終確認画面に明記されているか。


ダークパターンに該当しないかの自己診断

☑ 初回価格のみを大きく表示し、継続価格を小さな文字や薄い色で記載していないか。

☑ 「定期購入」であることが購入ボタンの近くに明確に表示されているか。

☑ チェックボックスがデフォルトでONになっていないか。

☑ 解約手続きが申込みと同程度に簡単にできる設計になっているか。

☑ 「お試し」「トライアル」と表示しながら、実際は定期購入契約になっていないか。

☑ 「いつでも解約可能」と表示しながら、実際には電話がつながりにくい、チャットボットで引き止められるなどの実態はないか。 

なお、消費者庁は2025年にダークパターンの実態調査報告書を公表し、国内102のウェブサイトを対象に調査を実施しました。また、26か国が参加した国際的な調査でも、調査対象サイトの大半で何らかのダークパターンが確認されています。意図的であるかどうかに関わらず、消費者の意思決定を歪めるような設計は改善の対象となります。


(出典:通信販売の申込み段階における表示についてのガイドライン|消費者庁)

(出典:いわゆる「ダークパターン」に関する取引の実態調査|消費者庁)


まとめ

定期購入のダークパターンに対する特定商取引法の執行は、2024年以降新たなフェーズに入りました。消費者庁は2026年にダークパターン規制に関する法制度の見直し検討も進めており、規制はさらに厳しくなる方向です。最終確認画面の表示義務を満たすことは、もはやコンプライアンスの最低ラインです。消費者目線での誠実な表示設計こそが、長期的な事業の信頼と成長の土台となります。




筆者プロフィール情報

  つきみ株式会社  山本 達巳

https://tsukimi.ne.jp/

静岡市出身、関西学院大学卒。留学をきっかけに輸入雑貨のEC事業を開始し、令和元年に独立。

自社アウトドアブランドの展開を経て、令和6年につきみ株式会社を設立。商品ページ作りや広告運用、SNSなどECに関係する領域を幅広く対応しつつ、商品ブランディング支援を行っている。



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