2026.02.03 通販会社
若い世代にも広がる宅配冷凍弁当、オフィスへの参入も
女性の就業率が大幅に増え健康志向も高まっている昨今、宅配のワンプレート冷凍弁当の人気が急上昇している。ここ数年は進出企業が増加し、手軽さだけでなく美味しさやメニューの豊富さ、栄養バランスなどを打ち出して1人暮らしや共働き世帯など若い世代に訴求。福利厚生サービスを狙ったオフィスへの参入も目立つ。市場を開拓したスタートアップやDX企業が、大手食品メーカーなどの傘下入りする動きも相次いでいる。
人気の背景にある「タイパ」「コスパ」「健康志向」
Z世代やミレニアル世代といった現役世代に宅配冷凍弁当が広がった背景には、コロナ禍でテレワークが増え、仕事の合間に自宅で効率的に昼食をとりたいとのニーズが増えたこともある。単身者や共働き2人世帯にとってはタイパだけでなく、使いきれない食材の廃棄を防げることでコスパにもつながる。
ここ数年は調理に必要な食材と調味料、レシピがセットになった宅配ミールキットの人気も根強いが、どちらかと言えばファミリー家庭向きだ。“手作り感を一味盛り込みたい”というニーズには合うものの、複数人向けのボリュームのため価格も安いとは言い難い。時間や手間もそれなりに必要で、レンジで温めるだけで済ませたい宅配冷凍弁当の利用者とは顧客層がやや異なる。
タイパとコスパ以外の訴求ポイントは「美味しさ」「メニューの幅広さ」「栄養バランス」となるが、冷凍技術の進化により近年の冷凍食品の味は大幅に向上。メニューも和洋中エスニックと豊富で、中には100種類以上をそろえるサービスもある。各社とも栄養管理士が栄養バランスを監修し、糖質・脂質・塩分・カロリーなどをチェックしている。
どのサービスもだいたい1食500~700円台の価格で、初回限定の割引キャンペーンを展開。主菜・副菜・サラダなどがそろうレベルを考えれば、外食やテイクアウトメニューと比べて割安といえよう。個数が増えるほど1食あたりの価格は下がり、ほとんどは定期購入の縛りもないが、基本的に1回1,000円強の送料がかかる。
各社とも和洋中エスニックと豊富なメニューで展開(出典:グリーンスプーン)
26年度の予想市場規模は450億円、目立つ大手との提携
日本能率協会総合研究所の発表資料によれば、宅配冷凍弁当の市場規模は2023年度に325億円に達しており、26年度には450億円、29年度には540億円規模まで成長する見込みという。宅配弁当は00年代前半、高齢者や疾患を抱える人たちに健康食を提供するサービスとして拡大。その後健康志向の20代男性などを見据えたサービスが始まり、コロナ禍の外出制限もあって急速に広まったとしている。
現在は大手食品メーカーや大手外食産業、コープ・生協なども参入し、常温や冷蔵のサービスも多い。ただ、冷凍庫と電子レンジさえあればいつでも好きな時に食べられる冷凍弁当は、より便利で優位性が高いだろう。
注目したいのは、宅配冷凍弁当で市場を切り開いてきたスタートアップ企業などを、食品メーカーなどが次々と傘下に収めている点だ。大手との協業により、冷凍弁当市場の成長が今後加速する可能性は高い。
グリーンスプーンは新たに弁当シリーズを導入
フード系スタートアップのグリーンスプーンは2020年3月から、ヘルシーなスムージー、スープ、サラダ、メインの冷凍フードを宅配する「GREEN SPOON(グリーンスプーン)」を展開。フルーツや野菜を配合した冷凍スムージーキットや、調理済みメニューがカップやパウチ容器に入ったメインなどで、ミキサーや電子レンジで簡単に調理できる。
全部で80種以上のオリジナルレシピを用意し、その日の気分やシーンによって自由に組み合わせることが可能。野菜が多めのヘルシーメニューが中心のため女性の支持率が高く、洗練されたイラストデザインのパッケージも人気だ。累計会員数は25年10月時点で30万人を突破している。
さらなるラインナップとして、25年11月に宅配冷凍弁当シリーズ「DELI BENTO」を発売した。レンジで温めるだけの手軽さで、1商品をメイン、サイド、サラダの3種類メニューで構成。デリカテッセンをイメージし、メインには豊富な野菜をはじめ食べ応えがある肉や魚を使い、サイドやサラダも主役級に工夫を施した。
発売と同時に3日間限定で、でき立ての「DELI BENTO」を体験できる発売記念ポップアップイベントを都内で開催。わずか2時間で事前申し込みは満席となり、1,200名超が来場した。
24年6月には江崎グリコの完全子会社となり、商品の共同開発をはじめ双方のブランド力、顧客基盤、販売チャネルを生かした施策や協業を進めている。さらに26年1月から、江崎グリコグループが手がけるオフィス向け置き菓子サービス「オフィスグリコ」に「DELI BENTO」の導入を開始。栄養バランスがとれた食事をオフィスで手軽に試せるようした。
「DELI BENTO」の発売体験イベントには申し込みが殺到(出典:グリーンスプーン)
味の素との協業に乗り出した三ツ星ファーム
リテール特化型DXプロバイダーのイングリウッドが運営する宅配冷凍弁当サービス「三ツ星ファーム」は、2021年6月にサービスを始めた。男女とも幅広い年齢層が利用し、25年9月末には累計出荷数が3,500万食を突破している。
和洋中エスニックからスイーツまで、100種類以上の豊富なメニューをラインナップ。原則としてカロリー350kcal以下、糖質25g以下、タンパク質15g以上の独自基準で調理され、メインに2種の副菜が入ったプレート型弁当を電子レンジで解凍するだけで済む。
25年11月にはサービスを全面的にリニューアルし、従来のプレート型弁当に加えて手軽に調理できるミールキットや、パスタなどの主食、ホットスナックなど新カテゴリの商品を大幅に拡充。26年3月までに200種類以上のラインナップ拡大を予定している。
24年1月には味の素と資本業務提携し、同月から協業の第一弾として宅配冷凍弁当「あえて、」のサービスを開始。20種類のラインナップでスタートし、混ぜご飯の上におかずを詰めた一食完結型の商品で他社との差別化を図る。
協業第一弾の宅配冷凍弁当は混ぜご飯とおかずの一体型(出典:味の素)
ナッシュはオフィス需要など新たな市場を開拓
スタートアップのナッシュは、2017年11月に宅配冷凍弁当「nosh(ナッシュ)」の販売を開始した。糖質30g 、塩分2.5g以下で調理した和洋中など1,000以上のメニューを開発しており、メインと副菜3品で構成。25年9月には累計販売食数が1億4,000食を突破している。
スイーツにも力を入れ、26年1月からは専属パティシエが手がける「おいしさ」と「健康」を両立させた「ナッシュパティスリー」シリーズに着手。第一弾としてチーズケーキやティラミスなどを提供する。
25年4月には、レトルト加工したドッグフードを定期的に届ける「nosh DOG」をスタートするなど事業を拡大。独自の栄養価基準に基づき、ヘルシーでバランスの良い30種類の犬用メニューをそろえる。
また、ダスキンとの資本業務提携契約を25年7月に締結し、発行済み株式の一部を譲渡。ダスキンの地域密着型訪問販売網を通じ、新顧客層の開拓につなげる。ダスキンは家庭だけでなく企業など事業所のダストコントロール市場でもトップシェアを占めており、これまでリーチできなかったオフィスでの冷凍弁当需要を取り込める可能性が高い。
ダスキンとの提携で販路拡大を図る(出典:ナッシュ)
まとめ
活発化する宅配冷凍弁当市場だが、課題もある。材料費や容器代など原価コストの高騰をはじめ物流や配送にかかる費用も上昇し続け、利益を圧迫している。冷凍で届くため置き配や宅配ボックスが使えず、日時指定サービスを利用した場合でも再配達となるケースも多い。ドライバー不足が広がる状況下で、スムーズな配送につなげるのはなかなか困難だ。
また、消費者庁は25年9月に味の素とイングリウッドが提供する「あえて、」で、さらにイングリウッドの「三ツ星ファーム」においても、景品表示法違反となるステルスマーケティングの疑いがあったと公表した。第三者に対して商品の無償提供を条件にSNSへの投稿を依頼し、InstagramでのレビューとしてPR表記をせずに表示していた。
両社は確約計画認定を申請し、消費者庁が認定したため行政処分は免れたが、他社の冷凍弁当に関するSNSでもPR的なコメントが散見される。新興マーケットだからこそ、ステルスマーケティング規制など関連法に抵触しないように広告チェックの徹底が求められる。
執筆者/渡辺友絵
【記者紹介】
渡辺友絵
長年にわたり、流通系業界紙で記者や編集長として大手企業や官庁・団体などを取材し、 通信販売やECを軸とした記事を手がける。その後フリーとなり、通販・ECをはじめ、物 流・決済・金融・法律など業界周りの記事を紙媒体やWEBメディアに執筆している。現在 、日本ダイレクトマーケティング学会法務研究部会幹事、日本印刷技術協会客員研究員 、ECネットワーク客員研究員。
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