2025.07.10 通販支援
LCCのピーチがアクセス集中時のトラブル解消、わずか1週間で解決できた理由とは?
大型キャンペーンや大規模イベントを開催すると、ECサイトにアクセスが集中し、ユーザーがサイトに入れないというトラブルが生じることも。企業にとってはユーザーの信頼を失うとともに、ビジネス上のロスが生じてしまう。そうした悩みを抱えていた国内LCC最大手のPeach Aviation株式会社(以下、ピーチ)では、SaaSプラットフォーム「仮想待合室」を導入することで問題の解決を図った。「仮想待合室」を提供するQueue-itと、クラウドコンピューティング・ソリューションを提供するAkamaiが連携して、わずか1週間で問題を解消できたという。注目の導入事例について詳しい、Queue-itの金井慎治氏(プリンシパル・ソリューション・アーキテクト)に話を聞いた。
SaaSプラットフォーム「仮想待合室」とは?
――貴社が提供するSaaSプラットフォーム「仮想待合室」とは、どのようなサービスですか?
金井慎治氏(以下、金井):当社(Queue-it)はデンマークに本社を置き、トラフィック制御を専門とするクラウド系SaaSサービスを提供しています。グローバル活動も展開し、「仮想待合室」というソリューション分野のリーディングカンパニーとして知られています。
「仮想待合室」は、ウェブアプリケーションやモバイルアプリケーションにアクセスが集中すると待合室が発動し、そこにいったん訪問者を誘導します。混雑状況やあとどのくらいでアクセスできるかといった情報をリアルタイムで表示し、順番が来れば先着順にサイトへ戻すというサービスです。
現在、世界中で1000社を超える企業にご利用いただいており、日本でも50社超の企業で導入実績があります。EC企業をはじめ、金融業界、航空業界、行政機関、チケット業界などの幅広い分野でご利用いただいています。
――貴社(Queue-it)とAkamaiとの連携についてお聞かせください。
金井:Akamai とのパートナー関係は2021年に遡ります。コロナ禍で実施した「ワクチンエッジ(Vaccine Edge)」というプロジェクトが、最初の本格的な取り組みでした。
このワクチンエッジは、Akamai のCDNと当社の「仮想待合室」をバンドリングして提供することで、ワクチン予約接種サイトのデジタル体験を向上させるというものです。それだけにとどまらず、Akamai の超分散サーバーレスコンピューティング、EdgeWorkersとの連携もさまざまな面で強化し、現在国内外の100社以上にご利用いただいています。
このほか、Akamai の「Bot Manager」というボット管理製品との連携を強化し、共同で「ボット対策ソリューション」を開発しています。
――どのようなサービスですか?
金井:サイトへのアクセスが集中した際の「待つ」時間を逆手にとるソリューションです。まず、仮想待合室のカウントダウンページでユーザーが待っている間にBot Managerが人間かボットによるアクセスかの情報を収集します。そして、販売開始時刻になると、その情報をもとに「攻撃的」と判断したアクセスを遮断。それ以外の正規ユーザーにはランダムな番号を与え、オンライン上の待ち行列に案内します。
遮断するまでの時間を意図的に稼ぐことによって不正検知の正確度を高め、ボット運用コストを上昇させます。また、検知ツールをボット悪用者から隠すことで検知システム打破のための改造を防ぐなど、きめ細やかな機能が散りばめられています。
このソリューションを使うことによって、大量のお客様が一斉に入ってくるような場合でも、アクセス障害のない公平な商取引を可能にするとともに、望ましくないボットのアクセスによってサイトを落とさずにトラフィック制御を行いつつ、在庫の販売超過の問題も解決できます。
例えば、人気アーティストのライブチケットや話題性の高い商品など、販売数量が限定されるイベントで力を発揮すると期待されています。
Queue-it プリンシパル・ソリューション・アーキテクト 金井慎治氏
ピーチ社、SNS上の評価が大幅向上
――「仮想待合室」は国内LCC最大手のピーチさんでも導入され、大きな成果が出ているようですね。
金井:ピーチ様では、誰もが手軽に飛行機に乗れるオンラインライフスタイルの実現を企業理念に掲げ、その一環として、さまざまなキャンペーンやイベントを展開しています。人気のキャンペーンを行うと、アクセス集中が起こってしまうため、いかにサイトを安定的に運営するのかが重要な課題だったそうです。
従来、ピーチ様では、クラウド系のオートスケーリングによって対処していました。しかし、それだと急激に伸びるようなアクセス集中に対応が追いつかず、Sorryページが出てしまうことがありました。
サイトのクラッシュは避けられたのですが、ユーザー体験の面で不十分となり、SNS上で不満の声や改善を望む声が見られたとお聞きしています。そうした状況を改善するため、当社の「仮想待合室」を導入していただきました。
「仮想待合室」を導入するには、当社のコネクタをどこかに配置しなければなりませんが、そのコネクタをAkamai のEdgeWorkers上に展開するというアプローチを採用しました。それによって、サイト上のアプリケーションに一切手を加えずに導入できました。
この結果、導入に要した期間は1週間ほどでした。ピーチ様のご担当者様からも、「すべてのセットアップがエッジ側だけで完結し、アプリケーションに手を加えずに済み、遅滞なく導入できて良かった」という声をいただいています。
――具体的に、ピーチ様にどのようなメリットが生じたのですか?
金井:特に、セールス開始時に発生する大きなアクセス集中をうまくハンドリングできるようになりました。つまり、訪問者をいったん待合室に入れて、そこから先着順にサイトに入れることで、従来よりも積極的にイベントを開催できるようになったわけですね。
大規模イベントも安定して運営できるようになったと聞いています。1分あたり4000人ぐらいが入ってくるような大規模イベントでも、サイトを落とすことなく、1週間のキャンペーン期間を通して200万人以上のお客様をスムーズにサイトへ誘導することに成功していると伺っています。
ピーチのご担当者様からは、「実際に待合室を、いちユーザーとしても使ったことがあるが、顧客体験をいかに良くするかに目をつけ、追求しているソリューションだと感じた」とお聞きしました。
待合室の導入後、SNSやアンケートでは「途中で弾かれる心配がないのは本当に助かる」「待ち時間が見えるのが安心できて良い」「大学時代ずっと苦労していたが、今回は感動的だった」といった声が多く寄せられたとも伺っています。
またピーチ様の社内からも「以前はアクセス集中がストレスの原因だったが、待合室を導入してからは守られているという感覚が強くなり、以前より安心して本来の業務に集中できる」との声があり、精神的な負担も大きく軽減されたとのことです。
「仮想待合室」のデザインについては、リクエストをいただければ、その通りに設計し、お渡しすることが可能です。ピーチ様のケースも、ブランドの世界観に合わせて、ポップな「仮想待合室」を作成しました。
ピーチ社の仮想待合室デザイン
安定的・公平なサイト運営を目指す企業に最適
――ピーチ様の場合、1週間で導入できたという話でしたが、一般的に「仮想待合室」の導入にかかる時間はどのくらいでしょうか?また、導入後の運営では専門知識が必要ですか?
金井: Queue-itは、シンプルなリンク型、JavaScript、CDN、サーバーサイドなど、さまざまな統合方法を用意しています。最も簡単な方法であれば1日以内、一般的なエンタープライズレベルでの導入でも2〜3週間程度でテスト含めて完了可能です。
クライアント企業様の負担を軽減するため、プログラミングの知識がなくても簡単に導入できるように、豊富なガイドやSDKモジュール、サンプルなどを用意しています。ただし、サーバーのアプリケーションに当社のコネクタを組み込むような実装や、モバイルアプリケーションに導入する場合は開発スキルが必要となり、より時間や工数がかかります。
当社では、導入後の支援で技術的なサポート体制も用意しています。細かなニーズに応えられるように、柔軟なカスタマイズやソリューションも提供しています。これらが当社の強みと言えるでしょう。
また、導入後に行う最初のイベントについては、当社のエンジニアが入って一緒に行います。そうした期間を経て、知識を伝達した後は、クライアント企業様がセルフサービス形式で運用していくというのが、大半の流れです。
このほか、カスタマーサクセスやサポートチームを用意しているので、一緒になって進めていくことも可能です。
――「仮想待合室」は、どのような課題を抱えている企業に最適でしょうか?
金井:幅広い企業様にご利用いただけます。絶対に失敗できないイベントやキャンペーンであっても、アクセス集中が予測できるものから、まったく予測できないものまでありますが、様々なケースで安定かつ公平なサイト運営を行いたいという企業様に最適なソリューションだと考えています。
例えば、話題性の高い商品の販売を控えたEC事業者さん、人気アーティストのライブチケットを販売するチケット事業者さん、多数のアクセスに対応しなければならない行政機関、給料振込に対応する金融企業さんなど、幅広い分野でご利用いただけます。
実際に導入された企業様では、データベースのスケーリング費用が平均で33%軽減できたというデータがあります。また、85%の導入企業が販売効率が上昇したと回答しています。
このほか、顧客ロイヤリティを高めたい企業様や、リピーターを増やしたい企業様にとっても有効ですね。トラフィック制御だけでなく、ボット対策やロイヤルカスタマーを優先的にサイトに入れる機能もあり、ビジネスの勝負所で信頼できるオンライン体験を提供できることがポイントだと思います。
良質なオンライン体験が、お客様がブランドを信頼し、もう一度使いたいと思うきっかけになります。その積み重ねがブランドの競争力を高め、安定した成果を出す基盤になると思っています。
当社のミッションは、「需要が高まるイベント時にもスムーズかつ公平で透明性の高いオンライン体験を実現することで、ブランドと消費者の信頼関係を強化する」こと。安定したアクセスを提供し、ボットや不正をなくすことで、オンライントラストを実現していきます。
――ありがとうございました。
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