2026.10.09 行政情報
「ふるさと住民登録制度」にEC・旅行関連業界が熱視線
最近、話題に上がるようになった「ふるさと住民登録制度」。総務省は今年度内に運用を開始する予定だ。ふるさと住民登録制度に対し、全国の自治体の約7割が参加する意向を示すほか、EC業界や旅行関連業界も熱視線を送る。
※総務省の資料より(一部抜粋)
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人手不足の解消と地域活性化
総務省が推進するふるさと住民登録制度とは、どのようなものか。
多くの自治体では、「農業現場の人手が不足し、収穫を手伝ってくれる人がいれば助かる」「地域の高齢化が進み、伝統行事を継続するために若い仲間がほしい」「地域活性化のための斬新なアイデアを出してもらえる若い人が仲間になってくれればうれしい」といったさまざまな悩みがある。
一方、都心の住民のなかには、「あのお祭りを見たことがあるが、ぜひ参加してみたい」「自分の知識を地域活性化のために役立ててみたい」「観光で訪れたが、とても素敵な所だったので、もっとつながりを持ちたい」と考える人もいる。
同制度は、そうした両者を橋渡しすることが狙い。全国共通のプラットフォームを通じて、現在住んでいない特定の地域と関係を構築したい人(ふるさと住民)と、ふるさと住民を受け入れる地域をつなぐ仕組みとなる。専用アプリを活用して、それぞれの地域が活動の担い手を募集。ユーザー(ふるさと住民)は関心のある募集を見つけて、現地で担い手活動に参加するという流れを想定している。
同制度は、「ベーシック登録」と「プレミアム登録」の2種類の登録方法を予定。ベーシック登録は、誰でもすぐに登録できる。地域の独自情報の閲覧や、担い手活動への参加が可能となる。
プレミアム登録は、年に3回以上の担い手活動への参加と、マイナンバーカードによる本人確認が条件となる。ベーシック登録の取り組みに加えて、地域ごとに用意するサポート施策も利用できる。例えば、被災時の避難の優先的受け入れ、神輿担ぎといった祭りへの参加、コミュニティイベントへの招待、移動・宿泊に関する支援、地域の商店の割引などをイメージしている。
それぞれの地域にとっては、地域の魅力を幅広い層に伝えることが可能となる。まずはベーシック登録により、地域の活動をサポートしてくれるふるさと住民を可視化。さらに、ふるさと住民が地域での活動をリピートすれば、プレミアム登録へステップアップし、定期的な行き来が生じて関係を深めることができる。これによって地域の人手不足を補い、地域活性化につなげる。
ふるさと納税との親和性
総務省が全国の自治体を対象に行ったアンケートの結果によると、自治体の約7割が同制度へ参加する意向を示した。このように自治体の注目度は大きいが、EC業界なども強い関心を寄せている。
楽天グループは昨年9月、同制度の社会実装に向けて、「ふるさと住民応援コンソーシアム」の設立を発表。自治体や企業などを対象としたセミナーの開催、ニュースレターの発行といった活動を展開する。これに加え、来春には、ふるさと住民登録ポータルサイト「楽天ふるさと住民」を開設する予定。参加する自治体の魅力や地域の基幹産業の体験コンテンツなどを紹介し、同制度をサポートする考えだ。
楽天グループが同制度を重視する理由は何か。取材に対し、次のように説明している。
「人口減少などの課題に直面する自治体の担い手不足解消や地域産業の活性化を目的に、楽天の多様なサービスや他の民間企業との連携を通じて、人々が地域へ実際に訪問するだけでなく、地域ならではの体験や基幹産業での就労などを支援、促すために、『楽天ふるさと住民』という新サービスのローンチ(予定)や、さまざまな特設ページ開設などの施策に取り組んでいる。これらは、楽天の企業理念である『イノベーションを通じた地域社会のエンパワーメント』を体現しており、地域経済の発展と持続的な成長を目指す楽天としても重要な施策として位置づけている」
前述したように、自治体の約7割がふるさと住民登録制度への参加に意欲を示している。この背景の1つとして、ふるさと納税制度との親和性が高く、今後の対応をイメージしやすいことも挙げられる。
ふるさと納税のユーザーと、ふるさと住民登録制度に登録する層は「似通っているのではないか」(自治体関係者)と考えられる。ふるさと住民登録制度がスタートすると、ふるさと納税のユーザーの一部が、実際に地域を訪問する動きが広がっていくと予想される。
その際には、都心から地方へと人の移動が伴うため、そこにビジネスチャンスが生まれる可能性もある。このため、既に鉄道会社や航空会社、旅行会社などは具体的な動きを見せている。
JR東日本では、都内での産直市や、新幹線の車内・着駅での情報発信によるサポートを想定。さらに、同制度のプレミアム登録の場合、一定回数の地域への訪問が必要となることから、来訪実績に応じたJREポイント還元なども念頭に置く。
運用開始が近づくにつれて、それぞれの地域で官民連携の施策が推進され、EC業界や旅行関連業界などの取り組みも慌ただしくなりそうだ。
(木村 祐作)
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