2026.08.12 行政情報
具体事例から考える「ダークパターン」をめぐる問題
デジタル取引の進展と広告手法の多様化に伴って、消費者を欺くウェブサイトの設計を意味する「ダークパターン」が増加。ダークパターンの横行はインターネット通販の信頼性を損なう。そうした状況の改善に向けて、関係各社が自社サイトにダークパターンが含まれていないかどうかを突き止め、対応することが重要となる。8月7日に開催された通販通信ECMO主催セミナーでは、薬事法広告研究所の稲留万希子代表をゲストに招き、最新事例を通じて通販各社が注意すべき点を確認した。
通販事業者に大きなデメリット
国内のネット通販サイトで特に気になるダークパターンについて、稲留氏は次のようなケースを挙げた。
・「事前選択・隠れ定期購入」「カウントダウンタイマー」「解約導線の複雑化」を中心とした緊急性や社会的証明を煽る手口。
・「初回〇〇円」の裏側に定期購入条件がデフォルトで組み込まれている手口。
・カウントダウンタイマーを用いて「あと〇分」と残り時間を表示し、内容を確認する間を与えずに申し込みを迫る手口。
・解約ボタンが見つけにくい、または電話受付のみといった複雑な解約導線。
・根拠の乏しいランキングや体験談で優良誤認を誘発する「お客様の声・No.1表示」型の手口。
ダークパターンが横行している理由について、「『効果が出やすい設計』と『規制の後追い』に加え、組織内の管理体制の不備や、消費者との情報格差も背景にあるのではないか」と話した。
通販事業者がダークパターンを用いるデメリットについても言及。「ダークパターンに気づいた消費者が離脱し、LTV(顧客生涯価値)が低下する」「行政処分のリスクを招く」「SNS上の炎上や悪評の拡散、報道によって、企業の信用やブランドイメージが低下しかねない」などと指摘した。
買取サイトの利用規約
今年に入り、適格消費者団体が電子ギフトの買取サイトに対し、表示の改善を申し入れた事例を通じて、ダークパターンの問題を考察した。
問題の買取サイトの申込画面では、「お急ぎ依頼」が初期状態でチェックされていた。「お急ぎ依頼」の説明は長文の利用規約内にあり、規約には「お急ぎ依頼の場合は買取額の90%を手数料として差し引く」と記載。さらに、「お急ぎ依頼」を選択しない場合の買取額の振込時期は、通常2年前後、最大10年以内と説明していた。適格消費者団体は、景表法や消費者契約法に違反する恐れがあるとして是正を求めている。
稲留氏は、申込画面で「お急ぎ依頼」が初期状態でチェックされており、ダークパターンの1類型である事前選択(インターフェース干渉)に該当すると説明。手数料90%の説明が長文の利用規約内にしかない点については、「こっそり型」のダークパターンに該当すると指摘した。
これに加えて、特商法に基づく表記や電話番号など、事業者の実在性に関する情報開示が不十分な点も問題視した。
動画配信サービスでダークパターン疑惑
動画配信サービスでダークパターン疑惑が浮上した出来事は、記憶に新しい。サッカー・ワールドカップの視聴プランについて、今年5月30日~6月11日の期間、年間プランであるのにもかかわらず、月額プランと受け取れるような表示を行っていた。
具体的には、最初の3カ月間が月額980円と強調していた。しかし、実際には年間契約であり、合計すると約2万6000円の費用が必要だった。4年に1度のビッグイベントをめぐるダークパターン疑惑は、多くのサッカーファンのひんしゅくを買い、運営会社がホームページ上で陳謝する事態に発展した。
この問題を踏まえて、稲留氏はサブスクリプションサービスの留意点を次にように整理した。
トップページの価格表示は、実際の請求額や契約期間と完全に一致させること。「月額〇〇円」と表示する場合、年間契約であれば契約期間や総額を同一画面上に明瞭に併記すること。自動更新や解約条件は、申し込み直前の最終確認画面でも強調して表示すること。
さらに、キャンペーン価格の適用条件(期間限定・先着など)に“実態のない誇張”がないか確認することや、解約導線を登録と同程度に簡単な設計にすることも重要と説明した。
存在しないキャンペーン
次に東京都が今年3月、美容液を販売する通販事業者に対し、景表法違反で措置命令を出した事件を通して、ダークパターンの問題を考察した。
この事件は、インスタグラムの広告から遷移したアフィリエイトサイトで行った美容液の表示が違反に問われた。取り締まりは有利誤認や優良誤認の観点から実施されたが、セミナーではダークパターンの視点で考察した。
アフィリエイトサイトでは当日に限り、アンケートに回答した先着者のみが、キャンペーン価格を適用した定期購入契約に申し込むことができて、初回2980円で購入できるかのように表示していた。しかし、実際にはキャンペーンを行った事実はなく、アンケートに回答しなくても常に初回2980円で購入できた。
また、ナンバーワン表示については、「使い続けたいNo.1ビタミンC含有美白美容液」「期待度No.1ビタミンC含有美白美容液」「おすすめ度No.1ビタミンC含有美白美容液」とうたっていたが、各項目で第1位を獲得した事実はなかった。
この事件をダークパターンの観点から見た場合、存在しない先着キャンペーンの表示はダークパターンの「こっそり型」、第1位を獲得していないナンバーワン表示は「社会的証明の濫用」に該当する。
通販事業者が取り組むべきこと
稲留氏は通販事業者に向けて、次のような取り組みを推奨した。
・自社サイトの申し込みから解約までの画面をダークパターンの類型表と照らし合わせて確認する。
・最終確認画面で、契約期間・総額・解約条件などをまとめてわかりやすく表示できるように、画面を改修する。
・解約手続きについて、申し込み手続きと同じくらい簡単にできるように手順を減らす。
・カウントダウンタイマーや「在庫わずか」といった表示は、実際にその通りの場合にだけ使う。
・マーケティング部門やデザイン部門と法務部門が、申込画面を定期的に一緒に確認する場を設ける。
・アフィリエイトなど外部に依頼した広告・表示についても、事前に内容を確認して契約書に明記し、定期的にチェックする。
今回のセミナーでは、ダークパターンは短期的な利益をもたらすかもしれないが、通販事業者や販売サイトの信頼を失墜し、大きなデメリットを生じさせることを確認した。通販会社に向けて、サイトを点検し、ダークパターンが見つかれば改善することが、長期的な成長につながるというメッセージを伝えた。
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