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2026.08.10 コラム

EC業界に迫る各種法規制包囲網~2026年上半期の動向まとめ

早くも折り返し地点を過ぎた2026年のEC業界で危惧されるのが、各種法規制の包囲網だ。特定商取引法など、昨年から検討が進んでいた複数の法規制が今夏をメドにまとまる。定期購入やダークパターンといったデジタル取引の取り締まりを強め、クーリング・オフや解約料などECに関わりが深い消費者制度の見直しが図られる。上半期における検討会などの動向や、今後の論点を見ていこう。



「特定商取引法」ではチャットからの勧誘や定期購入、ダークパターンに焦点

消費者庁は2026年1月、第1回の「デジタル取引に関する特定商取引法検討会」を開催した。デジタル化の進展に伴い、SNS勧誘や定期購入、ダークパターンに焦点を当て、消費者トラブル増加に対応する。特定商取引法の規制強化に向けて議論を重ね、並行して立ち上げた「消費者契約法検討会」とも調整しながら今夏をメドに中間取りまとめを行う。

EC周りの検討課題としては、①SNSチャットによる勧誘が、消費者が予期せずに契約を締結してしまう電話勧誘販売に近い「不意打ち性」を有している②消費者が定期購入だと認識しないまま契約に誘導される③解約がしにくい導線や目立たないキャンセルボタン、偽のカウントダウン表示といった消費者を惑わせ不本意な契約に導くダークパターン—などが挙がった。その後続いた検討会では、最終確認画面における表示義務や、返品特約の不当な濫用への対応などについても規制強化への議論が交わされた。

注目すべきは、ECへの規制を①チャット勧誘など「不意打ち性等が高い取引(2階部分)」と②通常の「インターネット取引一般(1階部分)」に分けて検討するとの考えだ。解約場面において①に対しては、電話勧誘販売への規律という考え方を採用し、「クーリング・オフ」「過量販売の場合の解除権」「不実告知等があった場合の取消権」などを新設する必要があると提案した。

また、②への規制としては、広告・勧誘場面で「広告である旨の表示・広告隠匿表示の禁止」の新設を検討する。さらに、ダークパターンへの対応や、最終確認画面の表示義務および電子書面交付義務を課すように現行法の拡張・具体化を提案。返品特約の不当な濫用や、解約手続の不当な遅延・複雑化を禁止すべきではないかとした。


1階と2階に分けて規制を新設する方針を示した(出典:消費者庁)

7月に開いた第7回検討会では前回までの議論を振り返り、クーリング・オフの意思表示を妨げる行為の取り締まり強化を固めた。クーリング・オフに応じない事業者の悪質行為に対し、ガイドラインなどで明確化することや、必要に応じて条文の文言の見直しを行い、特商法上の刑罰対象となることを明確化する考えだ。勧誘当初から返金意思または返金体制を欠いているにも関わらず、クーリング・オフが可能と告げている場合などが対象となる。

さらに、「デジタルプラットフォームの重要性の高まりを踏まえた対応」として、画像や動画等を共有するSNSや、検索結果を示すサイト等に表示される広告が契機となり発生する消費者被害を重視。相談が集中している「定期購入商法」などを挙げ、広告・SNSのプラットフォーム提供者など、デジタルプラットフォーム提供者以外のEC取引基盤提供者に対しても、虚偽・誇大広告の排除に向けた自主的な取り組みを促すべきとした。


解約料や継続的な購入を「消費者契約法」に基づき議論

2025年12月に消費者庁が立ち上げた「消費者契約法検討会」は2026年7月に第7回目の会合を開催した。検討会の下にワーキンググループを設置し、消費者契約法改正に向けて議論を重ねてきた。第7回検討会では、これまでの検討会で挙がっていた「継続的な購入(定期購入)」や「解約料」、「契約解除権」「事業者等による消費者の多様な脆弱性への配慮を促進する仕組み」など積み残した論点について議論した。

「解約料」は、これまでの検討会で提示されたA案(立証責任を事業者に課し価格差別目的な解約料への規律を設ける)とB案(原状回復賠償に相当する部分等について消費者が立証責任を負う)を踏まえて検討された。事務局からは、解約料の内容や算定根拠について事業者により丁寧で適切な説明を促すなど、「解約料」の説明に関する制度を拡充する提案があった。 

「継続的な購入」では、消費者の正当な離脱を容易にすることを目的とした契約規律の導入について議論。規律を設けるべきケースと対象外になるケースや、解約妨害として禁止すべき行為の範囲などについて意見を交わした。

座長は総括として、今後詰めなくてはならない論点はあるものの、これまでの議論を踏まえ中間取りまとめ作成に着手するように事務局に要請した。


キャッシュレス決済では後払いやキャリア決済が重要課題に

内閣府の消費者委員会が2025年3月に設置した「支払手段の多様化と消費者問題に関する専門調査会」は2025年8月に中間報告を発表し、その後も開催が続いた。キャッシュレスやデジタル決済など多様化する支払手段に伴うトラブルや課題を整理し、消費者保護の観点から制度・ルール整備の方向性を検討。QRコード決済、プリペイド、後払い、キャリア決済、クレジットカードなど多様な決済形態について議論を重ねてきた。

割賦販売法の規制対象外のため消費者トラブルが懸念されるとして、開催当初から課題に挙がっていた決済手法が、「BNPL(Buy Now Pay Later)」の名称で知られる「後払い」をはじめ、「キャリア決済」、さらにクレジットカードによる2カ月内払いの「マンスリークリア」だ。中でも「後払い」は規制のすき間に位置付けられ、トラブルが目立つ「定期購入」の決済手段として多く利用されているとした。

2026年7月には第18回検討会が開かれ、第15回から4回目続く主な論点が提示された。これまでの論点で示されてきたように、「後払い」「キャリア決済」は支払いを繰り延べられるため利用者の資力を超える支払いが可能になると指摘。インターネットで容易に利用できる環境が整っていることもあり、過剰借入が生じやすいとした。

「マンスリークリア」についても、消費生活相談現場から挙がった「同種のトラブルでも各カード会社の対応に差異がある」との問題点を重視。運用の実効性に課題が残されているとした。

悪質加盟店への共通ルールにも触れ、こういった加盟店が消費者トラブルの多い支払手段を利用することへの未然防止が必要と指摘。トラブル時には各支払関連事業者が協力して紛争解決に対応し、過剰な借入れや多重債務を抑止する措置を講じる必要があるとした。

専門調査会は提示された論点を踏まえて消費者保護に向けたルール作りに取り組み、今夏をメドに報告書の取りまとめを行う。


「後払い(BNPL)」にはクレジットカードが不要(出典:日本後払い決済サービス協会)


サプリメントの「法的定義」を定め健康被害報告やGMPを義務化

小林製薬の「紅麹」による健康被害問題を受け、厚生労働省と消費者庁が連携して進めてきたサプリメントへの規制内容が2026年7月にまとまった。消費者庁は25年11月から「サプリメントに関する規制の在り方」検討会を開催して審議を重ね、2026年6月に中間報告案を発表。内容を審議した厚生労働省が食品衛生監視部会に原案を提出し、このほど大筋で了承を得た。

事業者には、食品衛生法上で新たに定義付けるサプリメント全体に対し、健康被害の発生時や拡大の恐れがある場合は自治体への報告を義務付ける。すでに機能性表示食品などでは必須のGMP(適正製造規範)による製造・品質管理も義務化する。ただし、グミやゼリー、チョコなどについては、当面の間は自主的な取り組みを促す。また、サプリメントの製造・加工施設を各自治体が把握できるように、食品衛生法に基づく施設の営業許可申請時にはその記載を義務付ける。

サプリメントにはこれまで「法的定義」がなかったため、健康被害報告やGMPの義務化ができなかった。このほど消費者庁はサプリメントの法令上の定義について、「食事による栄養摂取又は生理機能の調節を補助することが目的の食品」であり、①成分の一部又は全部が製造工程で濃縮されている②形状が錠剤、カプセル剤、液剤、粉末剤などで摂取が容易③ 過剰摂取の恐れがある—にあたるものと定めた。

今回、サプリメントに明確な定義づけがなされたことで、将来的な法制化に向けての道筋がついたと考えられる。


とりまとめによるサプリメントの新たな規制(出典:厚生労働省)


まとめ

一方で、現行法の緩和に向けた規制改革の動きもある。経済産業省が2025年に立ち上げた「化粧品産業競争力強化検討会」は、2026年6月に中間報告を発表。化粧品の国際競争力強化や市場規模拡大を目指し、効能範囲の拡大や、現在は原則禁止の体験談容認など、広告表現の自由度を高めるための訴求内容見直しを求めた。

さらに政府の規制改革推進会議も6月に、景品表示法の「不実証広告表示」規制の運用指針見直しを答申。景品規制についても「総付景品」の上限額見直しを求めるなど、事業者寄りの姿勢を見せている。

記事中の特定商取引法や消費者契約法、決済・支払手段に関わる規制強化については、まもなく報告書の取りまとめが公表される。その後どのような規制や運用につながっていくのか、注目していきたい。


執筆者/渡辺友絵


【記者紹介】
渡辺友絵
長年にわたり、流通系業界紙で記者や編集長として大手企業や官庁・団体などを取材し、 通信販売やECを軸とした記事を手がける。その後フリーとなり、通販・ECをはじめ、物 流・決済・金融・法律など業界周りの記事を紙媒体やWEBメディアに執筆している。現在 、日本ダイレクトマーケティング学会法務研究部会幹事、日本印刷技術協会客員研究員 、ECネットワーク客員研究員。



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