2026.05.11 通販支援
EC事業者を悩ます“データのサイロ化”、AIの有効活用へデータウェアハウス基盤が喫緊の課題に
ユーザー情報やレビュー情報をはじめ、ECサイトを運営する企業内には多くのデータが蓄積される。売上アップに向けてAI活用が必須となるなか、AIがデータを最大限活用できる基盤の整備が喫緊の課題に浮上。しかし、多くのEC事業者では、利用中の各種ツールにデータが分散し、利用しにくい状況にある。データの分析でとどまり、施策の実施に活用できていないケースも多い。そうした課題を解決するため、メルカート(東京都港区)は、AIエージェントと一体型のデータウェアハウス(DWH)基盤を開発した。同社の渡邉章公社長に、開発の経緯と今後の展望を聞いた。
EC事業者にとってデータの分散は致命的
――現在、ECの現場ではどのような課題があるのでしょうか?
渡邉章公氏(以下、渡邉):EC市場への参入企業が増加し、競争が激しくなっています。広告費を増やせば増やすほど業績は伸びるものの、それをいつまでも続けていくことは困難です。
そこで、競争優位性を高め、生産性を向上させる環境の整備が求められています。そのためのキーワードとして、“データ活用”があります。数値に基づき意思決定するデータドリブンや、ワンツーワンの接客を行う際にはデータが基盤となります。
しかし、データを活用する際に、データのサイロ化(社内の各部署でデータが孤立して連携されない状況)が大きなネックになっています。10年ほど前から、SaaSをはじめとした多様なビジネスモデルが登場し、さまざまなツールを組み合わせてビジネス基盤を作るという流れにあります。
その一方で、複数のツールにデータが分散し、マーケティングの意思決定に使うためのデータが、あちこちに貯められるという状況が発生しやすくなっています。
EC事業の成果を上げるために、データやAIを活用するわけですが、データが分散していることで十分に活用できずにいるケースが多いようですね。また、データを統合しようとしても、専門知識を持つ人材が不足しているという問題もあります。EC事業者様にとって、データの分散は致命的な課題だと考えています。
――貴社が今年3月にローンチした「AIエージェント一体型データウェアハウス(DWH)基盤」とは、どのようなものですか?
渡邉:これは、EC事業のあらゆるデータを中央に蓄積し、各データをつなげて、AIができることを増やすのが狙いです。デジタル人材が不足するなか、EC事業者様にとってAI活用が必須となりつつあることを背景に、開発を進めました。
AIツールを使うだけだと、差別化につながりません。EC事業者様が自社で蓄積できるデータ資産をフル活用してこそ、AIは本当の武器になります。
そこで、社内に蓄積されたデータを活用しやすい状態に成形し、「AIエージェント一体型データウェアハウス基盤」に貯めていくことになります。これにより、意思決定の迅速化やデータドリブンなマーケティングに生かすことが可能となります。
――従来のデータウェアハウスと、どう違いますか?
渡邉:データウェアハウスには、いろいろな切り口があります。定量的にわかりやすく成形されたデータが集まるものや、定性的にさまざまな情報が貯まるデータレイクのようなものもあります。
これまでデータ活用のアウトプットは、過去を可視化するという印象が強かったと思います。多数のデータウェアハウスやBIツールが登場していますが、過去を可視化した後に、次の一手を考えるのは人間でした。
しかし、専門知識を持つ人材が不足するなか、「データを可視化した後は人間がやりましょう」では対応が困難です。今後は、AIがデータを使いやすい状態にして蓄積し、誰もが活用できる状態にすることが求められます。当社はこの点を意識して、「AIエージェント一体型データウェアハウス基盤」を設計・開発しました。
株式会社メルカート 代表取締役社長 渡邉 章公氏
“分析”と“実行”が断絶される状況
――データが活用されずに「眠っている」という状況は、どのような損失をもたらしますか?
渡邉:ECはお客様のデータを集めやすい環境にあり、データの有効活用がビジネスの成否を分けます。収集するお客様に関するデータは、EC事業者様の資産になるわけですね。この資産をどのように経営やビジネスに活用していくのかが、とても重要です。
データはどんどん貯まり続けるため、活用できない場合には、負債となる可能性があります。当然、管理上のリスクも高まってきますよね。さらに、そうした負債を抱えながらビジネスに生かせないという状況は、経営上の意思決定の鈍化を招きます。
だからこそ、人に依存せずAIとプラットフォームで解決できる領域をどんどん増やしていく必要があります。それができない企業は、他社との競争が難しくなるでしょう。
今後、EC事業の成果を上げていくためには、勘や経験則だけに頼った仮説から脱却し、データに基づく仮説を素早く立て、検証し、次の施策に反映するサイクルをいかに高速で回せるかが勝負になります。しかし現場では、データを分析できたとしても、そこから実行に移すまでに大きな断絶があるのが実態です。
――従来のBIツールは“分析”止まりで、実務上の“実行”との間に断絶が見られますね。
渡邉:データを可視化するBIツールは多数登場し、当然、これらを駆使するという選択肢はあります。ただし、データを集めて可視化させるだけだと、次のアクションに移すことが難しいですね。
例えば、BIツールを使用し、ECのデータを可視化したとします。次に、今期・来期の予測に基づいて最適な施策を打ち出すことになります。ところが、BIツールによって施策の“実行”まで実現することは難しく、“分析”と“実行”は分断されてきました。
そうした状況を一変させたのが、AI技術の進展です。昨年から今年にかけて、AIエージェントがこのあたりの役割を担うようになってきました。可視化したデータに対し、どのように“実行”に落とし込むか。AIにどこまで任せるか。これらはとても重要なポイントです。
当社が目指しているのは、外部のBIツールと当社のプラットフォームをAIでつなぐことではありません。EC事業者様のデータ資産を活用しやすい状態にして貯めた上で、AIを駆使して“実行”まで落とし込むことです。PDCAサイクルを早めて、ワンストップのEC運営をサポートしたいと考えています。
株式会社メルカート 代表取締役社長 渡邉 章公氏
必要なデータだけをAIに使わせる
――機密情報の保護と深い顧客分析を両立させる「プライベートDWH」について、お聞かせください。
渡邉:ECに関するデータは、センシティブで機密性の高いものが多いですね。規制が厳しくなる状況下、データの取り扱いも難しくなっています。
「AIエージェント一体型データウェアハウス」の“プライベート”には、2つの意味があります。1つは、ECで蓄積した個人情報や機密性の高いデータを簡単にAIに使わせないというセキュアな環境で、データベースを構築していること。もう1つは、ありふれたデータではなく、自社でしか獲得できないデータをどれだけ扱えるかという点です。
現在、さまざまなデータと外部のAIツールをつなぎ、多様な取り組みが可能となっています。それに伴い、AIツールで作成したアプリケーションが、セキュリティ事故を起こすリスクは上昇するという予測もあります。
リスクを考えると、AIにデータを自由に使わせるのではなく、セキュアな環境で必要な部分だけをAIに使わせて、それ以外は自社のサーバーで管理することが重要となるでしょう。
――“AIエージェント一体型”とのことですが、生成AIツールとの連携についてどのようにお考えですか?
渡邉:今後は、AI技術の進化のスピードに追従していけるかが問題となります。このため、セキュアな環境を保つ、解放する部分はAIツールに使わせる、という2つの領域を作っていくことが求められます。
有益な形で安全にAIを活用できるデータ基盤を整えるという考え方の下で、進めていきたいと思います。
データをビジネスに転用するための基盤に
――今後の予定や、企業のDX化に与える影響などをお聞かせください。
渡邉:当社のデータウェアハウス基盤については、EC事業で得られるデータをつなぎ合わせた状態で蓄積し、それをビジネスに転用していくための運営基盤にしていきたいですね。
ECサイトでは、会員情報、行動データ、注文データなど、わかりやすいデータが貯まります。これに加えて、どのようなお客様が、どのような商品に興味があるのかというインサイトのデータ、口コミや問い合わせ、レビュー、SNS上のデータなどもあります。
そうしたお客様のデータをデータウェアハウス基盤に貯めて、活用できる状況を整えます。お客様の多様なデータを使って、商品企画や販売企画に生かせる状態を作ることが、今後の取り組みの第一歩だと考えています。
単に「デジタル化しましょう」「ツールを使いましょう」ではなく、データを起点に競争優位性を高められる環境へと、EC事業者様の体質を変えていくことを目指したいですね。
――ありがとうございました。
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