2026.04.15 通販会社
進むプラットフォーム企業のAIエージェント活用、事例などの無償公開も
大手プラットフォーマーのAIエージェント活用が驚異的に進んでいる。幅広い部署で最新のAIモデルが業務の大部分を担い、生産性の大幅アップや社員の負担軽減に貢献。ユーザー向けでは商品や店舗選びからファッションコーディネートまで、活用が本格化している。生成AI利用での具体的事例を集めた資料や日本語特化型AIモデルの無償公開も進むなど、業界を挙げて国内のAI技術導入や支援加速を目指す。
DeNAは開発部門の生産性向上が最大約20倍に
DeNAは1年前に「AIオールイン」宣言を行い、全社を挙げてあらゆる領域でAIを用いた効率化と創造性の両立を追求すると発表した。AI技術を通じて既存事業を半数の人員で維持・発展させ、余剰人員をAI関連の新規事業に振り向けるというもので、生産性が著しく向上し経営方針も大変革するとしている。
さらに、企業が生成AIを社内業務で活用するための具体的事例を100個集めた自社作成資料「AI活用100本ノック」を登録不要で無料公開した。業務効率化や資料作成・研修・リサーチ支援、プロンプト設計など、生成AI導入を目指す企業に向けて有益な実践的事例集となっている。現場での活用事例や自社の知見を可視化し生成AI導入のヒントを提供することで、産業界におけるAIの内製化促進につなげたい考えだ。
2026年3月に開いたAIカンファレンス「DeNA × AI Day 2026」では「AIオールイン」の現状と、AIによりもたらされた現場での具体的な成果を発表。セッションに登壇した南場智子代表取締役会長は、「AIオールイン」の取り組みにより1年間で開発現場の環境が大きく変わったと強調した。
同氏によれば、AIの進化でソフトウエア開発エンジニアの仕事の質が大きく変化し、コードを書く仕事が大幅に減少。最新のAIモデルを使いこなした場合、プロジェクトによっては作業の95%をAIが担えるケースもあり、約20倍の生産性向上に相当するとした。
それ以外の部署でも効率化が進み、「法務」「QA(品質管理)」「配信審査(ライブ配信サービスPocochaなど)」といった業務でもAI前提の業務フローへと仕組みを再設計。100%だった工程数が「リーガルチェック」では10%へ、「QA」では50%へ、配信審査では40%へと削減できる成果を生み出した。最大の変化はAIエージェントの活用で、チャット内容を踏まえて仕事をこなすなどスタッフのような存在になりつつある。IT部門では実験的に「社員」登録して運用し、能力も日々進化・拡張している。
一方で、AI活用による余剰人員の新規事業へのシフトは、時間ができた社員はこれまでできなかった仕事を自分に課してしまうため、予想通りには進まなかったという。そのため、今後は「人材輩出」をマネージャーの評価に盛り込むことや、トップによる大胆な人材シフトが必要になるとの考えを示した。
AI活用の自社具体的事例を集めた資料を無料公開(出典:DeNA)
AIモデル最新版を無償提供した楽天
楽天グループは2026年3月、AIモデル「Rakuten AI 3.0」の無償提供を開始した。経済産業省および国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が推進する生成AIの開発力強化を目指すプロジェクトの一環として開発。公開により国内のAI開発を加速化させ、企業や技術者の支援を目指す。
本モデルは、日本語に最適化された約7,000億パラメータのMixture of Experts(MoE)アーキテクチャを採用。楽天独自のバイリンガルデータや研究成果をもとに開発され、日本の独特な言語のニュアンスや文化・慣習をより深く理解することができる。文章作成やコード生成、文書解析や抽出に至るまで幅広い用途でのテキスト処理に優れ、楽天の従来モデルと比べて精度が大幅に向上。「楽天エコシステム(経済圏)」のサービスを支える試験において、他社の同規模モデルを使用した場合と比べ最大90%のコスト削減につながった。
「Rakuten AI 3.0」は楽天従業員向けの生成AI基盤「Rakuten AIゲートウェイ」に統合され、APIを通じて利用できるようになる。また、多岐にわたるサービスとシームレスに連携する「Rakuten AI」エージェントプラットフォームを通じて、「楽天エコシステム」の各種サービスに順次導入される予定だ。
楽天はビジネスのあらゆる面で、AI活用の推進に取り組む。2025年7月からエージェント型AIツール「Rakuten AI」の本格提供に着手し、まず楽天モバイル契約者の専用アプリ「Rakuten Link」に搭載。26年1月には、ついに「楽天市場」専用アプリへの搭載を果たした。
「Rakuten AI」はショッピング、金融、旅行、エンターテインメントなど「楽天エコシステム」内の各種サービスとシームレスに連携。AIコンシェルジュがユーザーとの対話を通じてニーズを理解し、最適な商品選びや商品との新しい出会いなどを提供する。「楽天市場」の商品情報や価格比較情報に加え、気候や流行、社会情勢など世の中のトレンドも反映されている。
「楽天市場」にもエージェント型AIツールを搭載した(出典:楽天)
LINEヤフーではAIエージェントが買い物をサポート
LINEヤフーは「Yahoo!ショッピング」において2026年2月から、商品選び、購入、配送状況の確認、属性や購入履歴をもとにした買い物支援など、購買行動全体を生成AIがサポートする「Yahoo!ショッピング エージェント」の提供を始めた。ギフトのように条件が曖昧でも生成AIが会話形式で情報を整理し、商品提案や比較、特徴の要約などを通じて最適な買い物体験を提供する。
「Yahoo!ショッピング」ではこれまでも、生成AIを通じて商品選びを支援する機能を段階的に導入してきた。こういった取り組みで得た知見を生かし、質問や要望に対して生成AIが会話でのヒアリングを通じて商品提案するエージェント型サービスへと新機能を進化させた。
おトク情報や購入タイミングの提案、配送予定日や送料の確認などにも対応し、店頭での接客のような体験を提供。購入履歴に照らし合わせ、「この間買った商品と似たものを探したい」「もう少し安い商品を探したい」などの要望にも応じる。生成AIが気になった商品を「お気に入り」に登録することも可能で、後日価格が下がった際にLINE経由で提案するなどのフォローも行う。
今後はユーザーの利用状況をもとに、生成AIによる提案やレコメンド精度の向上を図る。利用を重ねるほど生成AIが能動的にユーザーに合う商品を提案できるように順次機能を拡充し、将来的には「Yahoo!オークション」など他のサービスとも連携していく予定だ。
商品探しから購入までを一貫してAIがサポート(出典:LINEヤフー)
ZOZOはChatGPT新機能とのアプリ連携で着こなし提案も
ZOZOは2026年3月、対話型AI「ChatGPT」上で外部アプリを会話の流れに利用できる新機能「Apps in ChatGPT」とアプリ連携を開始した。これにより、1,400万件以上のコーディネート投稿データを有する自社ファッションアプリ「WEAR 」による着こなし提案や、「ZOZOTOWN」の商品情報を、ChatGPT上でシームレスに提供できるようになった。「WEAR」および「ZOZOTOWN」の会員登録は不要で、ChatGPT上で「ZOZO」のアプリと連携すれば利用できる。
「Apps in ChatGPT」はAIが自律的に行動し、ユーザーが目的を達成するためのサポートを行なう“タスク実行型”の機能を持つ。目的を理解したうえで最適な外部アプリを自動的に提案することから、エージェント型AIの特性を備えている。
ファッションの情報探索はイメージがあっても言語化が難しく、検索しても求める情報にたどり着きにくい。アプリ連携することにより、シーンや天候、トレンド、好みのテイストなどChatGPT上での会話内容に応じ、「WEAR」や「ZOZOTOWN」からユーザーの希望に合いそうな着こなしや商品を提案する。
会話内容に応じて条件に合ったコーディネートやアイテムを提案(出典:ZOZO)
まとめ
AIに関する新モデルや事例、ノウハウなどの無償公開が進み、新たなAI機能も相次ぎ登場するなど、今や生成AI の活用は企業に不可欠となった。ただ、活用に積極的な企業は職場環境が劇的に変化し生産性が大幅に上がる一方で、まだAIの恩恵を使いこなせない企業も多く存在する。自社の成長を望むのであれば、もはや立ち止まったり言い訳したりしている時間は残されていない。
また、AIを使いこなしている企業にとっては、今後はAIの能力や活動範囲拡張への配慮が不可欠だ。自律的に情報を取得し行動するAIの動きが一定範囲を超えないように、安全性担保に向けた環境整備も必須となってくる。
執筆者/渡辺友絵
【記者紹介】
渡辺友絵
長年にわたり、流通系業界紙で記者や編集長として大手企業や官庁・団体などを取材し、 通信販売やECを軸とした記事を手がける。その後フリーとなり、通販・ECをはじめ、物 流・決済・金融・法律など業界周りの記事を紙媒体やWEBメディアに執筆している。現在 、日本ダイレクトマーケティング学会法務研究部会幹事、日本印刷技術協会客員研究員 、ECネットワーク客員研究員。
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