2026.02.26 通販会社
ファンケルの2025年売上は1,126億円、“顧客理解”深め増収増益達成
キリンホールディングスの2025年12月期決算発表で、ファンケルの25年度実績が明らかになった。化粧品(スキンケア)事業とサプリメント事業を合わせた売上収益は1,126億円、事業利益は96億円と好調で、増収増益を達成した。25年にはLTV向上を目指しメンバーズサービス刷新や接客サービス強化などにも着手しており、26年も2桁の大幅増収を見込む。
海外展開の好調や販管費の適正化により96億円の事業利益
キリンホールディングスは2026年2月、完全連結子会社であるファンケルの業績も含む2025年決算発表を行った。
それによると、ファンケルの売上収益は化粧品(スキンケア)事業が615億円、サプリメント事業が448億円で、その他事業も合わせた売上収益は1,126億円となった。ファンケルは24年12月にキリンの連結子会社となったため、24年は3Qまでの実績は含まず4Qのみを計上。24年4Qの売上収益は345億円だったことから、単純比較した場合の25年の増減率は226.4%増となる。
化粧品(スキンケア)事業は国内外ともにアテニアブランドが好調に推移し、サプリメント事業は海外において年代別サプリメントを中心に好調だった。全体を合わせた事業利益は96億円で、海外での販売好調と販管費の管理徹底などが増益に寄与した。事業利益率は8.5%だった。 24年4Qの事業利益は20億円のため、同様に単純比較すると25年の増減率は378.9%増となる。
26年予想では、売上収益は化粧品(スキンケア)事業が前期比18.8%増の731億円、サプリメント事業が同17.0%増の524億円で、その他事業と合わせ同17.2%増の1,319億円を見込む。
化粧品(スキンケア)事業の増収理由としては、海外での自社販売への移行や、国内では引き続きアテニアの成長に加えクレンジングオイルのリニューアル、広告投資の強化などを挙げている。サプリメント事業では、国内は基幹商品にマーケティング投資を集中させ、海外は中国を中心に販路拡大を目指すことで増収を図る。
全体を合わせた事業利益の見込みは当期横ばい水準の96億円で、海外での自社販売開始に伴う固定費増加や、国内での広告投資強化を理由としている。
ファンケルの2025年売上収益は1,126億円と好調(出典:キリンホールディングス)
キリンホールディングスは決算発表とともに公表した「2028年に向けた計画と推進する財務戦略」の中で、ファンケルが重要な役割を担うヘルスサイエンス事業の成長を計画。サイエンスを活用した健康へのシフトを加速させ、過当競争となっている飲料事業から本格的な脱却を図るという。国内ではファンケルのブランド強化で同事業の成長を促し、ファンケルを含むヘルスサイエンスの海外事業一体運営により、アジア・パシフィックにおける構成比を高めていく。
創業時から「不」の解消に取り組む(出典:キリンホールディングス)
顧客とのつながりや戦略的投資を強化したEC事業
ファンケルの好調な業績の背景には、ここ数年にわたる顧客マーケティング施策の強化があるようだ。以下、それを見ていこう。
同社は顧客とのつながりを強化するため、2022年頃からさまざまな顧客データ分析を通じた“顧客理解”を進めてきた。顧客セグメントごとに、流入のきっかけや経路、来訪や行動履歴、購買特性、コスト利益などを統合的に把握することで顧客の変化を可視化。顧客への戦略的な投資を強化している。
中でも、顧客によって行動が全く異なるECについては、顧客層の行動特徴に合わせて強化テーマを設定。レコメンドエリアの導線上の移動など、ライト層も意識したサイト構成や見せ方を取り入れることで顧客行動の変化につなげ、PVの大幅増を達成するなどの成功事例を積み上げた。
キリングループ入り前にファンケルが開示した24年3月時点での通販事業売上高シェアは全体の51.5%で、そのうちEC比率は83.7%を占める。顧客行動変化によるECでのLTV向上は、売上や利益の伸びに大きく貢献するといえよう。
このような取り組みを経て、25年4月には登録数260万人に向けて新たなメンバーズサービスを開始した。これまでの購入金額に応じたポイント付与に加え、公式アプリやLINE、メルマガへの登録や口コミ投稿、置き配登録、容器回収などの“つながり行動”にもポイントを提供。こういったアクションをスコア化して集計し、ステージアップに反映する。顧客の体験価値を高めることで、LTV向上を目指すサービスへと進化させていく。
メンバーズサービスでは15万スコア以上の会員に対し、新たに最上位ステージとして、ポイント還元率が9%と高い「ロイヤル」ステージを用意した。さらに、ステージアップの機会も年1回から月1回へと変更し、育成スピードアップを図る。スコアが貯まれば翌月からステージアップが可能となるため、モチベーションアップにつながるという。
メンバーズ特典もステージに合わせ、製品体験や店舗体験などを追加。上位2ステージとなる「ロイヤル」と「ダイヤモンド」の会員には限定セールやイベントへの招待など特別な機会を提供する。
このように、お誕生月のポイントアップといった従来の固定コストを見直し、リターンが見込める顧客育成投資へとコストの置き換えを進める。
サービス刷新後は様々なアクションポイントが貯まるようになった(出典:ファンケル)
店舗ではアプリやスキンケアカウンセリングを通じきめ細かい接客
個客とのつながり推進施策はECだけでなく、直営店舗の接客を通じた取り組みにおいても進んでいる。
2025年4月には全152店舗(25年3月時点)のスタッフ向けに、新たに開発した接客のサポートアプリを導入した。来店客一人ひとりの製品購入履歴や過去の接客情報などを、スタッフが手元のスマートフォンで閲覧することができる。
これまでは接客時に必要なこれら情報がPOSレジ・タブレット端末・店舗PCと店舗内のさまざまなツールに点在しており、情報確認に時間がかかっていた。接客アプリは約1,000人の店舗スタッフへのヒアリングをもとに、来店客とのコミュニケーションに必要な機能を搭載。自店だけでなく他店の製品在庫確認も可能となったため、迅速な対応につなげられる。
さらに6月には、来店客の肌状態をわずか10秒で解析する最新機器「スキンチェックスコープ」を用いた肌カウンセリングサービスを直営店舗に導入した。肌表面を自動で撮影し、素肌美の重要な要素とされる「うるおい」「キメ」「ハリ」「透明感」の状態を数値化することで、「今」の肌バランスが分かる。従来は約3分かかっていた解析時間の大幅な短縮や解析項目の追加により、肌状態や季節変化などによる肌トラブルに合わせたスキンケアを提案する。
また、自社のメンバーズアプリと連携し、顧客がアプリのマイページでいつでも診断結果などを見ることが可能になった。過去2年間、最大30回分のスコア推移や、直近撮影した肌画像を確認できる。
わずか10秒で肌状態を解析できる(出典:ファンケル)
まとめ
ファンケルをはじめ、スキンケアやサプリメントを扱う通販・EC企業を取り巻く環境は厳しさを増している。韓国コスメといった海外ブランドの台頭や機能性製品の増加、少子化によるコアターゲット層の減少、広告費高騰による費用対効果悪化などのマイナス要素が圧し掛かる。中でも、製品市場成熟によるコモディティ(一般)化で差別化が難しくなった結果、消費者の商品選択基準が低価格寄りになってしまうという課題がある。
ただ、ファンケルのように通販黎明期から顧客分析を手がけトライ&エラーで知見を積み上げてきた企業は、EC全盛期においても蓄積されたノウハウが大きな強みとなるはず。引き続き顧客の不安や悩み解消に向けた“顧客理解”を深めていくことで、さらなる成長の道筋が見えてくるだろう。
執筆者/渡辺友絵
【記者紹介】
渡辺友絵
長年にわたり、流通系業界紙で記者や編集長として大手企業や官庁・団体などを取材し、 通信販売やECを軸とした記事を手がける。その後フリーとなり、通販・ECをはじめ、物 流・決済・金融・法律など業界周りの記事を紙媒体やWEBメディアに執筆している。現在 、日本ダイレクトマーケティング学会法務研究部会幹事、日本印刷技術協会客員研究員 、ECネットワーク客員研究員。
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