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2026.02.02 行政情報

万博効果が後押し?進む「完全キャッシュレス」の導入

「2025大阪・関西万博」における「全面的キャッシュレス決済」の検証結果によれば、当初不安視されたにもかかわらず利用者満足度は90%を超え、店舗の決済業務時間も大幅に効率化したという。経済産業省が毎年公表するキャッシュレス決済比率も目標だった40%を2024年に上回っており、万博効果がさらなる追い風になりそうだ。駅構内やスタジアムにも完全キャッシュレスが導入され、バスなどでも実証実験が本格化する。


キャッシュレス化推進と政府の狙い


政府はキャッシュレス決済比率を2025年までに40%程度へ、将来的には80%を目指す目標を掲げる。経済産業省によれば24年のキャッシュレス決済比率は42.8%と目標を達成し、中でもクレジットカードとコード決済の伸びが目立つ。


ただ国際的には日本のキャッシュレス化は遅れており、政府にとって大阪・関西万博はキャッシュレス化を推進する絶好の機会であったろう。「未来社会の実験場」という万博のコンセプトに基づき、全面的キャッシュレス決済により来場者の行動変容を促すことが大きな狙いだった。


2024年度に決済比率目標を達成した(出典:経済産業省)


大阪万博の「全面的キャッシュレス」で検証結果公表


大阪・関西万博を運営した2025年日本国際博覧会協会は11月、「全面的キャッシュレス運用」の効果検証結果を公表した。累計約2,900万人の来場者が、会場内235店舗で73種類におよぶ国内最多クラスの決済サービスを使った。


キャッシュレス決済手段を持たない人に向け、会場内にはスタッフ常駐のサポートコーナーを設置した。「ATM・チャージ機設置エリア」も設け、外貨両替機や、「交通系電子マネー」「楽天 Edy」「nanaco」「WAON」のプリペイドカードに現金でチャージできる専用機を置いて対応。さらに1,000円をチャージ済みの「楽天 Edy 」プリペイドカードを補助的に販売するといったサポート体制で臨んだ。


キャッシュレス決済に対する来場者の評価は高く、「現金よりも効率的・便利だった」が94%、「使いやすかった」が86%、「キャッシュレスの利用により会場での体験が快適になった」が83%に達した。「今後、日常生活でもキャッシュレス決済を利用したい」は91% となり、万博をきっかけに日常利用へと行動が変化する可能性が示された。


好評だった一方で課題も浮上


店舗側が得られたメリットとして最も多く挙がったのは「業務効率の向上」が約93%で、次いで「セキュリティの向上」が約90%だった。釣り銭対応やレジ締め、売上金の回収・報告といった作業が削減。誤差もなく時短となり、決済関連作業に要する合計時間は現金処理の約10分の1だったという。


さらに、金銭の盗難や紛失リスクの低減が高く評価された。アンケートでは約72%の店舗が「今後もキャッシュレスを取り入れたい」と回答している。一方で、キャッシュレス以外の選択肢がないことへの来場客からの苦情や、システムトラブルによるキャッシュレス利用不能などの問題点が指摘された。


店舗側が行政に期待するサポートについては、キャッシュレスにかかる手数料やコストの補助を求める回答が突出していることが分かった。次いでトラブル対応のサポート体制強化やシステムの改善を求める回答が多く、運営の安定化が求められている。


<「行政に今後期待するサポート」へのアンケート結果>


キャッシュレスにかかる手数料やコストの補助を求める回答が突出(出典:2025年日本国際博覧会協会)


国土交通省はバスで実証実験


近年、深刻な運転者不足に直面するバス業界でも、運行ネットワーク維持や運転者負担軽減を目指し運賃の「完全キャッシュレス化」を推進する。


京王電鉄バスおよび京王バスは2025年10月、国土交通省が進める完全キャッシュレスバスの実現に向け、25年度から本格的な取り組みを始めると発表した。24年度に国土交通省が実施した「完全キャッシュレスバスの実証運行」に参画しており、24年10月と12月に先行して実証運行を実施。27年度までに全営業所での実証運行を順次行い、その後は現金取り扱いを終了させる計画だ。


国土交通省は高速バスを含むすべての路線バスを対象に、25年6月に完全キャッシュレスバス実証運行の公募を始め、計28事業者44路線を選定。ポスター掲示などで告知するとともに、さまざまなキャッシュレス決済手段を導入して利用促進を図っている。


完全キャッシュレスバス実証運行の周知ポスター(出典:国土交通省)

商業施設などでも進む導入



商業エリアや学生食堂、スポーツスタジアムなどでも完全キャッシュレス化が進む。

JR東日本は2025年4月、JR秋葉原駅改札内にオープンしたエキナカ商業施設「エキュート秋葉原」と駅型イマーシブメディア「AKIBA WARP」の決済手段に完全キャッシュレスを導入した。レジ待ち時間の短縮のため、エキナカの一部店舗でモバイル経由の注文・受け取りサービス「JRE MALLオーダー」も開始。事前に注文・決済し受取日時を指定することで、店頭でスムーズに商品を受け取れる。


さらに1台で予約・預入・受取・発送の4機能を有する多機能ロッカー「マルチエキューブ」も駅構内に設置し、サービスの試験導入を始める。「JRE MALLオーダー」した商品をロッカーで受け取れるため、レジに並ばずに済む。


秋葉原エキナカでの購買体験予想図(出典:JR東日本)


大学食堂の完全キャッシュレスに踏み切ったのは関西大学だ。25年4月の「ビジネスデータサイエンス学部」の新設とともに「吹田みらいキャンパス」に設置した食堂を、完全キャッシュレスで運営する。


スマホからのモバイルオーダーや食堂に設置した端末から注文するセルフレジシステムを利用する仕組みで、現金は使えない。トラブルは皆無で、約85%がモバイルオーダーを利用している。


オーダー後は席について呼び出しを待つだけなので発券機や受け取りカウンターに列ができず、学生・運営側とも時間短縮や効率化につながる。このセルフレジシステムは東京理科大学の食堂にも導入されている。


定着しつつあるスポーツスタジアム



スポーツスタジアムで完全キャッシュレスに早々と着手したのは「楽天モバイルパーク宮城」で、2019年4月にスタート。チケット・グッズ・飲食などすべての支払いはコード決済や電子マネー、クレジットカード、楽天ポイントで行う。


幅広い決済手段を持つ楽天だからこそ先行できたとも言え、独自の割引やキャンペーンなどを展開して楽天経済圏のお得感をアピール。来場者の満足度も高く、すっかり定着したといえそうだ。


「東京ドーム」も22年3月に実施したリニューアルを機に、顔認証システムと完全キャッシュレスを導入した。売店や客席販売、場内チケットカウンターなど施設内では現金が使えず、コード決済や電子マネー、クレジットカードで支払う。巨人戦では観客席からスマホで売店に注文できるモバイルオーダーサービスも利用でき、こちらもオンラインで決済する。


当初は賛否両論があったものの、年配層にも浸透しているSuicaなどの交通系ICカードも使えることや、ICカードに現金チャージできる機械を設置するなどで対応。運営は軌道に乗ったとみられる。


24年10月にオープンしたジャパネットグループの「長崎スタジアムシティ」も施設内の完全キャッシュレスをうたう。計画的・段階的に進めてきた取り組みで、試合・ライブの予約や決済機能などを備えた専用公式アプリを開発。シティ内で利用できるオリジナル決済サービス「スタPAY」を同アプリに搭載する。各所に現金チャージ・キャッシュバック専用機も設置し、家族連れなどに対応している。


シティ内のホテルには、チェックイン手続き、精算、ルームカードキー発行までワンストップで対応可能なセルフチェックインシステムを導入。予約番号などで検索後に表示された内容を確認のうえ画面上で署名し、クレジットカードや電子マネーなどで支払う。


専用アプリも開発し完全キャッシュレスで対応する「長崎スタジアムシティ」(出典:ジャパネットホールディングス)


まとめ



経済産業省は2027年までにキャッシュレス決済比率を約60%まで引き上げるという新たな目標を掲げており、今後も政府主導のもとで完全キャッシュレスは加速するだろう。ただ、完全キャッシュレスが概ね成功した大阪・関西万博においても、決済手数料などコスト負担の重さや、トラブル時の対応など運営面の安定化が課題として残った。


さらに決済手段の乱立によるオペレーションの煩雑化や入金サイクルの長さなど、中小事業者のキャッシュレス化を阻む要因はほかにもある。消費者側では、ITリテラシーが追い着かない一定層の存在をはじめ、不正利用や個人情報漏洩などセキュリティ面での不安が大きい。


店舗や事業者には金銭面やオペレーションの負担を軽減し、消費者には安全面での信頼を高めることが、キャッシュレス比率を拡大していくためのカギとなりそうだ。


執筆者/渡辺友絵




【記者紹介】
渡辺友絵
長年にわたり、流通系業界紙で記者や編集長として大手企業や官庁・団体などを取材し、 通信販売やECを軸とした記事を手がける。その後フリーとなり、通販・ECをはじめ、物 流・決済・金融・法律など業界周りの記事を紙媒体やWEBメディアに執筆している。現在 、日本ダイレクトマーケティング学会法務研究部会幹事、日本印刷技術協会客員研究員 、ECネットワーク客員研究員。



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