2026.10.13 通販支援
最安値の店が、最安をやめている 楽天で値上げした出品の半数以上は、その商品の最安値だった
連載「AIに選ばれる商品 ― 実測データで読む」第3回
2026年8月から9月にかけて、楽天市場で同じ商品を3店以上が売っている商品を追いました。本体価格を上げた出品が997件あり、そのうち57.2%は、値上げの前にその商品の最安値だった出品です。ほかの店の価格の中央値より5.9%安かった価格が、値上げによって4.3%高い側へ移りました。そして同じ商品を売るほかの出品の81.0%は、3日たっても価格を変えていません。前回は、ふだんの楽天では値下げより値上げのほうが多いことを示しました。第3回は、その値上げを誰がしているのかを見ます。
1. 値上げしているのは、どんな店か
前回(第2回)は、楽天市場のランキング掲載商品の価格を毎日記録した結果から、ふだんは値下げより値上げのほうが多いことを示しました。2026年8月28日から31日の3日間で、本体価格を上げた商品は1.77%、下げた商品は1.42%です。
では、その値上げは誰がしているのか。値上げというと、相場より高い価格をさらに上げる動きを思い浮かべます。実際は逆でした。
2. 何を測ったか
楽天市場のジャンル別ランキングに掲載された商品を、毎日1回、朝6時台に記録しています。そこから、同じ商品(同じJAN)を3店以上が売っている商品を取り出し、どれか1つの出品が本体価格を3%以上上げた日を拾いました。期間は2026年8月18日から9月29日のうち、セール以外の24日です。
該当したのは997件、917商品、381店です。対象にした商品は、1つの商品をおよそ6店が売っています。
上げ幅は中央値で10.0%でした。1,000円の商品なら100円上がった計算です。
楽天スーパーセールとお買い物マラソンの期間は外しています。セールが終わると期間設定が切れて元の価格に戻りますが、これは値上げではありません。混ぜるとふだんの判断と区別できなくなります。
比べるのは同じJANの中だけです。入数の違う商品が同じJANで登録されていることがあるため、商品名と価格の離れ方で取り除きました。価格は本体価格(最小SKU価格)で、ポイントは含みません。代表値はすべて中央値です。
3. 値上げした出品の半数以上は、その商品の最安値だった
値上げした出品が、同じ商品を売るほかの店と比べてどの価格帯にいたのかを数えました。
【図表①:値上げした出品は、値上げの前にどの価格帯にいたか(891件)】
値上げの前にその商品の最安値だったのが57.2%。中央値より安い側まで含めると75.1%です。値上げした出品の4分の3は、もともと安い側にいました。
上げたあとの位置も見ておきます。ほかの店の価格の中央値と比べると、値上げ前は5.9%安い側、値上げ後は4.3%高い側です。同じ商品を売るすべての店より高くなったのは36.3%でした。
そして値上げした出品の96.4%は、3日たっても値上げ後の価格のままでした。一時的に上げて戻す動きではありません。
起きているのは、値上げというより最安値からの撤退です。安い側にいた出品が、相場の少し上まで価格を戻している。
4. ほかの店は、動かない
同じ商品を売るほかの出品が、値上げの後にどうしたかを見ます。
【図表②:1つの出品が値上げした後、同じ商品のほかの出品はどうしたか】
同じ日にほかの店も上げている場合を除き、1店だけが値上げしたケースに絞ると、3日後に据え置いていたのは89.6%、追随して上げたのは6.7%でした。
据え置いた出品との価格差も変わります。値上げ前は値上げした側が6.6%安い位置にいましたが、3日後には1.4%高い位置に移りました。追い越した形です。それでも、据え置いた側は動いていません。
価格を毎日確認している担当者でも、探しているのはふつう相手が下げたかどうかです。下げられると自分の売れ行きに響くので、すぐ気づきます。上げられた場合は自分の売れ行きが急に落ちるわけではないので、気づかないまま過ぎやすい。この非対称が数字に出ています。
5. ただし、値上げした側は売れ行きを落としている
ここは、はっきり書いておきます。
値上げした出品の推定販売数は、値上げの前後10日で比べると中央値で48.5%落ちました。落ちなかったのは29.7%(424件のうち126件)です。
ただし、この期間は市場全体が落ちています。価格を変えなかった出品でも、同じ日付の前後で落ちなかったのは42.5%(中央値で19.5%減・9,128件)でした。比べると値上げした出品のほうが落ちやすい、という差です。
同じ商品の中での取り分(販売数のシェア)で見ると、差はほとんどありません。シェアが落ちなかったのは、値上げした出品で42.5%、価格を変えなかった出品で44.3%です。表示順位は、前後とも順位がついた297件のうち、下がらなかったのが41.4%でした。
つまり「値上げしても売れる」という話ではありません。販売数で見るか、シェアで見るかで、見え方も変わります。それでも96.4%の出品が価格を戻していないことのほうが、この集計では目を引きます。売れ行きを落としてでも最安値から降りる判断をした店が、一定数いるということです。
6. 測れなかったこと
原価が分かりません。だから「据え置いた店は利益を取り逃している」とは言えません。値上げした店は仕入れ値が上がったのかもしれず、据え置いた店はもっと安く仕入れているのかもしれません。
販売数は在庫の増減からの推計です。どちらが多く売れたかを比べるためにだけ使い、金額は出していません。
値上げの理由は価格の記録からは分かりません。仕入れ値、在庫、社内の価格の決まり、どれも読み取れません。
売れ行きは、販売数で見るかシェアで見るかで結論が変わります。本稿は両方を出しました。
7. 自分の店で確かめる手順
同じ商品を他店も売っている商品を出します。JANで照合し、JANがない商品は型番で照合します。
その中で、自分が最安値になっている商品を抜き出します。
ほかの店が本体価格を上げた商品を拾います。セールやお買い物マラソンが終わった直後に上がったものは、期間設定が切れただけなので外します。
3のうち、値上げした出品が1週間たっても価格を戻していない商品を見ます。戻していなければ、その店は売れ行きを落としてでも価格を変える判断をしています。
その商品で自分がまだ最安値のままなら、相場の位置が動いた可能性があります。
まとめ
楽天で起きている値上げの半分以上は、その商品の最安値だった出品によるものでした。相場より5.9%安い位置にいた価格が、4.3%高い位置へ移り、その96.4%は3日たっても戻っていません。売れ行きは落ちています。それでも戻していません。
いっぽうで、同じ商品を売るほかの店の8割は、3日たっても1週間たっても価格を変えていませんでした。価格の変化は、下げには伝わり、上げには伝わりません。
自分がまだ最安値でいる商品は、その位置を選んだ結果なのか、相場が動いたことに気づいていないだけなのか。この2つは、毎日の記録がないと区別できません。
記事末・関連資料
▼本稿のもとになった実測データを、図表つきでまとめた資料です(無料ダウンロード)
楽天スーパーSALE 2026年9月 実測レポート|148,560商品の価格を毎日記録してわかった、値下げと順位の関係
▼10月15日(木)のECカンファレンス2026 Autumnに登壇します
年末商戦、その値下げは追うべきか ― 競合価格×検索順位で決める「守る商品・攻める商品」(13:45〜14:15)
筆者プロフィール
株式会社リスマ 代表取締役 木村 洋介
三越伊勢丹、KDDI(モールEC運営)を経て2021年に株式会社リスマを創業。競合価格・検索順位・在庫を国内外のサイトから毎日自動収集するECリサーチAI「Smapra」を提供し、EC事業者の値付け・品揃え・改善の意思決定を支援している。
https://smapra.com
※「資料掲載企業アカウント」の会員情報では「通販通信ECMO会員」としてログイン出来ません。
資料DLランキング
-
1
TikTok Shopとは?主要機能と日本での始め方を解説|公式認定パートナー
-
2
【モールハック】TIKTOKSHOP 意図的なバズを生む法則
-
3
【AIタッガー】SEO×GEO AI検索時代の“見つかる力”を最大化
-
4
AI画像生成でEC撮影コストを激減する実践ガイド
-
5
ネット上での調べ物×通販購入時のAI利用実態【消費者調査 2025】
ニュースランキング
-
1
「Yahoo!フリマ」「Yahoo!オークション」、ポケモンカードのカートン単位や空箱の出品禁止
-
2
【10月13日15時更新:物流配送状況】日本郵便/ヤマト運輸/佐川急便/西濃運輸/福山通運
-
3
2025年のカード不正利用被害額が約510億円、10年ぶり前年下回る…かっこ
-
4
ユーチューバーなどのオリジナル商品EC「FANZ」がオープン
-
5
AIの回答だけで日用品やコスメを購入 15~30歳女性の2割以下にとどまる
