EC・通販、ネットショップを支援するメディア

通販通信ECMOニュース・記事調査・統計ECアナリストによる解説シリーズ 『このデータが面白い!』 第12回:ふるさと納税の状況を多面的に解明してみる

2026.10.09 調査・統計

ECアナリストによる解説シリーズ 『このデータが面白い!』 第12回:ふるさと納税の状況を多面的に解明してみる

(株)デジタルコマース総合研究所代表の本谷(もとたに)です。ECアナリストによる解説シリーズ『このデータが面白い!』の、今回のテーマは「ふるさと納税」です。

ふるさと納税の実績について、総務省は毎年夏頃に前年度の結果を公開しています。皆さんご存じの通り、2025年度(2025年4月~2026年3月)の大きなトピックとして「ポイント付与の廃止」がありました。この制度改定については賛否両論が渦巻いたこともあり、2025年度はふるさと納税制度への関心が高まった年でもありました。

そもそも、ふるさと納税の手続きはその大半がネット上で行われています。また寄付者は返礼品という見返りを受け取ることができます。よってふるさと納税はある意味ECであると捉えても不自然ではありません(ちなみに経済産業省発表のEC市場規模にはカウントされません)。したがってふるさと納税の実態を様々な視点で解明し、その状況を理解しておくことは、EC業界の関係者にとって重要であると私は考えています。それでは具体的に見てみましょう。



・対象データ
総務省「ふるさと納税に関する現況調査」
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/archive/


■前回記事

ECアナリストによる解説シリーズ『このデータが面白い!』 第11回:AIから回答を得た後の「再検索」という行動_その実態を知る


2025年度のふるさと納税受入額は前年比4.6%増の1兆3,314億円

はじめに、ふるさと納税受入額(=寄付者による寄付額)について見てみましょう。次のグラフは直近10年間のふるさと納税受入額の推移です。2025年は1兆3,314億円と前年比で4.6%の伸びとなっています。グラフの通り、これまで右肩上がりで上昇していることがわかります。

また2025年度の返礼品調達費用は3,528億円です。返礼品調達費用とは、自治体が寄付者へ提供する返礼品を仕入れるために、事業者へ支払った代金(原価)のことです。私はいくつかの情報から返礼品の約8割が食品と推定しています。したがって約2,800億円が食品の返礼品調達費用ということになります。言い換えれば、地方産品の食品ECが実は2,800億円分存在しているとも言えます。



ふるさと納税受入件数は2年連続で横ばい

続いて、ふるさと納税受入件数(=寄付件数)、および1件あたりの受入額(=寄付額)について見てみましょう。なお後者の数値について総務省は発表していないため、受入額を受入件数で割り算して求めました。

ふるさと納税受入件数ですが、2025年は5,963万件となっています。2023年までは件数は毎年伸びていましたが、2024年、2025年は横ばいとなっていることがわかります。前述の通り2,025年の受入額は前年比で4.6%の伸びでした。しかし受入件数は増えていません。それでも受入額が伸びたのは、1件あたりの受入額が上昇したことがその理由です。

2年連続で受入件数は横ばいです。2025年はポイント付与が廃止になった制度改定がありましたが、今後受入件数がどのように変化するのか注目されます。



都道府県別ランキングでは上位と下位はほぼ固定化

続いて、都道府県別の受入額について触れたいと思います。不動のトップは北海道で1,887.7億円です。続いて宮崎県、福岡県、静岡県、山梨県となっています。北海道はもとより、これらの上位県は常連化しています。

反対に下位県ですが、最下位から順に徳島県、富山県、奈良県、山口県、島根県となっています。毎年順位は微妙に変化しますが、下位の顔ぶれもほぼ固定化しています。ちなみにトップの北海道と最下位の徳島県は約43倍です。ふるさと納税では都道府県格差がいかに大きいか、よくわかります。

なお(株)ブランド総合研究所発表の「地域ブランド調査2025」によれば、食品想起率のトップ10には青森県、香川県、広島県がランクインしています。しかしふるさと納税受入額ではご覧の通り下位に位置しています。このことから、必ずしも食品に関する人気度がふるさと納税受入額に直結しているわけではないと言えそうです。



地域別で見ても格差あり_カギは支援系事業者の存在?

ふるさと納税受入額に基づき、都道府県別のヒートマップを作成してみました。色が濃いほど受入額が大きいことを意味しています。北海道は脇に置くと、九州が全体的に濃い色となっています。反対に、中国・四国地方は薄い色となっており、受入額が大きくありません。同様に北陸3県+近畿地方の一部、および北関東+福島県も受入額は大きくありません。このように、地域別に見ても受入額に大きな差があることがわかります。

ふるさと納税制度によって収入を得たいと自治体は多いでしょう。しかしこのような格差はなぜ生じているのでしょうか? 私はコンサル企業、広告代理店、企画会社、マーケティング会社といった「支援系事業者」の存在がキーのように思っています。それぞれの地域にはそのような支援系事業者は存在しているでしょう。しかしクオリティの高い業務をこなせる支援系事業者の絶対数が少ないなどの課題があるのではと、私は予想しています。

前述のように、必ずしも食品の人気度がふるさと納税受入額に直結しているわけではないようです。全国的にはふるさと納税受入件数が頭打ちとなっていますが、やり方によってはまだ伸びる余地が大きい自治体は多いように思われます。



ふるさと納税受入額のうち自治体が受け取ることができる金額は約半分

ふるさと納税受入額の費用内訳についてもチェックしておきましょう。最も大きいのは「返礼品調達費用」です。これには受入額の3割ルールがありますが、実際には3,528億円と全体の26.5%を占めています。次に大きいのは「事務に係る費用」で1,804億円と全体の13.6%を占めています。

それ以外には「返礼品等の送付費用」「決済等に係る費用」「広報に係る費用」「その他」で合計1,050億円となっています。費用を差し引いた残りが、自治体が受け取ることのできる「正味受入額」ですが、6,932億円と全体の52.1%に過ぎません。当コラムはふるさと納税制度の是非を問うものではありませんが、同制度に疑問を呈する理由として、この点を挙げる方は多いように見受けられます。



自治体から見たふるさと納税のビジネスモデル

最後に、ふるさと納税を自治体から見たビジネスモデルとして整理したいと思います。私はふるさと納税には3つのビジネスモデルがあると見ています。第一は、農水産物など地域にもともとある資源を生かす「特産品販売型」です。これが最もオーソドックスなスタイルで、大半のケースはこれに相当します。

第二は、地域内で加工・製造することで新たな価値を生み出す「加工付加価値型」です。そして第三はその発展形として、ふるさと納税を活用して商品開発や設備投資、新規事業を後押しする「産業投資型」です(※以下の表を参照)。

地域に有力な名産品が少なくても、加工や商品開発、産業育成によって、新たな返礼品を生み出すことはできます。ふるさと納税は、既存の特産品を奪い合うだけの頭打ち市場ではないと私は考えています。自治体の発想と取り組み次第で、地域に新たな付加価値や産業を生み出し、さらなる成長につなげられる可能性があるのではないでしょうか。



以上


【筆者プロフィール】

本谷 知彦(もとたに ともひこ)

株式会社デジタルコマース総合研究所 代表取締役  ECアナリスト


シンクタンク大和総研にて国内外の産業調査・コンサルティング業務にチーフコンサルタントとして従事。EC業界のスタンダードな調査レポートである経済産業省の電子商取引市場調査を2014年から2020年にかけて7年連続で責任者として手掛ける。その他日本政府の調査研究案件の実績多数。

2021年末に同社を退職し2022年初に株式会社デジタルコマース総合研究所を設立。EC市場の調査研究はもとより、豊富なデータに基づいた消費財のマーケット分析や事業戦略のアドバイス、および講演・執筆活動等を行っている。






※「資料掲載企業アカウント」の会員情報では「通販通信ECMO会員」としてログイン出来ません。

ログイン/会員登録

通販通信ECMO(エクモ)会員
ログイン

パスワードをお忘れの方へ

資料掲載企業ログイン

パスワードをお忘れの方へ

ダウンロードするにはログインが必要です。

旧「通販通信」サイトの会員情報では通販通信ECMO(エクモ)会員としてログインできません

パスワードをお忘れの方へ
会員登録されてない方 通販通信ECMO(エクモ)会員
(無料登録)

「資料掲載企業アカウント」では個別資料のダウンロードはできません
上記(無料登録)をクリックして登録してください。

※旧「ECマッチング」サイトの「ECマッチング会員(ECサイト運営者)の会員情報は、そのまま通販通信ECMO(エクモ)会員としてご利用いただけます。

イベント・セミナー予約するにはログインが必要です。

旧「通販通信」サイトの会員情報では通販通信ECMO(エクモ)会員としてログインできません

パスワードをお忘れの方へ
会員登録されてない方 通販通信ECMO(エクモ)会員
(無料登録)

「資料掲載企業アカウント」ではイベント・セミナー予約はできません。上記(無料登録)をクリックして登録して下さい。
※旧「ECマッチング」サイトの「ECマッチング会員(ECサイト運営者)の会員情報は、そのまま通販通信ECMO(エクモ)会員としてご利用いただけます。

記事の続きを読むにはログインが必要です。

旧「通販通信」サイトの会員情報では通販通信ECMO(エクモ)会員としてログインできません

パスワードをお忘れの方へ
会員登録されてない方 通販通信ECMO(エクモ)会員
(無料登録)

「資料掲載企業アカウント」では記事の全文閲覧はできません。上記(無料登録)をクリックして登録して下さい。
※旧「ECマッチング」サイトの「ECマッチング会員(ECサイト運営者)の会員情報は、そのまま通販通信ECMO(エクモ)会員としてご利用いただけます。