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2026.06.17 ECモール

「AIエージェント」導入を急ぐ大手ECプラットフォーム、狙いや勝算は?

大手ECプラットフォームで、AIエージェントの本格導入が急速に進んでいる。AIが検索・比較などを代行する同サービスはECをはじめ幅広いジャンルの企業にも広がっており、AIが購買の意思決定や実行までをサポートする「エージェンティックコマース」へと進みつつある。大手ECプラットフォームにおける最新の取り組みを見ていこう。


世界中でAIエージェントの市場規模が急拡大

カナダとインドを拠点とする市場調査会社Precedence Researchは、世界のAIエージェント市場規模が2025年に79億2,000万米ドル、2034年には約2,360億3,000万米ドルに達すると予測する。

日本でも大手企業では問い合わせ対応や書類チェック、調査・情報収集、人材育成、商品開発など、すでに多くの業務でAIエージェントを積極活用する動きが目立つ。さらに、ここに来て急速に増えているのが、ECを手がける大手プラットフォームによるAIエージェントの本格導入だ。

ユーザーの要望や条件をもとに、商品の検索や比較、絞り込み、提案、場合によっては購入手続きのサポートまでを迅速に行う。さらに、蓄積されているユーザーの履歴情報に沿って提案する「パーソナライズ機能」の搭載も増えつつある。


LINEヤフーは「Yahoo! JAPAN」と「LINE」の共通AIをリリース

LINEヤフーは2026年4月、これまで提供していた「Yahoo! JAPAN」の「AIアシスタント」と「LINE」の「LINE AI」を統合し、AIエージェントの新ブランド「Agent i」をリリースした。「LINE」と「Yahoo! JAPAN」からシームレスにアクセスできるサービスで、ユーザーとの会話を通じてAIエージェントが最適な選択肢を提案する。

LINEヤフーの100を超えるサービスから得られる独自データを適切に活用し、多様な選択肢を用意。「LINE」の各タブや「Yahoo! JAPAN」の検索窓横に「Agent i」アイコンが表示され、ワンタップするだけでアクセスが可能となる。

商品選びをサポートする「お買い物」、観光モデルコースやおでかけプランを手軽に作成できる「おでかけ」、「Yahoo!天気」と連動した「天気」など7種類の領域からスタート。その後6月に機能を拡大し、「学び」「くらし」「エンタメ」など7種類の領域エージェントを加えた。

また、新たに「画像生成機能」やAIによる会話の「トーン設定」、ユーザーとの会話内容をもとに情報や好みを記憶する「パーソナライズ機能」を盛り込んだ。「画像生成機能」は希望内容をテキスト入力することで画像を生成でき、アップロード画像の加工・修正も可能。「トーン設定」はAIによる回答のトーンを、ユーザーの好みに合わせて「フレンドリー」「執事」など10種類から選べる。「パーソナライズ機能」は、「Agent i」がユーザーとの会話の中から役立つ情報を選び自動でメモリに保存。会話を重ねるほどユーザーの好みや状況を理解するため、より的確な回答につながる。

「Yahoo!ショッピング」では2026年2月から、ユーザーの属性や購入履歴をもとにした商品選びをはじめ、注文後の配送状況確認まで一連の購買行動をAIエージェントがサポートする「Yahoo!ショッピング エージェント」を導入。ユーザーの過去の利用状況などを活用し、一人ひとりに合った商品を提案している。お得情報や購入タイミングの提案、配送予定日や送料の確認などにも対応し、お気に入り登録商品の価格が後日下がったタイミングでLINE通知を出すなど継続的なフォローも行う。

5月には「Yahoo!ショッピング エージェント」の機能拡充の第一弾として、複数の商品をAIが自動で比較・整理する商品比較機能「AIおまかせ比較」の提供を開始。気になる商品を起点に「早く届く」「価格が安い」「壊れにくい」などの条件を選ぶと、AIが自動的に約15~20商品を比較して最適な商品を提案する。

さらに、OpenAIが提供する対話型AI「ChatGPT」の新機能「Apps in ChatGPT」と「Yahoo!ショッピング」のアプリ連携を開始。総合ECモールでは初めてで、ユーザーはChatGPT上での会話を通じ「Yahoo!ショッピング」の商品情報をシームレスに取得できるようになった。


新ブランドとなるAIエージェントの提供を開始(出典:LINEヤフー)


流通総額10兆円を目指し「AI超活用」を進める楽天

楽天の三木谷社長は2026年1月開催の「楽天新春カンファレンス2026」において、流通総額10兆円達成には「AI超活用」が特に重要と強調。AIを使っている企業と使っていない企業では成長率が約1.7倍違い、AIエージェントの性能は7カ月ごとに倍増すると語った。

同社はエージェント型AIツール「Rakuten AI」を2025年7月に楽天モバイルの「Rakuten Link」に搭載し、12月には「楽天市場」のスマートフォンアプリにも導入。「楽天市場」のAIエージェントがユーザーとの対話を通じてニーズを理解し、商品選びをサポートできるようになった。今後はユーザーごとのマーケティングデータを活用し、一人ひとりにパーソナライズされた商品提案を目指すとしている。

同社の強みは「楽天市場」の購買データにとどまらず、旅行や金融などグループ全体の「楽天エコシステム」が持つ多様なデータを活用できることだ。これらを生かし、楽天ならではの分析やレコメンドを通じて他社との差別化につなげることができる。

「楽天トラベル」は2026年4月、ユーザーに最適な宿泊施設を提案するAIエージェント「Rakuten AI」に、新たに予約機能を追加した。ユーザーはAIに伝えた希望条件に合致する複数の候補から最適な宿泊施設やプランを選び、希望条件を確認のうえ予約ボタンから簡単に予約できるようになった。「エージェンティックコマース」に一歩近づいた形と言えそうで、今後は宿泊施設の閲覧・予約履歴に基づき提案するなどユーザーごとにパーソナライズ化を進める。

6月に開催した大型セールイベント「楽天スーパーSALE」では、AIを活用した買い物体験を強化。特設ページには新たに「Rakuten AI」のアイコンを設置し、AIエージェントが最適なセール商品選びをサポートした。


「楽天トラベル」ではAIが予約ボタンまで誘導してくれる(出典:楽天グループ)


アマゾンは「Alexa」などを組み合わせたAIサービスを米国で開始

米アマゾンは2026年5月、ECの買い物をサポートするAIサービス「Alexa for Shopping」の導入を米国で発表した。豊富な商品知識を有するAIサービス「Rufus」と、ユーザーの要望をもとに応答する音声AIアシスタント「Alexa+」という自社の2つの既存AIを組み合わせた。アマゾン公式サイトの検索バーやショッピングアプリで利用できるが、現状ではまだ米国ユーザー向けサービスとみられる。

アマゾンの商品情報やネット上の情報、ユーザーの閲覧・購買履歴、「Alexa+」との会話内容などをもとに、各ユーザーに沿った提案を行う。商品比較やカートへの追加、最大1年分の価格履歴の表示、定期購入の自動化、セール時の通知設定などが可能だ。アマゾンによれば、「Rufus」は2025年に3億人以上の顧客にサービスを提供しており、「Alexa+」と組みわせることでよりパーソナルなショッピング体験につながるという。


最大1年間の製品価格履歴を確認できる(出典:米アマゾン)


携帯電話プラットフォームでAIエージェントを活用するドコモ

携帯電話プラットフォームという独自分野でAIエージェントの導入に着手したのがNTT ドコモだ。新たなパーソナル AI エージェント「SyncMe(シンクミー)」のパイロット版モニター募集を2026 年3月から開始。この先行公開を通じてモニターから得た意見や感想をもとにサービスをブラッシュアップし、夏頃には全ドコモユーザーに「シンクミー」を提供する。

「シンクミー」最大の強みは、dアカウントに蓄積されたユーザーのパーソナル情報を活用できることと言える。住所や生年月日をはじめ、dカードやd払いによる決済情報やdポイントの取得情報、毎日の位置情報などが蓄積されており、これらをプロファイリングしていくことで高度なユーザー分析が可能となる。

その結果や傾向を確認しながら、対話型キャラクターの「ワラピィ」がユーザーとの会話を担う。対話によりユーザーへの理解が深まっていくため、使えば使うほどパーソナライズ化が進むという。バックグラウンドでの情報収集はもう一つのキャラクター「ヨミドーリ」が行うという設定で、親しみやすさを強調する。

さらにユーザーが撮影した複数枚の写真を分析し、言語化しにくい感性や好みを推定。会話や写真による蓄積結果をdアカウントのユーザー情報と組み合わせることで、プロファイリングを進める。

現時点のサービスは、会話を通じてワラビィが情報提供する内容にとどまる。他のECプラットフォームのようなエージェント機能は有していないが、今後どのように進化させていくか注視したい。


抽選で先行モニター5,000名を募集した(出典:NTTドコモ)


まとめ

このようにAIエージェントの台頭は目覚ましく、それに伴いECプラットフォーム出店者の意識も変化せざるを得ない。想像力や補完能力がある人間とは違い、AIに選ばれるためには、評価に値する正確かつ精緻なデータを論理的・戦略的にそろえておくことが必須となる。

AIエージェントが自律的に購買までを担う「エージェンティックコマース」は、日本ではまだ実装の黎明期といえる。ただ近い将来、おそらくECプラットフォーマーがけん引役となり、AIエージェントの性能は「購買代行AI」へと進化していくだろう。


執筆者/渡辺友絵


【記者紹介】
渡辺友絵
長年にわたり、流通系業界紙で記者や編集長として大手企業や官庁・団体などを取材し、 通信販売やECを軸とした記事を手がける。その後フリーとなり、通販・ECをはじめ、物 流・決済・金融・法律など業界周りの記事を紙媒体やWEBメディアに執筆している。現在 、日本ダイレクトマーケティング学会法務研究部会幹事、日本印刷技術協会客員研究員 、ECネットワーク客員研究員。



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