2026.06.05 通販支援
既存売上は5倍、利益は4倍に。ファストノットがDM0と進めたCRM改革とは?
強着圧レギンス「BELMISE」のD2Cを展開するファストノットが、売上高100億円を突破するなど急成長を遂げている。そんな同社はCRMに課題を抱えていたが、ダイレクトマーケティングゼロ(DM0)の支援を受けながらCRMの再設計を進め、既存顧客向け売上を5倍に拡大。利益も約4倍に伸ばしたという。背景にあったのは、LINEやメール中心の“力技”の運用から脱却し、顧客理解を起点にチャネル横断で施策を組み立てる体制への転換だった。ファストノットの齊藤駿社長、マーケティング事業部の大森翔氏、CRM事業部の西岡昴輝氏、そしてDM0の田村雅樹社長に、導入前の課題や成果につながった具体施策などについて聞いた。
左からファストノット 齊藤駿社長、DM0 田村雅樹社長、ファストノット マーケティング事業部 大森翔氏、ファストノット CRM事業部 西岡昴輝氏
「リストはあるのに活かせていない」状態からスタート
――まず、DM0の支援を受ける前、どのような課題があったのでしょうか。
ファストノット 齊藤駿社長(以下、齊藤):一番大きかったのは、顧客リストを持っているのに、CRMとして活かし切れていなかったことです。データが整っていない、分析手段もない、戦略設計も弱い。結果として、LINEとメールで新商品を案内して売る、という“力技”の運用に寄っていました。
DM0 田村雅樹社長(以下、田村):最初にお話ししたときも、「かなり顧客資産を持っているのに、もったいない状態だな」という印象でした。まずは全体像を把握するところから始めましたよね。F2転換率を日別で見るなど、現状把握の基盤づくりから着手しました。
ファストノット CRM事業部 西岡昴輝氏(以下、西岡):現場としても、知見不足を感じていました。既存顧客、離脱顧客、アクティブ顧客といった認識はあっても、F1、F2、LTVといった指標を明確に捉えられていなかったんです。「なんとなくこうだろう」と思っていたことを、分析と施策の両面から言語化してもらえたのは大きかったですね。
導入の決め手は、社内メンバーの成長につながる期待感
――DM0を選んだ理由について教えてください。
齊藤:出会いのきっかけは、紹介者経由で参加したCRM関連のセミナーでした。その後の懇親会で田村さんとじっくり話す機会があり、そこからですね。正直、最初の入口は“飲みニケーション”の良さが大きかったです(笑)。ただ、最終的な決め手はそこだけではありませんでした。紹介してくれた方から、「売上が上がるのはもちろんだけど、社内メンバーのレベルが格段に上がる」と聞いたんです。そこがすごく大きかったですね。外部パートナーを入れるなら、施策を回してもらうだけでなく、社内に知見が残ることが重要だと思っていました。実際にコンサルに入ってもらって、1回目のMTGから「これは楽しい!」と思いましたし、「これは数字が上がるな」と確信しました。
田村:CRMって、単に施策を代行するものではなくて、顧客をどう見るか、数字をどう読むか、仮説をどう立てるか、という考え方を社内にインストールしていくことが大事なんです。そこが変わると、施策の質も変わっていきますからね。
齊藤:以前も外部支援を受けたことはありましたが、決まったフォーマットに沿って施策を回す色合いが強かったんです。CRMは“ナマモノ”だと思っているので、DM0さんは分析の型を持ちながらも、トレンドのキャッチが早く、施策のタイミングやクリエイティブ、切り口を柔軟に変えていく。そこに付加価値があり、他とは大きく違いました。一緒にやらせてもらって良かったと思う点として、スピード感の速さもあります。
左からDM0 田村雅樹社長、ファストノット CRM事業部 西岡昴輝氏、ファストノット 齊藤駿社長、ファストノット マーケティング事業部 大森翔氏
「なぜ離脱するのか」を考える組織へ
――実際に取り組みが始まってから、どのような変化がありましたか。
ファストノット マーケティング事業部 大森翔氏(以下、大森):一番大きかったのは、数字の背景にある理由を考えるようになったことです。新規獲得では、広告、LP、チャットボットといった各接点の数字は見ていましたが、「なぜここで離脱しているのか」「ユーザーは何に迷っているのか」という仮説が浅かった。ミーティングのなかで複数の仮説を引き出してもらい、それをもとに検証できるようになったのは大きな変化でした。
田村:たとえば価格表示の見せ方もそうでしたよね。
大森:はい。LPでは1枚あたりの価格を強く見せていた一方、確認画面では総額が前面に出ていた。そのギャップが離脱要因になっているのではないか、という仮説が出て、表示の整合性を見直しました。その結果、確認画面での離脱改善につながりました。単にUIを変えるのではなく、ユーザー心理を踏まえて設計することの重要性を学びました。また、得た知見を他の施策にも転用できるようになりましたね。
西岡:部署をまたいだ視点が増えたのも大きいです。以前は新規とCRMで分けて考えがちでしたが、今は「1人の顧客がどんな広告に触れ、どこで迷い、購入後にどう感じるか」という流れで見られるようになった。顧客体験を一気通貫で捉える視点が、社内に根づいてきたと思います。ただ、最初は理解するのに必死でした(笑)。
齊藤:DM0さんと一緒にやるとスタッフが伸びる、とはどういうことなのだろうかと思っていましたが、思考の仕方や思考の深さが大きく変わったなと実感しています。
左からファストノット CRM事業部 西岡昴輝氏、ファストノット 齊藤駿社長、ファストノット マーケティング事業部 大森翔氏
既存顧客が新規広告経由で再購入→利益を圧迫していた構造を是正
――数字面での成果はいかがでしたか。
齊藤:かなり変わりました。利益ベースでは約4倍の改善が見られています。特に大きかったのは、既存顧客の購入構造の見直しです。以前は既存顧客の一部が、新規向けWeb広告を再度踏んで購入してしまっていた。これが利益を圧迫していました。
田村:初期分析でも、既存顧客が広告経由で買っている比率がかなり高かったですよね。
齊藤:そうですね。既存顧客のうち、約3割が新規広告経由で再購入していた時期もありました。これはかなり非効率です。そこで、既存顧客に対する接触頻度を上げ、既存チャネルで自然に買ってもらう流れをつくっていきました。
西岡:その象徴がDM施策でした。2025年3月に初回で3万通を発送し、DM到着に合わせてLINEやメールも連動させるクロスメディア施策を実施しました。その結果、既存顧客向けのCRM経由売上は5倍と大きく伸びました。
田村:分析でも面白い結果が出ました。DM送付の有無、LINE ID連携の有無、メール開封の有無で顧客を分けて見たところ、ロイヤル層ではレスポンスが4倍、オンラインで反応しにくい層では8倍に伸びました。オンラインだけでは取りこぼしていた層に、オフライン施策が強く効いた形です。
DM0 田村雅樹社長
ワンタイムオファーも成果、「高単価商材では難しい」という固定観念を崩す
――印象に残っている施策はありますか。
西岡:CRMでいうと、サンクスページ起点のワンタイムオファーですね。当社は単価が比較的高く、商品点数も多いため、「購入直後にさらに提案しても売れないのでは」という先入観がありました。でも実際にやってみると、想像以上に反応がありました。
田村:最初はシステム開発を待たず、LINEのあいさつメッセージを活用してスピーディに始めましたよね。
西岡:はい。まずはすぐできる形で始め、その後メールも組み合わせて、期限リマインドや再誘導まで含めたシナリオに広げていきました。CVRはセグメントによっては10%以上になりました。単品購入者に絞ると、さらに高い反応も見られました。固定観念を外して試すことの大切さを実感しました。
齊藤:同梱物の整備も大きかったです。以前は購入後の接点設計が弱く、同梱物もほとんどありませんでした。今はそこにも手を入れ、既存顧客に「既存チャネルで買う理由」をしっかり伝えられるようになってきています。
目指すのは「顧客と近いブランド」、アプローチ可能顧客を45〜50%から100%へ
――今後、どのようなことに取り組んでいきたいですか。
齊藤:売上をつくるのはもちろんですが、その先にあるのは「顧客と近いブランド」になることです。CRMやCSは、お客様との距離が最も近い領域です。今後はコミュニティづくりも進めていきたい。オフィスにお客様が来て、商品や新商品について対話できるような関係性をつくっていきたいと思っています。
西岡:数字面では、今アクティブにアプローチできている顧客は全体の45〜50%程度です。LINE登録者、メール到達者などに限られるためです。ここをできるだけ100%に近づけたい。アプローチ可能な母数が増えれば、新規獲得数が大きく変わらなくても、CRM側で事業の土台をより強く支えられるようになります。
大森:新規側でも、単に獲得件数を追うのではなく、F1時点で黒字化できるチャネルづくりをめざしています。新規とCRMを分けて考えるのではなく、会社全体の利益構造として最適化していきたいです。
齊藤:さらなる成長に向けて、今後もDM0さんと様々な施策に取り組んでいきたいと思っています。
田村:はい!ぜひ一緒にさらなる成長を目指していきましょう。ファストノットさんの強みは、施策を実行するスピードと、学んだことをすぐ次に活かす柔軟性だと思います。CRMは一度仕組みをつくって終わりではなく、顧客理解を深めながら進化させ続けるもの。今後の展開も楽しみです。
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