2026.04.27 通販会社
「家電」を軸としたECビジネスの可能性…ECアワード“総なめ”の背景とは?
「Qoo10 AWARDS 2025」で、家電を中心にEC事業を展開するエクスプライス(東京都墨田区)は出店からわずか2年で、ベストショップに贈られる最優秀賞を受賞した。同社の取締役マーケティング本部長の城守豪氏と、マーケティング本部WEB販売部WEBマーケティング課長の嶋村安一氏に、「Qoo10」に出店した背景や商品戦略、家電を軸としたECビジネスの可能性について話を聞いた。
コスメ・ファッションなどの「Qoo10」に出店した背景
――「Qoo10 AWARDS 2025」で最優秀賞を受賞されました。率直な感想は?
城守豪氏(以下、城守):当社従業員一同がうれしく思っています。これまでにも、各ECモールでさまざまな賞をいただいてきましたが、「Qoo10」では出店から2年で最優秀賞を受賞できました。社員の努力に加え、「Qoo10」のご担当者様が親身になって対応していただいたおかげだと感謝しています。
「Qoo10」はほかのECモールと比べて、ユーザーの属性や施策が異なりますが、それに対応できることを確認できてよかったと思います。
――2年前に「Qoo10」に出店した理由は?
城守:背景として大きかったのは、「Qoo10」には他モールとは異なる顧客層が明確に存在していると考えた点です。トップページにも表れている通り、韓国コスメやプチプラ商材を中心に独自の世界観があり、その中で“Qoo10で購買することが習慣化しているユーザー”が一定数いると見ていました。そのため、当社としても新たな顧客接点を獲得できるチャネルになると判断しました。
一方で、出店当時は非家電商材が中心で売れていると考えていたモールだったため、家電を主力とする当社の商品がどこまで受け入れられるかについては、正直なところ不安もありました。
ただ、実際に出店してみると比較的早い段階で売上として手応えが出てきており、当初の懸念は早期に払拭されました。
また、事前に狙っていたカテゴリについても想定通りに伸びたため、“新規チャネルとしての有効性”と“仮説の妥当性”の両方を確認できた点は大きかったと感じています。
エクスプライス株式会社 取締役マーケティング本部長 城守豪氏
PB商品とNB商品のすみ分け
――貴社は主要家電メーカーのブランドのほか、「MAXZEN」をはじめとしたプライベートブランド(PB)の家電を展開しています。PBブランドの位置づけを教えてください。
嶋村安一氏(以下、嶋村):「MAXZEN」は、“必要な機能に絞り込むことで価値を最大化する”というコンセプトのブランドです。
例えば冷蔵庫であれば“しっかり冷やす”、扇風機であれば“風を送る”といった、本来求められているコア機能にフォーカスしています。一方で、それ以外の付加機能については、お客様にとって必ずしも必要とは限らない部分もあると考えています。
そのため、本当に求められている機能を見極めた上で、過剰な機能をあえて削ることで、品質と価格のバランスを最適化しています。
一般的に国内のナショナルブランド様はミドル~ハイレンジの商品を中心に展開されていますが、その一方で“必要十分な機能で、より手に取りやすい価格帯を求める層”も一定数存在します。「MAXZEN」は、そうしたニーズに対して最適化したブランドだと考えています。
――商品戦略についてもお聞きできますか?
嶋村:当社は創業以来、家電を軸にEC事業を展開してきましたが、現在の商品戦略は“商材を起点に顧客接点を広げていく”という考え方にシフトしています。
家電は単体で完結するものではなく、実際の生活の中ではさまざまな関連ニーズが発生します。例えば洗濯機であれば洗濯洗剤、炊飯器であればお米といったように、使用シーンに応じて必要な商材が派生していきます。
こうしたニーズに対して、家電だけを提供するのではなく、その周辺商材まで含めて提案できる状態を作ることで、お客様の利便性を高めると同時に、購入後の接点も広げていく狙いがあります。
そのため現在は、家電を入口としながら、関連商材を順次拡充しており、結果として総合通販に近い形で商品ラインアップを広げています。
単に取扱商品を増やすというよりも、“商材を軸にした生活提案をどこまで広げられるか”を重視した商品戦略だと捉えています。
エクスプライス株式会社 マーケティング本部WEB販売部WEBマーケティング課長 嶋村安一氏
ECモールと自社通販サイトの位置づけ
――貴社が出店中の各ECモールで、何か違いはありますか?
嶋村:顧客属性については、「Qoo10」は比較的若年層かつ女性のお客様が多く、他モールと比べてもトレンドや価格に対する感度が高い印象があります。この点は明確な違いだと感じています。
一方で、ほかの国内大手モールさんと同様に店舗型のモールであるため、リピート施策やモール内での新規獲得といった基本的な考え方は共通しています。
さらに「Qoo10」の場合、メガ割などの大型イベントに対するユーザーの期待値が非常に高く、売上が特定の期間に大きく集中する傾向があります。「Qoo10」は月の上旬がイベント実施期間となり、売上の大半がその期間で決まるケースが多く、そこでトップラインをしっかり取り切ることが重要になります。その後の期間は、新規獲得というよりもリテンションや積み上げを意識した運用に切り替えています。
――ECモールと自社通販サイトの役割分担、各チャネルの運用施策についてお聞かせください。
城守:基本的に弊社では、自社通販サイトとECモールは“それぞれ異なる顧客にリーチするチャネル”として捉えています。
ECモールは、プラットフォーム自体の認知や信頼性があるため、当社の知名度に関わらず新規顧客との接点を作りやすい点が特徴です。また、“そのモールで購買することが習慣化しているユーザー”にアプローチできる点も重要だと考えています。
イメージとしては、百貨店に出店しているような感覚で、その場所に来る顧客に対して価値提供をしている形です。さらに、今回のようなアワード受賞を通じて“そのモールで評価されている企業”という信頼の獲得にもつながっています。
一方で、自社通販サイトは、価格設定や表現、販促施策まで含めてすべてを自社でコントロールできるため、当社の戦略や考え方を最も反映できるチャネルです。単なる販売の場というよりも、ブランドとしての価値を伝える場として位置づけています。
そのため、役割を分けているというよりは、“それぞれに存在する顧客に対して最適化している”という考え方に近いです。
施策面では、自社通販サイトでは独自のセールやリピート施策を柔軟に設計できる一方で、ECモールでは大型イベントやキャンペーンを活用しながら、露出と売上の最大化を図っています。
“需要の再定義”で潜在ニーズにアプローチ
――EC事業の展開で、貴社が目指していることは?
城守:当社が目指しているのは、“需要を再定義しながら顧客接点を広げていくこと”です。近年、“買い物難民”という言葉に象徴されるように、商品を購入したくても物理的にアクセスできない方も増えています。ECの普及によって一定の解決は進んでいますが、まだ全国すべてのお客様に十分にサービスが行き届いているとは言えないと認識しています。
また、現在は問題なく購買できている30代・40代の方でも、将来的には外出が難しくなる可能性があります。そうした将来も見据えたときに、単に商品を販売するだけでなく、“どう届け、どう使っていただくか”まで含めて設計する必要があると考えています。
その一環として、現在は家電を中心としたビジネスに加え、設置工事などの役務提供にも取り組んでいます。今後はさらにサービス領域を拡張し、商品と役務を組み合わせることで、新たな価値提供につなげていきたいと考えています。
単にモノを売るのではなく、“生活の中で必要とされる形に再定義して提供する”ことが、今後のEC事業の方向性だと捉えています。
――今後の計画を教えてください。
城守:今後の計画としては、大きく2つの軸で考えています。1つは、“顧客と商品をデータで結びつけること”です。現状、販売チャネルごとに施策は最適化していますが、“どのお客様にどの商品が最適か”というレベルでの紐づけまでは十分にできていません。
例えば、炊飯器を購入されたお客様であれば、お米や保存容器といった関連ニーズが自然に発生します。また、エアコンであればフィルター交換やクリーニングといった継続的なニーズもあります。こうした関係性を、実際の購買データに基づいて捉え、継続的にアプローチするところが弱く、今後の1つの課題と認識しています。
もう1つは、“需要の再定義”です。EC市場は拡大しているものの、実態としてはリアル店舗からの置き換えが中心で、需要そのものが大きく増えているわけではありません。
そのため、既存の需要を取り合うのではなく、“使い方や価値の捉え方を変えることで新たな需要を生み出す”ことが重要だと考えています。
例えばポータブル電源は、もともと災害用途が中心でしたが、アウトドア用途としても認知が広がったことで、「普段使いできるものは災害時にも使える」という形で需要が拡張されています。
今後はこうした考え方をベースに、データ活用と掛け合わせながら、お客様1人ひとりの潜在ニーズを捉え、商品提案やサービス設計につなげていきたいと考えています。
これらも今後の計画の1つとして形にし、商品・サービスの両面から新たな価値提供につなげていく方針です。
――ありがとうございました。
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