2026.01.22 調査・統計
『このデータが面白い!』【 第3回】宅配便個数からEC市場規模の伸び具合をさぐる
(株)デジタルコマース総合研究所の代表でECアナリストの本谷(もとたに)と申します。普段はEC市場に関する調査研究や消費財の市場調査、売上予測、競合分析などを行っています。通販通信よりコラム連載の機会を頂き、今回で3回目の寄稿となりました。今回は「宅配便個数からEC市場規模の伸び具合をさぐる」がテーマです。
宅配便大手3社であるヤマト運輸、佐川急便、日本郵便はそれぞれ毎月宅配便個数を自社サイト上で公開しています。3社のシェアは90%以上と高いため(Amazonのような自社配送は除く)、3社合計での宅配便個数の増減を毎月ウォッチすることで、EC市場の状況を知ることができます。私はそれらのデータを毎月チェックすることがライフワークになっており、楽しみに数字を集計しています。さっそく2025年の状況からEC市場規模の伸び具合をさぐってみましょう。
・対象データ
ヤマト運輸: 宅急便・宅急便コンパクト・EAZY・ネコポス・クロネコゆうパケット
https://www.yamato-hd.co.jp/news/ (ヤマトホールディングス株式会社)
佐川急便: 飛脚便
https://www.sg-hldgs.co.jp/ (SGホールディングス株式会社)
日本郵便: ゆうパック・ゆうパケット
https://www.post.japanpost.jp/newsrelease/ (日本郵便株式会社)
・対象期間
2025年1月~10月分を前年比で比較(※執筆時点で3社全て揃う最新が10月であるため)
宅配便大手3社合計の伸び率は2.5%
宅配便大手3社合計の10月までの宅配便個数は38.68億個となりました。前年比で2.5%の伸びです。個社毎に見ると、ヤマト運輸は+2.9%、佐川急便は+0.5%、日本郵便は+4.2%となっており、伸び率では日本郵便の値が高い結果になりました。
続いて、月別での前年比をグラフ化してみたところ次の通りとなりました。合計では+2.5%ですが、月によって変動していることがわかります。2月は-1.3%ですが、これは2024年が“うるう年”であることに起因しています。2024年は1日分多かったので、実質的には2025年2月はプラスということです。
また8月は+1.0%と低い伸び率に止まっています。私が思いつくのはふるさと納税の影響でしょうか。ポイント廃止によって8月と9月は駆け込み需要が高かったわけですが、ECを控えた代わりにふるさと納税を行ったものの、直ぐに配送されないものが多く、その分8月は物数が少なかったのかもしれません。また今年の8月は夏休み需要が昨年より増加した可能性があり、外出機会が増えたことで、ECでの支出がやや控えられたのではと想定されます。
9月に反転しているのは、8月の反動、楽天のスーパーセール、秋物衣料の販売開始など複合的な要素ではないでしょうか。
2024年度の宅配便個数は50.3億個だが、うち半数は“非”ECと想定される
ところで、国土交通省は宅配便大手3社を含む合計21社の宅配便個数を毎年発表しています。こちらはメディアでよく報じられていますので、ご存じの方は多いでしょう。なおこのデータは「年度」であるため、各年4月から翌3月までの数値である点に注意してください。2024年度(令和6年度)は50.3億個でした。
ここで注意していただきたい重要な点があります。2000年度の数値を見てください。25.7億個となっています。2000年度と言えばまだECが今のように定着化しておらず、市場規模はごくわずかであった時代です。つまり25.7億個の中身は、企業間の荷物、ECではない企業から個人に宛てた荷物、およびECではない個人間の荷物ということです。
すなわち、25.7億個とは“非”ECの宅配便です。2024年度は50.3億個ですが、“非”ECの宅配便が2000年度と比較して減ったわけではないでしょう。したがって宅配便個数の実態は、約半分が“非”ECで占められていると思われる点に留意しなければなりません。国土交通省発表の数値をもってEC市場の現状を語る方を時折見かけますが、それは正確ではありません。
2025年のEC市場規模の伸び率は+6%台?
話を戻しましょう。2025年の10月までの宅配便大手3社の宅配便個数が、前年比で+2.5%と述べました。上述の点を踏まえれば、当然このなかには“非”ECが約半数含まれます。とした場合、純粋にECでの宅配便個数の伸び率は、単純計算ですが以下の通りです。
ECでの宅配便個数の伸び率 → +2.5% ÷ (“非”EC比率)50% = 5.0%
さて、この数値をもとに2025年のEC市場規模の伸びを予想してみましょう。話の流れ上、+5.0%と言いたいところですが、ここで次の2点を加味する必要がありそうです。
1点目は自社配送についてです。ご存じのようにAmazonは自社配送体制を整備しています。ヨドバシもそうです。それらの自社配送分はこの数値には反映されていません。Amazonは2025年も勢いがあり(※別の回でお話しできればと思います)必然的に自社配送分の宅配便個数も相当積みあがっていると予想されます。よってそれらを含めると、合計で前年比+5%台後半に届いていると私は見ています。
さらに2点目として物価高騰も加味しましょう。宅配便個数はあくまでも個数であって購入単価は考慮されていません。物価高騰が続いていますので、宅配便個数の増加分以上にEC市場規模は拡大していると見ます。とすれば、EC市場規模は+6%台に確実に乗っていると私は見ています。宅配便個数から導き出す、2025年のEC市場規模の伸び率は+6%台というのが現時点での私の予想値です。
EC市場の状況は実は自力でカンタンにわかる
本コラムの執筆時点で10月までの分しか公開されていませんので、12月分が出揃えば予想の精度は上昇します。またそれ以外に総務省は家計消費状況調査にて、1世帯あたりのネットショッピング支出額を毎月公開しています。それを組み合わせることで、さらに高い精度でEC市場規模の状況を把握することができるでしょう。
本コラムでは「宅配便個数からEC市場規模の伸び具合をさぐる」をテーマに、2025年の実際の伸び率を予想してみました。その結論は出したとして、実は私が今回お伝えしたかったことは、「宅配便個数の変動からEC市場規模の直近のリアルな状態を自力で把握できる」という点です。繰り返しになりますが総務省の1世帯あたりのネットショッピング支出額も含めれば、さらに確かな状況を理解できます。
そしてそれらは無料で公開されているという点が大きいです。個別のURLを調べるのが面倒であれば、生成AIを使うことでカンタンに情報を入手することもできるでしょう。ぜひトライしてみていただければと思います。
以上
【筆者プロフィール】
本谷 知彦(もとたに ともひこ)
株式会社デジタルコマース総合研究所 代表取締役 ECアナリスト
シンクタンク大和総研にて国内外の産業調査・コンサルティング業務にチーフコンサルタントとして従事。EC業界のスタンダードな調査レポートである経済産業省の電子商取引市場調査を2014年から2020年にかけて7年連続で責任者として手掛ける。その他日本政府の調査研究案件の実績多数。
2021年末に同社を退職し2022年初に株式会社デジタルコマース総合研究所を設立。EC市場の調査研究はもとより、豊富なデータに基づいた消費財のマーケット分析や事業戦略のアドバイス、および講演・執筆活動等を行っている。
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