2026.03.05 通販会社
注目集まるパーソナライズ型の「ヘア・スキンケア」サブスク、一方で撤退も
オンラインを通じ、AIなどを活用したパーソナルなヘアケアやスキンケアのサブスクリプションサービスが注目されている。アプリや専用機器、WEBカウンセリングによる診断結果を通じ、顧客ごとの体質や好みに合った製品を提供する。ただ、参入企業や新たなサービス登場する一方で撤退事例も相次ぎ、サービス継続の難しさも浮き彫りになっている。
シャンプーやヘアカラーでサービスが増加
花王は2026年3月からヘアケア事業での初の取り組みとして、頭皮と髪の解析に基づき一人ひとりに合わせたヘアケアプランを継続的に提案するサブスクサービスを始める。「THE ANSWER PROGRAM (ジアンサープログラム)」はヘアケアの知見と、独自研究に基づく新指標「肌遺伝子モード」を融合したもので、入手データをもとにパーソナライズ型プランを提供する。
「THE ANSWER」は同社の100年にわたるヘアケア研究をもとに24年11月に立ち上げたブランドで、新サービスにより顧客ごとの頭皮や髪と継続的に向き合うことが狙いだ。解析にはLINE専用アプリを使い、画像撮影とセルフチェックをもとに肌遺伝子モードや頭皮の肌質、髪の構造、髪の質感の4視点から解析を行う。
組み合わせにより16のヘアタイプを判定し、新たに開発したシャンプー、トリートメント、頭皮用ケアエッセンス、毛髪用アウトバストリートメントを組み合わせた個別のケアプランを提案。45日周期での定期購入型サブスクとして、2品から4品の3プランを展開する。
専用アプリを通じた画像撮影とセルフチェックをもとに解析(出店:花王)
ヘアケアパーソナライズ診断の先駆者といえるSparty(スパーティー)は、18年から提供するサービス「MEDULLA(メデュラ)」で累計600万回以上の診断実績を持つ。髪質、頭皮の状態、髪の悩みといった13問の「WEB髪質診断」を通じた回答にAIなどの専門知識を組み合わせることで、一人ひとりに最適なヘアケアサービスを提案。診断後には個別データに沿って各顧客専用のシャンプーとコンディショナーを専用ラボで手作りし、ボトルには顧客のニックネームを記載する。
24年春には、50万超の診断知見を活用したロジックをもとに独自のアルゴリズムを構築し、「WEB髪質診断」サ―ビスをアップデート。処方の組み合わせがそれまでの約3万通りから約7万通りまで拡大した。設問に対する回答判断基準をわかりやすくしたのをはじめ、回答の選択肢をさらに増やし、診断後の髪の状態やケアすべきポイントがより明確化するように改善した。
26年1月からは、サロン発想のホームケア美容機器を30日間無料で試せる「髪と頭皮のフィッティングサービス」を開始。30日間無料で試し、購入する場合は料金を支払う。効果に満足できず期間内に返却すれば送料のみの負担となり、試した費用はかからない。新たなメソッドと商材の提供により、事業拡大につなげる。
無料で1か月間美容機器のお試しができる(出典:スパーティー)
19年からカラリスが展開する「COLORIS(カラリス)」は、オンラインカウンセリングに基づいて、パーソナライズヘアカラーのサブスクを提供するサービスだ。高級ヘアサロン仕上げのような艶や質感、思い通りの髪色が自宅で実現できると訴求する。
11問のカウンセリングを通じ、現在の髪の状態や望むカラーを選ぶ。その結果をもとに、1万通りの組み合わせから顧客に合った最適なヘアカラー剤とトリートメントを処方。ヘアカラー後も、同社専属カラーリストが継続的にサポートする。
2023年8月には、4周年を前にWEBサイトを大幅刷新した。顧客の声をもとに全カラーをリニューアルし、カウンセリング機能をアップデート。過去の施術歴やなりたい髪色についてより詳しく尋ね、施術後の染まり具合をフィードバックしてもらうことで、希望する仕上がりに近づける機能を追加した。こういった取り組みにより、刷新後3か月には新規顧客数が1.5倍になったという。
サプリメントやコスメ分野でも根強い需要
ファンケルが2020年2月にスタートしたパーソナライズサプリサービス「パーソナルワン」は、顧客一人ひとりに最適なサプリメントをワンパックにして提供する。食習慣や生活習慣に関するオンラインアンケート(45問)と、ビタミンやミネラルといった基本栄養素の充足度を客観的に把握する尿検査を実施。血液検査せずとも尿検査で基本栄養素の充足度を可視化する新技術を導入しており、各顧客に不足している栄養素がわかる。
組み合わせは10億通り以上となるが、データをもとに自社工場でサプリメントの組み合わせを受注生産。個々に必要な分量だけパックし、月に1度定期的に30日分の製品を届ける。尿検査キットの入手には税込5,500円かかるが、サプリメントの初回購入時には5,500円分のクーポンを提供して訴求する。
オルビスは22年11月より、「ORBISアプリ」を通じたAIによる肌診断分析サービス「肌カ.ル.テ」を導入している。スキンケアやメイクについての全8質問、カウンセリング全15問に回答し、スマートフォンで顔写真を撮影するとAIが肌状態を分析。結果に基づきパーソナルなスキンケア方法を提案し、「肌カ.ル.テ」コース専用の商品を提供する。
利用者には3日に1度、約1年にわたり、アドバイスや継続へのメッセージが届く伴走型サービスが特徴だ。ただ、当初のチャットはビューティーアドバイザーによる有人対応だったが、24年3月からはAIによる自動応答のみに切り替わった。
メンズコスメ市場先駆者のBULK HOMME(バルクオム)はウェブサイトで肌診断を実施しており、「乾燥肌」「普通肌」「混合肌」「脂性肌」の4スキンタイプに分類。それぞれに適したケア方法を提案し、最適なスキンケアセットのサブスクサービスを提案する。
25年6月には、JR大阪駅と新宿駅メトロプロムナードで「男の肌戦闘力診断」と題した体験型イベントを開催した。専用モニターで肌をスキャンし、うるおい、キメなど7つの要素について解析・可視化。診断後には肌戦闘力をアップするための情報やスキンケアサンプルを提供した。
体験型イベントを大阪駅と東京駅で開催した(出典:バルクオム)
スキンケアブランドのBELLATECH(ベラテック)は25年8月、スキンケアサブスクブランド「BELLATECH SKINCARE(ベラテック・スキンケア)」を本格ローンチした。AIを活用して自宅で簡単に肌測定を行い、その測定結果をもとにパーソナライズされたスキンケアアイテムが毎月届くサブスクサービスとなる。
独自開発したスキャナーは4つの高感度センサーを搭載し、わずか1秒で肌の状態をチェックできる。肌の水分量やキメ、美白度などを測定し、結果は専用アプリに自動で記録。顧客ごとの肌状態と悩みに対応し、4段階のケアができるプロダクトを提供する。
大手や長期サービスの撤退事例も
一方で、撤退事例にも事欠かない。
資生堂は、2019年7月に始めたパーソナライズスキンケア「Optune(オプチューン)」を、わずか1年足らずの20年6月に終了させた。専用アプリで測定した肌データや睡眠データ、気温・湿度などを独自の1oT機器と組み合わせて分析し、各顧客に合わせたパーソナルなスキンケアセットを提供していた。サービス停止の理由としては、使用方法の複雑さや月額1万円という高価格が指摘されている。
さらに23年7月には、AIが顧客の生まれ持った肌の体質をDNA解析し、より適切な美容情報を提供するDNA検査サービス「Beauty DNA Program」を開始。しかし、こちらも26年2月で終了することになった。
オルビスは21年4月に、独自開発の肌測定IoT機器を用いたパーソナライズスキンケアサービス「cocktail graphy(カクテルグラフィー)」をスタート。機器で肌を測定し専用アプリで質問に回答すると、数百通りの組み合わせから1人ひとりに最適なスキンケア3商品が届く仕組みだったが、23年9月に撤退した。
24年12月には、アイスタイルが14年から監修してきたサンプルサイズコスメや美容グッズのサブスク「BLOOMBOX (ブルームボックス)」のサービスが終了した。顧客がプロファイルに登録した肌質や好みに合わせて商品がセレクトされるため、自分に合ったコスメを試せるのが特徴だった。
「BLOOMBOX」は毎月税込1,650円と低価格のサンプルサブスクを展開(出典:アイスタイル)
まとめ
参入と撤退が相次ぐパーソナライズ型のヘア・コスメサブスク市場だが、AIなどによるデータ分析精度が上がっていくこともあり、今後は成長が見込めそうだ。
ただ、顧客に最適な製品を正確に選ぶことはもちろん、コストパフォーマンスを意識した料金設定や、アプリや機器の使いやすさも重要課題といえる。お試し時のワクワク感も見逃せないため、ARやVR技術を通じたバーチャル体験の提供など、顧客満足度を満たせるような工夫にも期待したい。
執筆/渡辺友絵
【記者紹介】
渡辺友絵
長年にわたり、流通系業界紙で記者や編集長として大手企業や官庁・団体などを取材し、 通信販売やECを軸とした記事を手がける。その後フリーとなり、通販・ECをはじめ、物 流・決済・金融・法律など業界周りの記事を紙媒体やWEBメディアに執筆している。現在 、日本ダイレクトマーケティング学会法務研究部会幹事、日本印刷技術協会客員研究員 、ECネットワーク客員研究員。
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