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2025.01.30 通販支援

2024年を振り返る~活況の「D2C」に転換期?

コロナ前から活況だった「D2C(Direct-to-Consumer)」に、変化の兆しが現れ始めた。ECのバズワードにもなったビジネスモデルだったが、2024年に入ってからは業界をけん引してきたブランドなどが次のフェーズに挑戦する動きが目立つ。その背景には何があるのか、D2Cブランドの節目ともいえる動きを探った。


バブル一段落後、D2Cブランドは次のフェ―ズに

「D2Cバブル」とも評された2010年代半ば以降はアパレル、コスメ、食品などで新興ブランドの参入が相次ぎ、売れるネット広告社の調査によれば25年のD2C市場規模は3兆円に達すると予測されている。自社ECサイトを軸に売り上げを伸ばすD2Cが台頭した背景には、スマホ・SNSの浸透や消費者の購買意識の変化、ECサイト構築・運営の簡素化などがある。


しかし、23年末から24年に入ってから、代表的ともいわれてきたD2Cブランドが思い切った決断をする動きが目立ち始めた。M&Aで他社の傘下に入ったり、株式公開に踏み切ったり、次のフェーズに向けて始動している。


D2Cブランドの起業者は年齢が若く熱量も高いが、引き続き成長路線をまい進するためには従来の手法だけでは難しいと判断したようだ。新たな商品開発やフルフィルメント整備、リアル店舗の出店やECとの連携など、進化を続けるにはこれまで以上に資金が必要となる。順調に伸びてきたD2Cブランドだからこそ、ステップアップに向けて岐路に立たされている。


D2Cの代表格「コヒナ」はサザビーリーグ傘下へ

D2Cブランドで頭ひとつ抜けた代表格ともいえるのが、小柄女性向けアパレルを手がける「COHINA(コヒナ)」だ。身長150センチ前後の女性をターゲットに絞り2018年にnewnが立ち上げたブランドで、創業者で身長148センチ田中絢子ディレクターをはじめ小柄スタッフで固めた陣営がSNSなどを駆使して成長につなげた。


中でも創業以来毎日配信しているインスタグラムには熱心な固定ファンがついており、24年8月時点でフォロワーは22万人を超えた。2022年には、モード志向の「小柄な大人女性」ブランド「ŚTRATA(エストラータ)」を立ち上げている。


その「コヒナ」は2024年9月、「Afternoon Tea(アフタヌーンティー)」など40を超えるブランドを展開するサザビーリーグに事業譲渡され、サザビーリーグが新設するEGBA(イー・ジー・ビー・エー)が運営していくことになった。コヒナが培ってきたファンマーケティングのノウハウとサザビーリーグが持つブランディング力により、さらなる事業成長を目指す。田中ディレクターやコヒナのメンバー、インフルエンサースタッフはほぼ全員がサザビーリーグに転籍し、引き続きブランド運営を担うという。


コヒナはこれまでも期間限定のポップアップショップを展開しており、サザビーリーググループに入ることでリアル店舗に必要な開発力や資金力を確保できるようになる。D2Cの黎明期に生まれたコヒナだが、その後小柄女性向けの新たなD2Cブランド参入も目立つようになった。競合が増えD2Cバブルの勢いも弱まりつつある現在、成長を目指すにはサザビーリーグへの譲渡が好機と判断したとみられる。


 

 D2Cブランドの代表格といえる「コヒナ」(出典:サザビーリーグ)


冷凍野菜素材を扱う「グリーンスプーン」を江崎グリコが買収

冷凍ミールの定期宅配サービス「GREEN SPOON(グリーンスプーン)」を手がけるD2C企業のグリーンスプーンは24年6月、江崎グリコに全株式を譲渡し完全子会社となった。これまでも、江崎グリコのアーモンドミルクとグリーンスプーンのスープを使った共同キャンペーンを実施するなど、事業連携の実績があったという。


グリーンスプーンは20年3月から、「簡単」「ヘルシー」「おいしい」にこだわる冷凍野菜を使ったスムージー、スープ、サラダ、メインディッシュ素材の定期宅配を手がけ、24年6月時点での累計会員数は15万人を突破。24年春にはファミリーマートでスムージーを数量限定で販売したり、渋谷スクランブルスクエアにポップアップストアを出店したりと、リアル店舗での告知販促も手がけてきた。今回のグループ入りにより、江崎グリコの商品開発力やサプライチェーンノウハウ、経営リソースなどを活用し、さらなるブランド成長を目指す。


江崎グリコはグリーンスプーンのグループ参画により、日常的に摂取する主菜や副菜の分野を強化。おいしさや健康にこだわる 20~40 歳台の女性を中心に、幅広い層を開拓する。新規客客開拓に有望なグリーンスプーンの定期購入者リストなども、自社サービスに活用していく可能性がある。


 

江崎グリコは主菜・副菜分野の強化を図る(出典:江崎グリコ)


丸井織物に事業譲渡したアパレルの「PUFF Designs」

アパレルD2Cブランド「PUFF Designs(パフデザインズ)」を運営するディーエスエスアールは24年2月、日本最大級の合繊織物メーカーの丸井織物に「パフデザインズ」事業を譲渡した。インフルエンサーブランドビジネスを展開する「パフデザインズ」は丸井織物社の豊富な経営リソースを活用し、事業拡大につなげる。


「パフデザインズ」は22年に発足したオンラインデパートメントストアで、ブランド「Privève(プリヴェヴェ)」を筆頭に、インフルエンサーやタレントをディレクターに起用した複数のブランドを扱う。


丸井織物は繊維とITをかけ合わせた事業の多角化を進めており、1枚からTシャツ制作ができるオリジナル商品サービス「UP-T」などのオンデマンド事業が急成長。ネイルや化粧品などさまざまな商品の拡充を進めているが、「UP-T」のインフルエンサーからブランド開発を要望する声が挙がったこともあり、「パフデザインズ」事業の買収を決めた。


買収によりオンデマンド・アパレルプラットフォームサービスを展開する予定で、「UP-T」やグループ内アパレル関連企業と「パフデザインズ」との事業連携も進める。メンズやキッズなどへのブランド拡大やネイル・化粧品のアイテム拡充、常設店舗を通じたプロモーション強化を図る。

 

買収によりアパレルプラットフォームに着手する予定(出典:丸井織物)


スキンケアブランドの「dr365」はCi FLAVORSに株式売却

D2Cスキンケアブランド「dr365」を展開するdr365も24年9月、ビューティ・ライフスタイルブランド7社を傘下に持つコスメカンパニーのCi FLAVORSに全株式を売却した。20年8月創業のdr365は皮膚の専門家による監修のもと、多様化する肌の悩みに向けた商品を定期購入や皮膚科クリニックを通じて販売。インスタグラムを通じ、多くのフォロワーを獲得している。


 Ci FLAVORSグループ入りすることにより、スキンケア製品のさらなる事業領域拡大と海外への販路拡大を図る。


ZOZOから巣立ち上場を選んだアパレルD2C「yutori」

他社傘下に入るのではなく株式公開の道を選んだのは、複数のストリートブランドを展開するyutoriだ。それまでZOZOグループに属していたが、わずか3年で23年12月に東京証券取引所グロース市場に新規上場を果たした。


18年4月 創業のyutoriは、古着コミュニティ「古着女子」をオープン後にアパレルD2Cブランドを立ち上げ、20年7月 にZOZOグループ入りを発表。「ナインティナインティ」など複数のファッションブランドを展開し、インスタグラムで150万人以上のフォロワーを抱えるなど10代前半~20代前半の若年層獲得を強みとする。


これまでyutoriの親会社だったZOZOは新規上場に伴い同社の株式の一部を売却したが、今後も主要株主としてサポートしていく見込み。独立体制となったYutoriは引き続き新たなブランド立ち上げやブランド買収などに注力し、アジア最大のストリートカンパニーへの成長を目指す。


 

ZOZOグループ入りからわずか3年で上場した(出典:ZOZO)


まとめ


D2Cに限らず、巣ごもりのコロナ特需が一段落し消費者のリアル店舗回帰が進む昨今はB2CのEC業界全体が苦戦気味といえる。特に資金力や人材、経営ノウハウといったリソースが少ないD2Cブランドは、従来手法だけでは成長が見込めなくなる可能性も高い。


リソース不足を補うために、第2フェーズとして大手傘下に入ったり株式公開に踏み切ったりするD2Cブランドはこれからも増えそうだ。一方で参入も続くとみられるが、どのブランドもD2Cの強みである商品力やブランディング力、ファン育成力を駆使し、引き続き競争力がある市場形成に一役買って欲しい。 

執筆者/ 渡辺友絵



【記者紹介】
渡辺友絵
長年にわたり、流通系業界紙で記者や編集長として大手企業や官庁・団体などを取材し、 通信販売やECを軸とした記事を手がける。その後フリーとなり、通販・ECをはじめ、物 流・決済・金融・法律など業界周りの記事を紙媒体やWEBメディアに執筆している。現在 、日本ダイレクトマーケティング学会法務研究部会幹事、日本印刷技術協会客員研究員 、ECネットワーク客員研究員。





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